戻るかな?
「これで……戻っちゃうのか?」
色葉はベッドに横になり目を閉じる。
何だかんだあったけど、とりあえず恭介と入れ替わって明日で三日目。
天孤神社でお願いした三日後に身体が入れ替わった。つまり三日間でお願いの効果があらわれるということ。
よって恭介とお参りして三日経つ明日には二人の身体が元に戻るはずであったのだ。
今回の件は神に感謝である。
こうしてたっぷりとおちんちんを弄ることができたからである。
しかしこのおちんちんは恭介のモノであって恭介のモノではない。
身体は所詮器に過ぎず、今ここにあるおちんちんは色葉のおちんちんになってしまったのである。
色葉がイジイジしたかったのは恭介に付属するおちんちんであり、自分のおちんちんではなかった。
だから元に戻らなくてはならないのである。
「でも、そうなると……ちょっと名残惜しいかな……」
色葉は冴える目をパチッと開けて、明かりをつけた。
「もうちょっとおちんちんいじっとこ」
これで恭介の身体とはお別れ。
何なら明日目覚めたら入れ替わっている可能性だってあった。
そんな訳で色葉は、最後にもう少しだけおちんちんを弄ることにした。
「――って、もう七十二時間以上経ってるじゃん!」
昨晩は眠ればもしかしたら元に戻ってるのじゃないかと思っていた色葉であったが、そんなこともなくおちんちんはついたままだった。
仕方なく学校に恭介として行き、無難に過ごした。
帰宅したらおちんちんを弄って、夕食をいただいて、部屋に戻っておちんちんを弄って、お湯をいただいて、おちんちんをよく洗って、風呂上りに部屋でおちんちんを弄ってるところでようやくその事実に気づいたのである。
参拝してから三日経てば元に戻ると思っていた。
しかし三日――七十二時間以上経過した今も、色葉は恭介の姿を維持したままであったのである。
「何で? 三日経てば戻るんじゃなかったの?」
しかしそれは色葉が勝手にそう思い込んでいただけであり、もしかしたらずっとそのままの可能性だってあったのである。
「そ、そんなの困るよ……」
色葉は色葉として恭介に愛され、おちんちんを弄りたかったのである。
「ど、どうしよ。どうすれば……」
このままでは困る。おちんちんすら咥えられぬ。
とりあえず落ち着いて考えなればならない。
色葉は心を落ち着かせるため、おちんちんを握りながら深呼吸をした。
色葉はおちんちんを握ると安心するのだ。赤ちゃんが母親の心音を聞くと安心するのと同じである。
「ふぅ~、よしっ……」
そしておちんちんを握りながら思考する。一体なぜ元に戻らないかその理由を。
まず身体が入れ替わったのは天孤神社に参拝したのがその理由だと仮定した場合からだ。
もしそうであればもう一度参拝すれば元に戻っていいはず。なのにそれをしたのに元に戻らないのはどういうわけか?
「時間にバラつきがある……?」
もしかして順番待ちの状態だったりするのだろうか……?
身体が入れ替わる際は三日で叶えてくれた。
しかしここ数日で天孤神社の参拝客が爆増し、神様が順番で願いを叶えていっているためにこちらの順番が回ってくるのがちょっと遅くなるとかであろうか? もしそうだとしたらいつになったら戻るのだろう?
参拝方法は間違えていないはずであるから、いずれは元に戻してくれるとは思うが、それはいつになるのだろう?
「んっ? 参拝方法……間違えてない……よね?」
色葉はおちんちんを握りつつ、眉をひそめた。
もしかしたら根本的に何か重大なミスを犯しており、願いを叶えてもらえないという可能性もあると考えたのだ。
「ちゃんと教えてもらった手順は踏んだはずだけど……」
参拝の方法は隣のクラスの清音に教わった。
一度目は成功したのだから間違えなかったはずだ。
一度目と二度目の相違点といえば、一度目は一人で、二度目は恭介と参ったということくらいであろうか?
「恭ちゃんがふざけてたから……?」
もしかしたら恭介は神頼み何て馬鹿らしいと考えて、本気でお願いをしておらず、神様は願いを聞き入れてくれなかったのだろうか?
「でもわたしはちゃんと願ってるし……」
色葉の方は参拝の手順を守りお願いしたから神様に願いは届いたはずである。
いや、何か手順を間違えてお願いでもしたりしたのだろうか……?
色葉はもう一度、清音に習った参拝の手順を反芻することにする。
鳥居をくぐる際は一揖――つまりは一礼する。
神様の通り道とされる参道の真ん中を通らず、右側の場合は右足から踏み出し歩き出す。
身を清めるため手水舎で両手と、口をすすぐ。
神殿前で一揖し、お賽銭を入れ、境内の鈴を打ち鳴らす。
そして二礼二拍手した後、手を合わせてお願いごとを願うのである。
「何も間違ってない……よね?」
一度目と同じく二度目もそつなくこなしたはずだった。
仮に違うところがあるとすればそれは色葉自身であり、その肉体が恭介のモノであったところだけで……
「えっ? まさか……そういうこと?」
色葉はあることに気づいて握っていたおちんちんに自然と力がこもった。
「そうか……あすこは本来、禊をする場……だから……なのね?」
色葉は参拝の際、手水舎で両手と、口をすすいで清めた。
しかし男となったことで穢れた部分が増えたため、穢れが落ち切っておらず、神様は激おこして色葉の願いを叶えてくれなかったのかもしれない。
参拝前は本来、禊をしなくてはならないが、さすがに現代ではそうも言っておれず、簡略化して今の形になったのだと清音に教えてもらった。
つまり手水舎でこのおちんちんの穢れもしっかり落とせば神様は色葉の願いを聞き入れてくれるはずであった。
そうと分かれば参拝をし直す必要があるが……
「どうしよ? 明日の朝にでも……いや、でも誰かに見られたら……」
穢れを落すためとはいえ、手水舎でおちんちんを洗っていたら怒られるのではなかろうか?
そうなると人目につかない時間帯に参拝した方がいいということになる。
「……よし、今からいこ!」
この時間帯に神社に人はいないだろう。
色葉はおちんちんを握りながら決然と立ち上がった。
と、ちょうどその時だった。
携帯電話から着信音が流れ始めたのである。
恭介からだった。
色葉はおちんちんを握りながら、空いている、もう片方の手で電話を取った。
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