てーもう

「お、おかしい……」


 櫻子は魔力の回復のため、朝からノーパンツで過ごしていた。

 しかし魔力回復が芳しくなかった。


 もう今日一日の授業が終わりを告げ、これより最難関である現在一位の魔法少女候補生との戦闘が控えているというのに、まだ全魔力値が回復していなかったのである。

 ノーパンツデー授業は今回で三回目。

 多少の慣れもあってか魔力の回復が緩やかとなり、更には里緒奈の竜の苗を吸収したことで魔力値が大幅に伸び、全回復に至らなかったようである。


「ど、どうすれば……これ以上の刺激が必要だと言うの?」


 時間がない。しかし半端な魔力で相手ができるような易しい相手ではないということは分かっていた。


 櫻子は時計と睨めっこしつつ、


「は、恥ずかしがっている場合じゃないわ……や、やるしかないのよ!」


 散々迷った挙句、魔力回復のため、奇策に出ることにした。



          ◆



 里緒奈戦から開けて翌日の放課後、櫻子に竜の苗保有率一位の魔法少女候補生と対決するが準備が必要だと言われ、呼び出された。


 恭介が呼び出された進路指導室に訪ねていくと、なぜか部屋はカーテンが閉め切られ、蒸し暑く感じられた。


「えーっと、準備って何するんすか?」


「ええ、瀬奈くん……鍵、閉めてもらっていいかしら?」


「えっ? 閉めるんすか?」


 誰にも聞かれたくない話でもこれからするというのだろうか?

 恭介はなぜかよく分からなかったが、進路指導室の鍵を掛けた。


「これでいいんすか?」


「ええ、ありがとう……」


 櫻子は言うと立ち上がり、恭介に背を向ける。


「種ちゃん先生?」


 スカートの調子が悪いのか、櫻子はロングスカートに手を掛けてごそごそと何かし始めた。


 そしてその瞬間である。


 いきなり彼女のロングスカートがすとんと落ちた。


「………っ!」


 紳士な恭介は、とりあえず見ていない振りをして上げようとぱっと顔を背けて反対側に向けた。


 ゴムでも切れたのか? とにかく今慌てて直しているはずで、静まったこの部屋からは衣擦れの音だけが響いていた。

 櫻子の下着姿はセクランの装で見慣れてはいるものの、不意をつかれたせいもあり、まだ心臓がバクついていた。


 もういいだろうか?


 恭介は待つこと暫し、衣擦れ音が消えたのでちらっと見やると、


「なっ……」


 状況は悪化していた。


 櫻子は、なぜかブラウスも脱ぎ、上下一枚ずつの下着姿にまでなっていたのである。


「……た、種ちゃん先生! な、何をしてはるんですか!」


 さすがの事態に恭介も思わず突っ込みを入れた。


「な、何って……準備よ……」


 後ろ姿でも耳を真っ赤にしているのが分かり、そう答えた櫻子の緊張が窺えた。

 そして彼女はブラのホックに手を回して外し、そのまま床に落とした。


 驚きに目を見開き、鼻息を荒くする恭介をよそに、櫻子は更にショーツに手を掛け、すべてを脱ぎ去ったのであった。


「た、種ちゃん先生……?」


 櫻子の裸体にゴクリと息を呑み込む恭介。


 櫻子は恥じらいつつ、恭介と向き直る。


「あっ、ああ~……」


 恭介の目が櫻子の股間と胸を往復し、そんなちょっぴり落胆が混じった溜め息が漏れた。


 端的に言えば、櫻子は全裸にはなっていなかった。


 絆創膏三枚で隠さなくてはならぬ場所をしっかりとガードしていたのである。

 しかしなぜこの場で絆創膏の装なのだろうか?


「め、メールで伝えた通り、この後、一位の候補生と決戦が控えているわ? その前にお願いがあるんだけど……」


 櫻子は机の上のコンビニ袋を指差して、


「そ、そこにカミソリとか入っているから……ムダ毛の処理を手伝ってもらっていいかしら?」


 恭介は目をパチクリとさせて、


「……はっ?」


 思わず訊き返していた。


「じ、時間がないから早めにお願い……いいわよね。瀬奈くん?」


「いいわよね、って……そんなの自分でやることじゃないんすか?」


「き、昨日の夜、手入れするの忘れちゃって……鏡とかないし、剃り残しとかあると気になって戦闘に集中できなくなっちゃうかもしれないでしょう? だから綺麗にしておきたいの。頼めるわよね?」


「でも昨日はその恰好で……一日でそんなに生えちゃうもんなんですか?」


「そ、そんなわけないでしょ! 相手が一位だから気合い入れときたいだけよ! いいからさっさと始める! いいわね! やりなさい!」


 そう言って櫻子は、T字のカミソリとシェービング・ジェルが入ったコンビニ袋を恭介に無理やり押し付けてきた。


「いや……でも……」


 恭介は櫻子の絆創膏の装をチラチラと見やりながら、


「べ、別に剃る場所ないっすよね?」


 と、言ってやった。


「う、産毛とかも、よ……背中とか見えないし……あとは絆創膏が隠せてない部分見て、生えていたら剃って欲しいのよ」


「い、いいんすか? それって種ちゃんの身体、隅々まで確認しろと言ってるのと同じっすよ?」


「だ、だからそう言っているのよ!」


「えっ! い、いや……でも……ほらっ! お尻の割れ目とかもですか? そこも確認しろってことですか?」


「割れ目って……そ、そうよ! だからとっととするわよ! 時間がないんだから!」


「い、いやいやいや、割れ目はどう開くんすか? 俺が両手で、ですか? それとも触られるのは抵抗があるからって種ちゃんが自身が押し拡げて俺に見せてくれるんすか? でも毛があったら俺が剃るんすよね? そしたらどうしても俺が直に触れてクリームを塗って剃ることになるけどいいんすか? いいんすか?」


 詰め寄り言う恭介の言葉に、櫻子は頭の中で想像したのか、頬を上気させつつ、


「い、いいから! とりあえずこっちからよ!」


 と、左の脇を上げて見せた。

 女性の脇を間近でこうもまじまじと見るとは思っていなかった。


 ちなみに毛の処理はしっかりと行き届いており、恭介が剃る必要はなさそうであったが……


「え、え~っと、た、種ちゃん先生……?」


「えっ? な、何……? も、もしかして生えてた……?」


 少し驚いたように訊いてくる櫻子。


「あ、いえ……脇汗がじんわりと」


「なっ!」


 瞬間、櫻子はカーッと顔を真っ赤に染め、両脇を押えて、


「む、蒸し暑いんだから仕方ないでしょ! そういうのは黙っていなさい! こっちだって恥ずかしいんだから!」


 激おこされた。


「いや、そもそも恥ずかしいのなら――」


 こんなことをしなければいいと恭介は指摘しようと思ったが、止めた。櫻子が自身に剃毛させようとしている理由に思い当たる節があったからである。

 櫻子は、顔を真っ赤にしてとても恥ずかしそうだった。つまりそれが理由だ。おそらくは櫻子は、こうして自ら辱めを受け、魔力の回復に努めているのだと思われた。


 であれば恭介も、積極的に協力する必要があった。


 おそらく櫻子は、魔力が全回復した時点でこの恥辱イベントを取り下げる腹積もりに違いなかった。となれば手っ取り早く辱しめて魔力をMAXにさせてやるのが吉。でなければ本当に先ほど言ったように、お尻の割れ目を自身で拡げる櫻子を見なければならなってしまうだろう。そしてもし毛が生えていたら剃らなくてはならないのだ。そんなことになったら今後どんな顔で櫻子と接していけばいいか分からなくなってしまう。


 よってそうなる前に何としても櫻子の魔力の回復に努めなくてはならないのである。


「それじゃあ種ちゃん先生、椅子に腰かけてもう一度脇を上げて見せてください」


 恭介は言いながら、シェービング・ジェルの容器を取ってキャップをパカッと外した。


「えっ? 脇の処理は完璧……だったわよね?」


 実際に櫻子の脇は綺麗であったし、おそらく処理は済んでいる状態で、恭介に見せていたと思われた。


 だがそれではダメなのだ。

 櫻子には嘘を吐いてでも、魔力も回復してもらうのである。


 恭介は、手にシェービング・ジェルを伸ばして、言う。


「さあ、種ちゃん先生? 早くしてください」


「……くっ! わ、わかった……わよっ!」


 そうして羞恥の顔に塗れた櫻子は、椅子に生尻をぺたんと置いて、若干身体を震わしつつ、脇を上げたのだった。

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