色葉、ごくりんこ。

 恭介に追いつくと目的地であるサカタの看板が見え、更に駆け出そうとする恭介を引き止め、色葉は言う。


「恭介くん、一緒に遊びに来ている女の子を放っておいて先に行くのは、男の子としてよくないわよ」


 置いてけぼりを喰らわされた色葉は、不満げに言う。


「せ、せっかく見せて上げたのに……」


 現実ではできないからこそ、色葉は自身のチャームポイントの一つであるお尻の穴を全開にして見せたかったというのに、それを上手く躱されては怒って当然であった。

  

 しかし恭介はあっけらかんとしていて、


「だってボク、リオ姉ちゃんのお尻の穴なんか見たくないもん」


「またそんなこと言うのね、恭介くんは……」


 もう溜息しか出なかった。しかし、それでも収穫はあった。


 今のここにいる恭介は、一緒にお風呂をするのに対して抵抗がないということが分かったからである。

 つまり何か口実をつけてお風呂に入るように仕向ければショタ恭ちゃんの可愛いおちんちんを見ることが……もしくはねぶることができるのだ。


 そして一緒にお風呂に入るにはどうすればいいかと考えているうちに、目的地

の玩具のサカタに辿り着いた。


「ああ、これね……」


 サカタの入り口前に並ぶガチャガチャの機械の中に、神話合体ロボのガチャを見つけた。

 しかし恭介はガチャガチャをスルーして店内に入ろうとしたので、色葉は呼び止める。


「あれっ? 恭介くん? ガチャガチャってこれじゃないの?」


「うん、ちょっと両替してもらってくる」


 そして恭介は、お小遣いの二千円札をすべて百円玉に代え、戻って来た。


「全部使っちゃうの?」


「ううん、揃ったら止めるよ」


 恭介は、神話合体ロボフィギュア第一弾・全六種をコンプリートしたいらしかった。


 神話合体ロボのガチャガチャは、一回二〇〇円なので一〇回できるが……


「やった、ネプチューンだ!」「よし、ミネルヴァ!」「あ、またバッカス……」「え、またバッカス……」


 どうやらレアのプルートだけ入手できなかったらしく、恭介はがっくりと肩を落としていた。


「うー、またこよ……」


 今回、二千円も使ったのに、更につぎ込むらしかった。


「もうこれだけあればいいんじゃない? 全部似たようなモノでしょ?」


 色葉には、ロボットがどれも似たように見えたのでそう言った。


「違うよ! プルートは最強だもん!」


「そう……なの?」


 最強と言われても、見た目の違い何て色葉には全く分からなかった。


「リオ姉ちゃんだって好きなガチャガチャなら全部集めたくなるでしょよ?」


 残念ながら、今までそういう類でコンプリートしたいと思うような事例に色葉は巡り合っていなかったりしたので、その気持ちは完全には分からなかった。


 だが、例えば恭介のおちんちんフィギュアのガチャガチャが出たらどうだろう?


 通常時のおちんちん、怒ったおちんちん、萎れたおちんちん、更には赤ちゃんの頃のおちんちんに老後のおちんちん……そんなガチャが出たら、すべてをコンプリートしたくなるのはもちろんのこと、観賞用、布教用、保存用、箸置き用、付けおちんちん用にマウスピース用と、おちんちんフィギュアで部屋を埋め尽くすばかりの勢いで、ガチャを回し続けるに違いなかった。


 今の恭介も、神話合体ロボをコンプリートしたくて仕方ない様子であった。


「ねえ、恭介くん? よかったらお姉ちゃんがガチャガチャ奢ってあげようか?」


「えっ? いいの?」


「うん、いいよ」


「やったー」


 ぱっと笑顔を輝かせてはしゃぐ恭介。


 可愛い。


 おじいちゃんとかが孫のためにお金を使ってあげる気持ちが何となく頷ける。

 お財布を見ると、中身は千円札三枚と硬貨の方が四百と二円。夢であれば万札が入っていてもいいと思うのだけれど、眠る前の中身に準拠している様子であった。


 とはいえこれだけあればプルートとやらもゲットすることは可能だろう。


「恭介くん、奢ってあげるけど、代わりにお姉ちゃんのお願いも聞いてもらっていいかな?」


「えっ? 何? お願いってどんなこと?」


「もしプルートが手に入ったら、お姉ちゃんと一緒にお風呂入って遊んでもらっていい?」


「お風呂に? いいよー。だからやろ? ガチャガチャやろ? 早くやろ?」


 恭介はすんなりとオッケーし、色葉の腕を揺らしてせがんできた。可愛い。ちょー可愛い。


「はいはい、慌てないでね」


 色葉は逸る気持ちを押えつつ、とりあえず百円玉を四枚渡し、恭介にガチャを回すように促した。


「あ、出た! やったー、プルートだ!」


 プルートは、千円札を崩すことなく二回目のガチャであっさりとゲットでき、恭介は嬉しそうにはしゃいでいた。


「よかったね、恭介くん」


 表にはそれほど出さなかったものの、それ以上に色葉は興奮し、心の中で小躍りしていた。


 それも当然であった。


 何しろこれで、ショタ恭ちゃんの可愛いおちんちんを間近で眺め……そしてうまくいけば触れることができるのだから。




 鍵は思った通り、当時の隠し場所である植木鉢の下に置きっ放しとなっており、志田家に侵入することができた。


 夢とはいえ甘めの設定でよかった。 まあ、鍵がなければ窓ガラスを割ってでもお風呂にだけは入るつもりであったが。


 そんなわけでお湯の準備は整えた。


「それじゃあ恭介くん。お風呂にするから服を脱ぎ脱ぎしようかー?」


「うーん、ちょっと待ってー」


 恭介はガチャガチャでゲットした、十二体のロボットフィギュアを洗面台やら、洗濯機の上やらに並べ始めた。

 

 色葉はドッキンドッキンで、内心はぁはぁしながら、


「……恭介くん? 一人で脱げる? お姉ちゃんが手伝ってあげよーか?」


 フィギュアを並べ終えた恭介は笑って、


「それくらいできるに決まってるじゃん」


 と、恥ずかし気もなくぱっぱと脱いでいく。


 そしてあっという間にパンツ一丁となった。その姿に色葉は唾をごくりんこ。

 早くショタ恭ちゃんのおちんちんが見たかった。可愛いおちんちんが見たかった。


 そして恭介は、そのパンツに手を掛けて――

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