色葉、過去の街並みを散策する。
過去にタイムスリップした?
「……本当に……? 夢じゃなくて……?」
自問自答する色葉。正直、夢の可能性が高い気がする。
時間を遡って過去に行くなんてあり得ないし、夢と考える方が幾分か常識的だ。
また、夢であればどんなことが起きようとその不思議な出来事を夢だなんて思わず、起きることを受け入れて行くのが普通かもしれないが、今回はそれが全くなかった。
つまり夢であるとしたら、夢を夢と自覚している夢……所謂、明晰夢であると思われた。
「どうしよ……家に行ってみようかな?」
夢か現実か、どちらにせよ公園に居座っても何も起きそうになく、自宅の方向目指して歩き出した。
「あっ……ケータイは……?」
そう言えば携帯電話は使用できるのだろうか……?
取り出して少し触ってみる。
「う~ん、使えないのか……」
ネットには繋げられず、もちろん電話機能も死んでいた。
カレンダーの日付はそのままで、タイムスリップした現在の正確な日付設定は分からずのままあった。夢であるとしたら、融通の利かない夢である。
「でも、懐かしいな……」
色葉は過去の街並みを懐かしみつつ、歩く。
既に潰れているはずのお店や、現代では取り壊されて空き地になっている家などがまだ当たり前のように建っており、何だかんだで子供の頃の風景というのは懐かしくあった。
そして暫く歩くと我が家と恭介の家が遠くに見えてきた。
しかしこのまま家を訪ねて行って、恭介たちはこの姿のまま自身を志田色葉として認識してくれるだろうか?
夢は本来もっと荒唐無稽なはずで、その辺うまく辻褄を合わせてくれるはずだが、リアルな夢過ぎて、年を取った色葉がこの年代だとお前誰だよ状態になる可能性があると思ったのだ。
とはいえこのままご近所を徘徊していても仕方ないしつまらない。
それに設定的には恭介はこれから里緒奈と初チューをする予定のはずであった。
仮に夢であってもそれは阻止したかったし、この際なので誘拐でも何でもして里緒奈から引き離すべきだと思った。
おそらくこの姿のまま訪ねて行っても警戒されて取り合ってくれないだろう。
となると電話を使って呼び出せばよいのだろうか?
電話であればちょっと声を高めにして子供っぽく喋れば色葉ちゃんとして通じるかもしれないので、恭介を上手く誘い出し、里緒奈とチューするとされる期間、監禁すれば万事解決だ。
そして色葉は携帯電話を取り出し、電話機能が麻痺しているのを思い出した。
だったら自宅の固定電話から掛ければいいのか?
色葉の家は留守中の様子であった。もしもの時の鍵の隠し場所は知っているので、自宅に入り、そこから電話することは可能だったのである。
だが家から恭介の家に電話したらすぐ身元がばれてしまう恐れがあり、公衆電話からした方がよいのだろうか?
いや、そもそも監禁する場所がない。そんなことを考えていたら、前から買い物袋をぶら下げた、主婦っぽい人が歩いてくる姿が見えた。
色葉は顔を背けつつ、その買い物帰りっぽい主婦をやり過ごす。
とりあえずこの近辺で理由なく長い時間うろうろしていたら怪しまれて通報され兼ねない。
一度、場所を移して作戦を練り直した方がいいだろうか?
やむなく色葉が撤退しようとした時だった。
ガチャ。
恭介の家の玄関ドアが内側から開いたのである。
「いってきま~す」
脳にピンと来た。それは、子供の頃の恭介の声だった。
そしてやっぱり玄関から活発な様子で飛び出してきたのは恭介であり、
「うはっ! ショタ恭ちゃん!」
色葉は興奮がいきなりMaxに達していた。
いますぐ恭介の許に駆け寄り抱き締めたかった。
可愛くてたまらなかった。きっとおちんちんも可愛いに違いなかった。可愛いおちんちんを見たかった。パンツになっておちんちんを優しく包み込んであげたかった。逆におちんちんになりたかった。
「……恭ちゃん……」
もう、ファーストキスがどうとかどうでもよくなってきた。
今はただ、おちんちんが見たかった。ショタ恭ちゃんの股間についている可愛いおちんちんが見たかった。
「あっ……」
どこへ向こうかつもりか、恭介がこちらに向かって歩いてきた。
とにかく平常心である。色葉は平静を装って澄ました顔をしてすれ違おうと考えていたが、内心、穏やかではなかった。
「ど、ど、どどど……どうしよ?」
このままやり過ごして機を窺うか、それとも襲い掛かってパンツを脱がすか。
いや、考えるまでもない。せっかくの夢である。パンツを下して可愛いおちんちんを拝もう。
「よ、よし……」
心が弾んでいるのか、跳ねるように歩く恭介に、鋭い視線をロックオンさせる色葉。
既に、心の準備はできている。
恭介が色葉のところまできて、すれ違う瞬間に足を引っ掛けて転倒させる。
その後に透かさずマウントをとり、その流れでパンツを強奪。
そうすればおちんちんが見れる。可愛いおちんちんが見れる。おちんちんが見れる。ショタ恭ちゃんの可愛いおちんちんが……見・れ・る!
そしてその瞬間が訪れようとしたその時、
「あっ! お帰り、リオ姉ちゃん」
恭介は色葉とすれ違う前に立ち止まり、そう声を掛けられ、目をパチクリさせる。
「た、ただ……いま?」
今の色葉はこの時代の里緒奈と年代が近く、恭介は色葉のことを里緒奈と認識しているらしかった。
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