シリアナ

「わ、わたし……何て破廉恥な真似を……」


 プロラクチンが脳内に分泌され、女賢者となった今、自身のした行為が急激に恥ずかしくなってきたのである。

 いつも性的欲求が高まると、抑えきれず、度を越した行動に出てしまうことが度々あった。


 とりあえず見られず良かったと胸を撫で下ろす。


 クローゼット内部で尻肉を両手で押し拡げ、お尻の穴を見せつけるようにスタンバっていた色葉。


 しかし恭介はクローゼットの扉は開くことなく寝入ってしまったのである。

 もしあの場面で扉を開けられ、お尻の穴のしわを一本一本声に上げて数えられたかと思うと、恥ずかしさで死んでいたかもしれない。 


 助かったと思う反面、それはそれで不満な部分もあり、仕方ないので眠った恭介の脇で、声を押し殺しながらオナニーして帰ってきたところであった。


 振り返れば何て大胆な行動を。もしあの場面で恭介に気づかれたらどう思われたろうか?


「けど、今度は……」


 湧いた欲求は満たさなければならない。

 しかし恭介にお尻の穴を見せつけたいという欲求はどう果たせばいいのだろう?


 いきなりお尻の穴を見せたらちょっぴりおかしな女の子と思われるかもしれないし、それは避けたい。


 例えばであるが、同級生の好きな男の子の手に触れたいとかそういう欲求であれば、机から落ちた消しゴムを拾って渡す時にさりげなく触れるなんてこともできるだろう。


 同じように、さりげなくお尻の穴を恭介に見せつけるにはどういった手段があるだろうか?

 今は亡き、ノーパンしゃぶしゃぶ的な手法か? ノーパンでわざと高い位置の荷物を取ればいいのか? しかしそれだとしっかりと見せつけられない。


 やはり一番自然な流れでガン見してもらうには、風邪を引き、座薬を……


 いや、待て。そもそも今の関係で座薬を入れてもらうのは到底不可能。

 まず仲直りをしなければ、家にお見舞いにも来てもらえない。仲直るべき。何よりそれからであった。


 まずは恭介に素直になる必要がある。


 色葉は暇さえあれば恭介のおちんちんのことばかり考えているのだが、恭介の前に立つとより一層、頭の中がおちんちんのことでいっぱいになり、それを悟られまいと行動するあまり、不自然なほど恭介に強く当たってしまっていた。


 何とかそれをなくせば素直に謝ることもできるかもしれないが……


「そうよ、わたしは頭がいいのだもの。考えるのよ、志田色葉……」


 学年でもトップクラスの頭脳をフル回転させ解決策を導き出す必要があった。


 どうやって平常心を保てばよいのか、オナニー直後の思考はかなり安定しているわけだし、常にオナニーして接すればよいのだろうか? いや、さすがにそれはダメか。オナニーが止まらなくなってしまう。オナニーは急に止まらない。しかしより強い刺激を与えるというのはいい手段かもしれない。


 恭介が目の前にいるという刺激を緩和するため、それ相応の刺激を与え続けていれば、恭介の前で下手に強がる必要がなくなり、自然体で話すことができるかもしれない。


 ちょうどこの間、通販で購入した手頃なアイテムもある。


 それでも恭介の匂いの染みついた彼の部屋に押し掛けては理性が保てるかわからない。謝罪するなら学校で、ある程度周囲の目があるとわかっていた方がブレーキが利いていいだろう。


 しかし万が一にでもそれを使用してすることが周囲にバレたらどうする? もしバレたら変態と勘違いされてしまうかもしれない。さすがにそれは心外であった。


 確かに色葉は、一日最低三回はオナニーしているし、恭介が視界に入ってムラムラしたら授業中でも周りにバレないようにこっそりオナニーする。


 だがしかし、決して変態ではない。単に欲望に忠実なだけ。

 例えば大空翼くんが一日中サッカーことを考えていても変態扱いはされない。

 それと同じ。好きの対象が、大空翼くんがサッカーなら、色葉の場合は恭介のおちんちんというだけ。


 よって色葉が日がな一日、朝から晩までずっと恭介のおちんちんのことを考えていたり、オナニーしていても変態扱いされる謂れはないのである。


 そもそもオナニーして変態扱いされては世界中が変態だらけになってしまう。してるとは明言しないだけで、女の子だってオナニーをしている。むしろ一日一回もオナニーをしない女の子の方が少数派の変態なのである。


 とにかくやってみる価値はあるかもしれないなら試すだけだ。

 何としても明日、恭介に謝らなくては。


 日が経てば経つほど謝りづらくなってしまうから。

 そうと決まれば今日は早く寝て、明日に備えなければ。しかし目が冴えて眠れそうにない。


「仕方ない。おちんちんでも数えるか」


 色葉は目を閉じて、恭介のおちんちんを思い出す。


「おちんちんが一匹、おちんちんが二匹……三匹……五匹……十二匹……」


 色葉ははっとし、上体を起こす。


「おちんちんに取り囲まれた! 無数のおちんちんに四方八方、取り囲まれた!」


 恭介のおちんちんファンネルに取り囲まれ、逃げ道が閉ざされた。


 余計、眠れなくなった。

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