第38話 捜索依頼
怪しい連中ねぇ。連中ってところを考えると黒服の可能性が高いような気がするなぁ。
「怪しい連中ですか?」
「そうです〜。黒い服を着た連中と、ダンジョン内でよく追い剥ぎしている連中ですね〜」
やっぱり黒服か。それに追い剥ぎ連中ってあの3人組のことかな?
「追い剥ぎ連中って3人組だったりします?」
「はい〜。よくご存知ですね〜」
「まあ、ええ。襲われたので」
まあ一方的に倒したけど。
「大丈夫でしたか〜?あの人達は意外にも強いのですが〜」
強い?あれが?
「そこまでじゃ無かったように思いますけど。あれならまだドラゴンの方が強いと思います」
「ドラゴンが強いのは当然ですね〜。なんたって竜ですし〜。まあそんな竜でさえ5階層に出るような魔物なんですけどね〜」
「まあ、ドラゴンの事はいいです。で、黒服の方はどうなんですか?何か被害が?」
「被害といえば1番はあれですね〜。閉じ込めておいた犯罪者が逃げ出した事です〜」
おいおい……。いくら黒服が隠密性に長けてるからってそんなの逃がすんじゃないよ……。
「追跡の方は?」
「無理ですね〜。証拠が完全に無くなっていて〜」
「……」
「で〜、ここからなんですが〜。協力してくださいませんかね〜」
「……何にです?」
「黒服捜索と犯罪者捜索です〜」
正直、めんどくさい。今僕の目的はミアを強くする事で、長時間の拘束を請け負いたくない。しかも僕1人ならやってもいいが、他のみんながいる。みんなが危険に晒されるかもしれないこの状況で、請ける理由がない。黒服に対しての個人的な感情はあるけどね。
「遠慮したいところですね。みんなに危険が及ぶかもしれないですし」
「そうですね〜。そう言うと思ってました〜。そんな訳で、こんなのはどうでしょう〜。捜索が達成されるまで、ダンジョンは封鎖、街から出る事も禁ずる、というのは〜」
「そんな事したら、他の冒険者から非難殺到ですよ」
「そうですね〜。ですが、しょうがないでしょう〜。危険がある以上、それを取り除かないと死者が出る可能性があるんです〜。今回の件での怪我人が10人以上でしたっけ〜?死者が出なかったのは良かったですが、下位冒険者は安全に探索は出来ないでしょうね〜」
「そうですね。確かにそうなるでしょう。でも、僕に持ちかけるのは何故です?他にも優秀な冒険者やランクが高い冒険者なんてざらにいるでしょう?」
「ドラゴンを倒せるなら実力は十分にあると思っています〜。それに、アンヨドでレオンの依頼を解決したじゃないですか〜」
はぁ。あのギルド長まじで……。
「はぁ……。わかりました。請けてもいいです。ただし条件として、僕の仲間に危害が加わらないようにしてくれる事。それとは別途で報酬を用意する事。この2点です」
「はい〜。いいですよ〜。報酬は依頼終了後っていうことで〜。もう一つの方は私の信頼出来る友人を向かわせます〜」
「わかりました。あ、それと、一応僕に街の外に出る許可ください。調べる上で外に出る必要性があるかもですから」
「はい〜。いいですよ〜。というわけで、ありがとうございます〜。詳しい事はまた今度話しますので、今日の所は帰っていいですよ〜」
「わかりました。それじゃ、失礼します」
ふぅ。やれやれ。結局依頼請ける事になっちゃったよ。これは一層隼人に注意してもらわないとなぁ。
部屋にはアンシア1人。他には誰もいない。
「いや〜なかなか面白い子ですね〜」
その声に応えるように声が発せられる。
「だろ?あのばあさんや占子が気にいるのも納得出来るってもんだ」
その発生源は影だ。1人の男の声。ぐにゃりと影が歪み、姿を現す。
「やはり便利ですね〜。レオンのその魔法は〜。私も欲しいくらいです〜」
「そりゃ無理だな。お前には適性がないんだから」
「わかってますよ〜。まあ私にも便利な魔法があるからいいですけどね〜」
「俺としちゃそっちの魔法の方が欲しかったくらいだけどな。ま、魔法の話はもういいだろ。会う度してるしな。で、お前さんあの依頼の護衛って俺がやるんだよな?」
「ええ〜。勿論ですよ〜。私が1番信頼してる友人はレオンだけですからね〜」
やれやれとレオンは首を振る。
「はぁ。ま、いいけどよ。そろそろ、変わってもいいんじゃないか?」
「それは無理な話ですよ〜。私をこんな風にしたのは奴らですからね〜。殺すまでは絶対に変わりませんよ〜」
「そうか……。お前さんがそう思っているなら、もう何も言わねぇ。だが、レイをお前さんの目的に使うのだけはやめろよ。お前さんの目的はお前さんだけでけりをつけるべきだ」
「わかってますよ〜。ただ、偶然、テツジョウさんがやってくれるかもしれませんけどね〜」
それは、結局の所やらせると言っているようなものだ。それをレオンは理解している。
「……。お前さんのそういう所は本当、変わらないな」
「褒められてないのはわかってます〜。ですが、私にも意地があるので〜」
「わかっているさ。さて、勝手に決められた依頼でもしてくるかな。お前さんが呼び出すからアンヨドを職員に任せる事になっちまったからな」
「悪いと思っていますよ〜。でも、テツジョウさんに協力していただく為には必要だったんです〜」
「わかってるさ」
そう一言呟き、レオンは影の中に消える。
そして、本当に1人になったアンシアはそっと小さく漏らす。
「リン……あなたを絶対に幸せにしたいと私は思っていましたけど、私はちゃんと出来ていたんでしょうか?どうすればよかったんでしょうか……」
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