特報・女性の肌は柔っこい!

「はぁ~、にしても、種ちゃんの肌……柔っこかったなぁ~……」


 恭介は、手に触れた櫻子の肌の感触と温もりをぽわ~んと思い出し、せっかく鎮めた疼きを取り戻しつつある感覚に見舞われていた。


 しかしこれ以上、トイレに長居をして櫻子を待たせたら不審に思われてしまう。


 仕方ないので恭介は、手を適当に洗って水を切り、シャツで雑に拭き取り、トイレを出るためにドアを開ける。


「ありっ? 種ちゃん……?」


 なぜか男子トイレの前に、櫻子が立っていた。


「ごめんなさい。QBが来たのだけど、瀬奈くんがなかなか戻ってこなかったから」


 申し訳なさそうな櫻子の視線を辿れば、尻尾をモフモフさせた白い子狐がそこにいた。


「えっ? こんなのいたら騒ぎになるでしょう? 大丈夫だったんすか?」


「心配は無用だよ、キョーコ……」


 恭介が問い掛けたのは櫻子の方にであったが、答えたのはQBで、


「ボクの姿はキミらのような存在からしか正しく認識されていないんだよ。大体は不可視化されているし、認識したとしても野良猫とかその辺にいる生命体にしか見えないという寸法さ」


 どうやらQBには、魔法少女エフェクトと同様の魔法効果が働いているらしかった。


「QB……さん? が、きちゃってことは……もう戦闘ってことですか?」


「ああ、そういうことになるね。向こうの魔法少女の準備は整っているよ」


「な、なるほど……そういうこってすか?」


 櫻子に協力し、彼女の魔力を供給した後、恭介は用を足すと櫻子に断りトイレに来ていたのだが、籠っている間にQBが訪ねてきてしまって、ここまで迎えに来たらしかった。


 だがトイレから暫く待っても出てこない恭介に、おそらく櫻子は小ではなく大の方と考え、何となく申し訳なさそうにしている様子であった。

 しかし恭介は、櫻子がそう考えていることに、逆にホッとしていた。理由は、大は誰でもするからだ。なのでそう思ってくれて好都合であったのである。


 だから何があろうと櫻子に真実を悟られるわけにはいかなかった。


「俺がトイレでしていたのは大ではなく、種ちゃん先生の肌の温もりを思い出し、おちんちんを握り締めていたなんて、口が裂けたって言えやしないしな――だってさ、サクラコ?」


 QBが恭介の心の声を読み取ったように櫻子に言った。


 それに目を丸くする恭介、


「ちょ、ちょっと……QB……さん?」


「ああ、ゴメンよ、キョーコ……ボクはね、人の心を読むことができるんだ」


 QBは人の心を読み取り、伝達手段もテレパシー的な手法で語り掛けるというコミュニケーションの取り方をしていた。


 しかし今の恭介はそれを否定するしかなかった。


「いやいや、読めてないよ。誤読しちゃってるよ。誤読。俺、そんなことしてないからっ……ねっ?」


 チラッと櫻子の方を見やれば彼女は、バツが悪そうに真っ赤にした顔を俯かせていた。


 やはりQBの言うことを信じてしまったのだろう。ただでさえ剃毛プレイにより顔を合わせづらくなっているというのに、こんなことを知られてはこの先、どんな顔で接していけばいいか本当に分からなくなってしまう。


「心配いらないよ、キョーコ……サクラコは怒ってないから」


「えっ?」


 またもQBは心を読んだのか、恭介の思っていることを先読みし、言う、


「男の子だからそういう行為をしても仕方ないってさ。むしろ教え子に性的な目で見られて嬉しいくらいらしい」


「ちょ、ちょっと! い、いい加減なことを言わないでよ、QB! 訂正なさい! 訂正を!」


 と、顔を赤くした櫻子が慌てて言った。

 こうなれば、と恭介もそれに乗っかることにした。


「そ、そうっすよ、QBさん! ウソはいくない! うん。いくない」


 するとQBは少し困ったように小首を傾げて、


「人間と言うのはどうして昔から嘘ばかりなんだい?」


「う、嘘じゃないわよ! わたしはそんなこと思っていないもの!」


「そうそう、俺もんなことしてないし!」


 櫻子と恭介はここぞとばかりに団結し、言ってやった。


「やれやれ仕方ないな」


 QBは一つ嘆息して、


「今回はそういうことにしておいてあげよう。それよりそろそろ準備してもらっていいかい? こんなところで駄弁っているほど、ボクも暇じゃないんでね?」


「え、ええ……そうね? 魔力も十分だし、変身するわよ、瀬奈くん?」


「は、はい……そうっすね? 種ちゃん先生?」


 話題をとっとと変えたいとばかりに二人は変身し、QBに誘われ、断絶世界へと向かったのだった。

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