色葉、盗んだダッチでワイフする。
ビニール人形は、造り的には不明だが、大きさ的には無理をすれば入れないことはなさそうだ。
「うん。こんなの恭ちゃんに必要ないもんね、怒られたら色葉が代わりをしてあげればいいだけだし……」
色葉はそう結論付けると、人形から服を脱がせ、恭介の机からカッターを拝借し、背中部分に刃を刺し込み、ぐいっと力を込めて背中を切り裂く。
切り裂いて中を見てみたが、結構キツそうではある。
とりあえず色葉は全裸になり、服を畳んでクローゼットにしまい込み、
「無理……かな? う~ん」
切り裂いたダッチナワイフに片足を突っ込んでみた。
イケる。意外とすんなり入った。更にもう片足も突っ込み、腰まではいた。
次は頭部。
ぐぐぐっと無理やり被ろうとするもなかなか入らない。
色葉は一度呼吸を整えてから、
「……せ~の、ふんっ!」
ずっぽり!
入った。
そして安堵のため息を吐き、改めて息を吸い込もうとして――
「あっ……」
色葉は大変なことに気付いた。
「い、息が……できない!」
色葉はあたふたしながら脱がそうと孤軍奮闘するが、引っ掛かってまったく脱がすことができない。
「べぽっ!」
次第に呼吸が苦しくなる。
このままでは全裸のままビニール人形に足を突っ込み、頭部に頭を突っ込んだまま窒息死することになる。
「せ、せめてパンツを……」
こんな姿で発見されては乙女として恥かし過ぎる。
クローゼットに畳んでしまいこんだショーツを……いや、この人形が着せられていた服を……と思った色葉であったが……
「ま、前が……見えない!」
視界が完全に塞がれていた。
というかパンツの心配をしている場合では本格的になくなってきた。
酸素の供給が、完全に失われているのだから当然だ。
このままでは本当に死ぬ。
恭介のおちんちんを受け入れぬまま……
「そ、そんなの……」
一度でも構わないから、恭介のおちんちんを受け入れなければ、死んでも死に切れない。
「そんなの絶対に、いやあぁぁっ!」
奇跡だった。
色葉は今まで見せたことのない力に覚醒した。
すぽんっ!
一気に視界がクリアとなった。
色葉はおちんちんのため、今まで使ったことのないような力を瞬間的に発揮したのだ。
これがいわゆる火事場のおちんちん力というやつだろうか。
目を真っ赤に血走らせつつ、肩で荒く息をする色葉。
「し、死ぬかと思った……」
こんな形で死にかけるとは思いも寄らなかった。
優等生で通っている礼儀正しい色葉ちゃんが、恭介の部屋にて全裸に人形を被って窒息死していたら、まず事件性を疑うはず。
そうなれば恭介に殺人容疑がかけられていたかもしれない。例え真実はどうであれ、女子高生のエクストリーム自殺とし、恭介が犯人として周りは噂するだろう。
そうならなくて本当によかったと思う。
とにかく息をする穴、ちょっとでいいから光が欲しいので目の位置、そして股間部分には穴を開け、ビニール人形を完全に装着したのであった。
「ちょっと胸が……」
先ほどより出っ張り過ぎだろうか?
いや、服を着てしまえば誤魔化せるはずである。
色葉はブラとショーツを拾って着用し、衣服をまとい、ウィッグを被って元のように恭介のベッドに横たわった。
「恭ちゃん、色葉のこと使ってくれるかな……」
わくわくと妄想しつつ恭介を待ち望む色葉。
そうしてその時は訪れる。
ガチャリとドアが開け放たれ、恭介がこちらに歩み寄ってきたのである。
ばれてはいないだろうか?
息を潜めているものの、胸の高鳴りは抑えられず、心臓の音で恭介に気付かれてしまわないかと不安に思う色葉。
「!」
恭介の手が、色葉の腕に伸びた。
どうしたのか、恭介は、色葉の二の腕をぷにぷにと揉み始めた。
もしかして、早々に普段の使用感との変化に気付かれてしまったのだろうか……?
緊張した面持ちで息を潜め、人形に成りきっていると、更に恭介は能動的に色葉の身体の感触を確かめ始めた。
興奮状態はMaxに達しようとも、声は出せないもどかしさ。
もう脳が蕩けてどうにかなりそうになったその時、恭介は色葉の身体をぎゅっと力強く抱き締めてきたのである。
「!」
抱き返したいがそれはできない。
声も出せない。
なぜなら今の色葉は人形だから。
もしここでそれがバレたらこの至福の時が終わりを告げてしまうからである。
恭介が色葉在中のビニール人形をベッドに再び置いた。
「……ばれた……?」
息を呑み込む色葉であったが、恭介が何やらちょっと離れたところで衣擦れの音。
もしかして……脱いでる?
次いでテレビでも点けたのだろうか? しかし音はない。つまりイヤホンでえっちぃーのを見ているのか? ビニール人形だけでは味気ないのでその辺を使用するのは至極当然かもしれない。
「!」
その瞬間、色葉の鼻腔を微かにおちんちんの香りが擽った……ような気がした。
何となく恭介がパンツを脱いだ気がしたが、そんな気がしただけかもしれない。
ほとんど視界が開けておらず、真っ直ぐ上を向いている状態なので視界情報は全くないのである。
ただの研ぎ澄まされた五感で恭介の今の状態を察知しようと全神経を集中しているため、願望込みでそういうビジョンが視えてしまっているだけかもしれなかった。
「んっ!」
恭介がベッド上の色葉に圧し掛かるように跨ってきた。
心臓が大きく拍動する。
恭介が、中に色葉がいることを気付かず、本当に、事に及ぼうとしているのだろうか……?
こんな形でも構わないのかと自問自答する。
構わない。それが答え。それしかない。
恭介のすべてを受け止めるだけ。
「恭ちゃん、きて……いいよ……」
色葉はすべてを受け入れる覚悟をし、静かに瞳を閉ざしたのだった……
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