色葉、交換条件を提示する。
色葉のことを里緒奈と勘違いするショタ恭介が、色葉の顔を見上げ、訊いてくる。
「あれ? 今日だっけ? 帰ってくるの? 明日じゃなかったの?」
恭介は何のこと言っているか少し考えたが、どうやら志田家がこの日、家族旅行中という設定がしっかりと組み込まれているらしいことに色葉は思い至った。
「あ……うん。わたしだけちょっと……ね、早く帰ってきたの。それより恭ちゃ……恭介くんはこれからどこか遊びに行くのかな?」
「うん。さっきまでお婆ちゃんが来ててね、お小遣いくれたからサカタに行くとこ」
懐かしい。おそらくは玩具のサカタのことであろう。現在では既に潰れてしまっている街のおもちゃ屋さんである。
「サカタかぁ~、恭介くん? お姉ちゃん暇なんだけど、ついて行ってもいいかな?」
せっかくなので色葉は恭介とのデートを堪能し、尚且つおちんちんチャンスを窺うことにした。
「いいけど……リオ姉ちゃん? あのさ、何か変だと思ったら……」
恭介は小首を傾げ、色葉の顔をジッと見やってきた。
「えっ? 何……かな?」
色葉はもしかして里緒奈本人ではないのがばれてしまったのかと笑顔を引き攣らせていると、
「メガネは? リオ姉ちゃん、メガネないとほとんど見えないんじゃなかったっけ?」
と、恭介が不思議そうに訊いてきた。
「ああ、メガネね……」
色葉は恭介の問い掛けにホッと胸を撫で下ろしつつ、
「コンタクトに変えてみたんだけど……どうかな? 似合ってるかな?」
「う~ん、よくわかんないけど、リオ姉ちゃんはメガネあった方がリオ姉ちゃんっぽい」
「そう?」
「うん、今日のリオ姉ちゃん、いつものリオ姉ちゃんと何か別人みたいだもん」
それはそうだろう。別人なのだから。それでも、確かに、色葉は学生時代の里緒奈に似ていたかもしれない。とはいえそっくりというわけでもなく、全体的なパーツと印象が似ているくらいだと思う。
今、色葉はメガネをしていないからそのせいで似ていないと思われたようだが、メガネをしていたら逆に何か違うと違和感を持たれていた可能性すらあったと思う。
「じゃ、じゃあいこっか?」
とにかく色葉は恭介とおもちゃ屋デートに出掛けることにした。
「恭介くん、サカタで何を買うの?」
玩具のサカタに行く道すがら、色葉は恭介に訊いた。
「神話合体ロボのガチャガチャ。コンプリートさすんだ」
神話合体ロボは神話をモチーフにしたロボットアニメーションで、今尚続くシリーズが続だ。恭介も子供の頃は夢中となり、関連の玩具等を集めていたと記憶している。
とはいえ二弾、三弾とシリーズが続いていくうちに、恭介の方は熱が冷めてしまったようであるが。
「そっかぁ~、神話ロボ、人気あるもん――あ、恭介くん? そっちじゃないよ?」
色葉は道を真っ直ぐ行こうとした恭介を引き留めるように言った。
「えっ? サカタはこっちだよ?」
「うん、けど今そっちの道は工事中だよ。遠回りになるけどこっちからいこ」
「あ、そうなんだ。こっちからじゃいけないんだ。休み明けもなの?」
この道は通学路であったのである。
「それは大丈夫。休み明けには終わってるから。さあ、恭介くん。こっちだよ」
色葉は脇の細い道に誘導して言った。
「うん、わかった」
純真無垢な恭介は、色葉の言葉を疑うことはせずにそのまま従うのだった。
色葉はそうしてわざと遠回りに遠回りを重ね、人がいない薄暗い路地裏に入ったところで周囲を見回し、言う。
「ねえ、恭介くん? お姉ちゃん、恭介くんに頼みたいことがあるんだけど……いいかな?」
「んっ? な~に?」
と、どっきどきの色葉とは対照的に暢気に返す恭介。
「うん、あのね……ちょっとだけ、おちんちん見せてもらっていい?」
「えっ?」
恭介がうきうきした足取りを止めて振り返り、
「リオ姉ちゃん? 急に……どうしたの?」
驚いたように訊いてきた。
例え夢でもそう簡単におちんちんは見せてくれないのだろうか?
別にここで押し倒して力ずくでパンツ剥ぐことはできるかもしれないが、それではこの愉しい夢が終わってしまう。
よって恭介自身に露出させ、穏便にデートを続けたいと考えていたのだ。
な~に、しょせん相手は小学生だ。もっともらしいことを言って丸め込み、おちんちんを露出されることなど容易いはず。
「恭介くん? 実はね、お姉ちゃん将来、おちんちんのお医者さんになろう思ってるの」
「おちんちんのお医者さん?」
「そう。今勉強中なんだけど、おちんちんの専門学校に入る前に実物みて勉強しておきたいって思ったの。悪いんだけど、恭介くん? お姉ちゃんに協力してくれないかな? 具体的に言うと、おちんちん見せてくれないかな? あと……ちょっとだけ触れさせて?」
これでおそらく恭介は快くおちんちんを見せてくれると思ったが……
「……リオ姉ちゃん? さっきから何言ってるの? そもそもリオ姉ちゃん、学校の先生になるんじゃなかったっけ?」
「…………」
夢のはずなのに、もっともな口答えをしてこようとは。やはり思い通りにおちんちんを見せてはくれぬらしい。
「え~っと、恭介くんはお姉ちゃんにおちんちん見せるの恥ずかしい?」
すると恭介は首をプルプルと横に振って、
「去年も温泉行ったし、あんまり。でも外でおちんちん出すのってあんまよくないんでしょ? 前、外でおしっこしてたらお母さんに怒られたもん」
どうやらおちんちんを見せることに、まだ、それほど抵抗がない設定の様子であった。
「じゃ、じゃあ恭介くん? こうしない? わたしも見せるから恭介くんも見せて? 見せ合いっこしよ?」
する恭介は、あははっと笑って、
「女の人にはおちんちんついてないじゃん。リオ姉ちゃん、本当にさっきから何言ってんの?」
「……お、お姉ちゃんが見せるのはおちんちんじゃないよ」
「じゃあどこ?」
「お尻……」
「……おしり?」
「……の穴」
色葉が最後まで言うと、恭介もギョッとなる。
「えっ! そ、そんなばっちぃーとこ、ボク、見たくないよ?」
「聞き捨てならないわね。お姉ちゃん、毎日お風呂に入って清潔にしてるから汚くないよ?」
「そ、そういう問題じゃないよ、リオ姉ちゃん……」
と、引き気味のショタ恭介。
「待ってて。今、綺麗だって証明してあげるから。その後は恭介くんの番だからね」
色葉は決定事項としてそう恭介に告げると、スカートの下のショーツに手を掛けて膝上までずり下ろした。
そして唖然となっている恭介にお尻を突き出すように向けて、スカートを捲り上げる。
恥ずかしい。例え夢とはいえ恥ずかしいものは恥かしかった。
色葉は頬を赤らめつつ、後ろに立つ恭介に訊く。
「きょ、恭介くん……ちゃ、ちゃんと見てくれてる?」
しかし返事はなかった。
おそらく言葉も出ないほど、真剣に見つめてくれているに違いなかった。
「待ってね。もう少しちゃんと見せて上げるから」
色葉はそう言って、しっかり見えるよう、自身の手で尻肉を更に押し拡げようとして――
「お~い?」
ちょっと遠くから聞こえてきた声に色葉はハッとし、顔を上げる。
「えっ?」
お尻の穴を見ていてくれたはずの恭介が、いつの間にか瞬間移動し、数メートル先からこちらに向けて手を振っていた。
「先、サカタに行ってるね~」
「……なっ! ま、待ちなさい、恭介くん!」
色葉は慌ててショーツを元の位置に直し、恭介の背中を追ったのだった。
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