第37話 竜退治

 さて、さすがにわからないスキルがある以上、ちんたらやってる訳にはいかないかな。

 眼を銃弾で狙い撃つ。が、破片に邪魔される。その間に溜められたブレスが広範囲に放たれる。土壁を瞬時に発動して耐えるが、徐々に崩れてくるので、2重3重と重ねてなんとか耐えきる。危ない危ない。1枚だと絶対突破されてたね。それに広範囲で、1点集中じゃなかったのもある。


 さて、どうしよ。あのダンジョン破片が邪魔過ぎる。今のブレスでさらに増えたし。これでまだ5階層くらいの強さだっていう話だから凄い。まだまだ強い魔物がいるってことだ。それにゲイルはそれをクリアしたって事だし、やっぱりかなり強いんだろう。


 って今はそんな事より倒す方法だ。さすがにこいつ相手に本気を出すのはね……。動けなくなるのはまずいし。というか本気出さないと倒せないようならダンジョン攻略なんて出来っこない。って事で本気を出すわけにはいかないんだが。血を使おうにも鱗は硬いわ破片が邪魔するわで当たんない。

 ……。今回は魔法でどうにかするか。


「アイスストーム!」


 さっきメイジから手に入れた氷と夜、手に入れておいた風の複合魔法だ。基本、技名を言わなくてもすぐ出せるようにはなったんだが、複合魔法はどうも簡単にはいかず、技名を言っている。


 氷の嵐が生み出され、竜を巻き込み破片を凍らせ、砕いていく。近くの壁も少し巻き込んだが、まあ大丈夫だ。それも全て凍ったし。『防御:土』も働いてないようだしね。竜の方にはあまりダメージが入ってないように見える。『竜鱗』のせいかな。多分、魔法耐性と物理耐性みたいな感じなんだろうな。ま、銃弾が勿体無いから魔法系でやるけどね。


 さて、防御力はあと鱗だけか。この鱗、欲しいんだよね。色々使えそうだし。おっと。ブレスがきた。ここが狭いから今のとこブレスでの攻撃しかしてこないんだよね。よかった。狭いというよりは竜がデカイのが悪いんだけど。


 ひびが入っている鱗を魔法で狙い撃つ。打撃性のある魔法でだ。そっちの方が砕けやすいとみた。僕の推測は正しかったようで、数回当たっただけで鱗は割れた。鱗の破片を即時回収して闇の中に放り込む。バックに入れてる余裕はどうやらもうないみたいだからね。


 どうやら、大変ご立腹のようだ。見るからに様子が変わった。『炎纒』と『土纒』を使ったのがわかる。竜が口を開け、そこに赤と茶の球体が発生する。その2つが混ざり、1つの赤茶の球体が完成される。その球体ごと、竜が口を閉じる。

 まずい。あれはまずい。僕が受けれるようなものじゃないってのはわかる。


 赤茶の光線が竜の口から放たれる。そこに僕は暗闇を2つ展開する。1つは僕の目の前、2つ目は竜のちょうど真横だ。

 くっ……。辛いぃぃぃ。暗闇で竜に返そうとしたけど、きっつい。暗闇の方が壊れそうになっている。うぉぉぉぉぉ!


 何とか、暗闇を壊される事なく、竜の真横に攻撃をワープさて、竜に返す。竜が赤茶の光線をくらった途端、口から大量の血を吐き出して倒れ伏した。


 え?なんだ?どうした?と思って確認したら大きな穴があいていた。竜に。ちょうど光線を返した場所だね。うっわぁ。なんだこの威力。暗闇破壊されてたら僕死んでたんじゃないか?ま、いいか。結果的に何とかなったわけだし。竜の死骸から血を吸い取って、暗闇に放り込む。うん。これで大丈夫でしょ。


 さて、あの人達の所に行くかな。


「終わりましたよー」


「おお、本当か!?」


「ええ。死骸の方も回収しました。これでもう危険は無いはずです」


「ありがとう!!」


「「ありがとうございます!」」


 案内してくれた冒険者と危なく助け出した2人の冒険者が礼を言ってくる。


「いえいえ。お礼はいりませんよ。とりあえず、この倒れている人達を何とかしないとですね」


 倒れている冒険者は大体10人くらい。一気に運ぶ方法だと、暗闇の中に入れる、糸で一纏めにして運ぶ、くらいか?あ、黒球で運ぶ方法もあるか。今回は黒球にしようか。


「この人達は僕が運びます。案内お願い出来ますか?」


「ああ。わかった。じゃあ君の仲間達の所まで行こう。君達も付いてきてくれ」


「「はい!」」


 案内のもと、隼人達と再会する。


「ただいま。隼人、大丈夫だった?」


 確認を取っておく。


「ああ。大丈夫だったぞ。特に何もなかった」


 そうか。ならまあ大丈夫なのかな?まだ安心は出来ないけど。


「今日は一旦戻る事になるけど、いい?この人達を運ばないといけないから」


「いいわよ。時間的にも戻ろうかって切り出そうと思っていたしね」


 美智永さんが答えてくれる。そういえば、仲原さんと近藤くんってあんまり会話に入って来ないよね。聞き専門というか。まあ、いいんだけどね。


「テツ君、何か手伝う事はありますか?」


「うーん、今は大丈夫かな。多分、また後で手伝ってもらうことがあるからそれまでね」


「はい!わかりました!」



 この後は結構な大所帯でダンジョンから出る事になった。出入り口にいた職員さんに驚かれた。まあ怪我人が何人もいたから、すぐに何かあったって事に気付いてくれて対応が早かったけどね。


「それで、僕達どうしたらいいですかね?」


「えー、少し待っていていただけますか?今回の事態は私達の手に余るようなので、ギルド長を呼んできますので」


 うへぇ……。またギルド長ですか。あんまりそういう人達と関わり合いたくないんだよなぁ。利用されそうな感じがするから。僕そんなに頭良くないし。


「お待たせしましたね〜。私がポートギルド長のアンシアです〜。奥に来てもらえますか〜?」


「あ、はい。わかりました」


 ギルドの1番奥の部屋に連れて来られる。アンヨドより広いなぁ。アンヨドと比べるのはあれか。こっちはダンジョンがあるし。ん?なんか見られてるような感覚が。気配感知に反応は無いし、気のせいかな?ギルド長も反応してないし。


「それでは、名前から伺いましょうか〜」


「鉄条 零です」


 あ、隼人達は怪我人の手当てとかに当たってもらってる。僕がギルド長と会ってるのは僕が倒したから。


「あら〜、あなたが鉄条さんでしたか〜。アンヨドのギルド長から話は聞いてますよ〜」


 げっ。まじか。まあここの事教えてくれたのアンヨドのギルド長だし話がいっててもおかしくはないか。


「なんでも強化種をお一人で打倒したとか〜。それに依頼にも貢献したらしいじゃないですか〜」


 あの人どこまで話してんだ!?やめてくれよ…。


「まあ、はい。なんというか成り行きで……」


「成り行きですか〜。ま、いいですけどね〜。それで、今回は何があったんですか〜?」


 僕はギルド長に今回の出来事を話した。


「そうですか〜。それは大変でしたね〜」


「今回みたいな下の階層の魔物が上にいるってある事なんですか?」


「1階層上下する事ならありますね〜。ですが、今回のアースフレイムドラゴン、でしたっけ〜。その魔物は5階層にいるべき魔物です〜。2階層にいるのは不自然ですね〜。もし登って来たとしたら、情報がはいるはずですし〜。今回の件はどうやら裏で何かが糸を引いてますね〜」


 あー、やっぱりですか。めんどくさいなぁ。こんな事やりそうなのって黒服か魔族じゃない?僕どっちにも狙われる理由あるからあれなんだけど。


「私としては、まあ一応心当たりがあったりするんですが〜」


「へ?犯人のですか?」


「ええ〜。ここ最近、どうにも怪しい連中がいましてね〜。そいつらじゃないかと〜」

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