姉に確かめる
部屋に戻った色葉はとりあえずオナニーして気分転換したわけだが、眠りにつけないでいた。
恭介にショーツを無理やり脱がされてお尻をペチンとされた。
それはもういい。
しかし、それを誰かと間違えたという恭介の言葉がやはり引っ掛かったのである。
本当に、普段からそういった願望を強く抱いており、もう一人の彼女である結愛のお尻を叩いていたりするのだろうか……?
しかし恭介がそんな趣味があったとしても、結愛にそんなことをしているとは思えないし、情報共有しているはずの結愛の口からも聞いたことはなかった。
「も、もしかして……お姉ちゃん……?」
里緒奈のお尻は叩きがいのありそうなでんと突き出た巨尻で、仮に叩いたらぷるんと揺れ、そういった趣向に目覚めたなら小さい頃から近くにいる姉の存在が一番大きいと思ったのである。
恭介は里緒奈と色葉に内緒でキスをしていた経緯もあり、もしやその先もしているのではないかという疑念がもたげ始める。
「…………」
このままではもやもやして眠れそうになかった。
こうなれば姉に直接確かめに行こうか?
「うん。そうしよ……」
無論里緒奈はまだ眠っているだろう。きっと迷惑がるだろう。だがそれでいい。
里緒奈は頭が回るし、仮にそういうことがあっても上手くはぐらかされてしまう可能性があり、そういった探られたくない事情を聞き出すには、半分寝ているような状態の方が情報を引き出し易いと思ったのである。
そんな訳で色葉は早速行動に移すことにした。
「お姉ちゃん? 起きて。お姉ちゃん?」
里緒奈の部屋に侵入し、完全に寝入っていた彼女の身体を揺する。
「んー? 色葉……?」
目を覚ます里緒奈。
「おはよー、お姉ちゃん?」
「んー? おはよーって……今何時よ?」
「二時」
「……二時……?」
里緒奈はベッドから上体を起こし、眼鏡を掛けて煩わしそうに色葉を見やる。
「……何? 何かあったの?」
「お姉ちゃん? 訊きたいことあるんだけど……いい?」
「いいも何も……何よ? さっさと言いなさいな」
「うん。お姉ちゃんさ、恭ちゃんにお尻叩かれたことある?」
里緒奈は突拍子もないその質問に眉根を深く寄せ、目をパチクリさせつつ、
「……はぁっ? 何言ってんの?」
「恭ちゃんそーいうの好きっぽいからもしかしたらお姉ちゃんとしてるのかなって思って……」
「恭介くんがそんなことするわけないでしょ?」
この反応は純粋に白っぽかった。
「……本当に? コックリさんに誓って?」
「ええ、仮に恭介くんがそんなことしてきたら半殺しにするわね?」
「そう……よかった」
ホッと胸を撫で下ろす色葉。
コックリさんをやるといっても動揺を見せないということはおそらく嘘は吐いていないはず。
「というか唐突に何なの? お尻って? まさか叩かれたの? 恭介くんに?」
「えっ? そ、そういうわけじゃ……」
とりあえずそこは濁すことにする。
「じゃあ何? そういう漫画かDVDでも所持してるの見付けて気になったとかそういうこと?」
「う、うん……まあ……そんな感じ」
「ふーん、恭介くんがねぇ~……まあ、いいんじゃない? 付き合ってあげれば」
「恭ちゃんに……付き合う……?」
先程は突然のことで泣いてしまったが、確かに恭介が仮にそういった趣味を持ち合わせているなら、彼女としてそれに付き合うべきだろう。
色葉は変態ではないのでお尻を叩かれたいという衝動は持ち合わせていないが、望まれるなら今後はお尻を差し出すことにした。
そして恭介がおちんちんで頬をビンタしたいというならそれだって受け入れる覚悟であった。
というかおちんちんでビンタされたい。
おちんちんで往復ビンタされたい。
「……色葉?」
と、ぽわーんと頬を紅潮させていた色葉に問い掛ける里緒奈。
「…………」
「ちょっと色葉?」
「えっ? な、何? お姉ちゃん?」
「……涎垂らして何してるの? 気持ち悪い」
そこで色葉はハッと我に返り、垂れた涎をけれ慌てて拭って、
「べ、別に卑猥な妄想してたわけじゃないもん!」
「……してたのね? 用は済んだでしょう? そういうのは自分の部屋に帰ってなさい」
呆れられ、里緒奈に部屋を追い出される色葉だった。
◆
「おは……えっ? せ、瀬奈君……? ど、どう……したの?」
結愛は待ち合わせ場所に現れた恭介を見て目を丸くした。
彼の顔色が尋常ではないように見えたのだ。
「あー、ちょっと変な時間に起きちゃって眠れなかっただけ……ははっ……」
と、力なく笑みを浮かべる恭介。
「そ、そう……なの? それだけ? た、体調悪いなら、今日は無理せずお休みした方が……?」
「あー、大丈夫よ、大丈夫……今日はいかないと……うん」
何か大切な用件があるらしい。
「じゃ、じゃあ……せめて自転車止めて電車で……行った方が……その……いいんじゃない……かな? そんな状態じゃ危ないよ?」
自転車で居眠り運転とかあまり聞いたことはないが、今の状態だと危険な気がしたのでそう忠告した。
「うーん? そこまで悪くないよ? 眠たいだけ……眠たいだけ。電車に座りっぱより風に当たってた方が目も覚めるだろうし」
確かにそうかもしれない。
とはいえ心配なので今日は電車で行こうと薦めてみたが、恭介はその忠告に耳を傾けてくれはしなかった。
「それなら仕方ないけど……き、気を付けてね」
「……ああ……大丈夫。大丈夫」
そうしていつも別れる駅までたどり着いてしまって、
「ほんじゃ、また」
と、自転車に乗る恭介。
「大丈夫……かな?」
心なしか自転車もふらついているように見えるし、無理にでも止めておくべきだったかもと結愛は不安に思った。
まあ、そんな車の通りが激しい道は通らないから事故には合わなとは思うが、やはり心配であったのである。
「まあ、信じるしかない……よね」
そして駅の構内に続く階段に足を掛けたとこで結愛は大切な日課を忘れていたことに気付く。
それは、朝のお漏らしである。
恭介を心配し過ぎ、また彼に生気が感じられず、漏らしたいという欲求が湧いてこなかったのである。
まあ仕方ない。
次の機会に倍するしかないと諦めて、駅の構内に向かったのだった。
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