Dream6 苦しみの星
果てしなく広い宇宙。
未だに広がり続けているこの広大な宇宙の、とある星。
生命は数多く存在するものの、皆が皆、力強く生きているというわけではない。
荒れ果てていた。
人々は飢えに苦しみ、水一滴の余裕すらも存在しない。言うなれば、地獄の一部を切り取ったような光景が、各所で見られるほどである。
生きるために甲殻類をも捕食させられる。勿論、できることならばこのような生活は送りたくはない。寧ろ死にたい。
ここに居る「ルリア派」の人間は皆、息も絶え絶え、命も絶え絶えな生活を余儀なくされているのだ。
生きる屍は口を揃えて、「ルリアは我々を裏切った」と、憎悪と絶望に歯を軋ませる。
対して、「星皇派」の人間は皆、裕福な暮らしで幸せを感じ暮らしている。
ルリア派とは住む場所も生活レベルも、何もかもが違っていた。その証拠に、皆が笑顔だ。苦し気な表情を浮かべる者など誰一人として居なかった。
彼らは皆口を揃えて、「星皇について良かった」と、己の幸福に腹を膨らかす。
この二極化は、一体何故起きてしまったのだろう。
いつぞやに起きた、とある内戦。これが全ての元凶と言われている。
その反乱を起こした者こそが、ルリアという少女。
彼女は現星皇の行動が気に入らず、とある国の心優しき王子と同盟を組み、星皇軍との戦いに挑んだ。だが、その中途、いざ戦いが始まらんという時に、ルリアとその他国の王子が謎の失踪を遂げた。
何か巨大な策を持って、必ず戻って来ると、同派の皆は信じていた。
戦いながら、皆は耐えた。信じていたから戦えた。
……だが、いつになっても戻って来ることは無かった。
属していたとある研究者は「私達を裏切ったに違いないね」と、自身の学んだ心理学の面から強調した。その男は、周りとは異なった外見をしていた。
何故かその男は不敵に笑う。科学者というのは本当に解せない人間である。
一同は戦意を喪失した。
信じてついていたはずの者二人に逃げられた。
そのショックは、甚大という言葉で済むものではないだろう。
そうなってしまえば、もう立ち直ることなど出来ない。
一同は降伏し、抵抗する力もなく、静かに捕まった。
「もう、我々には信じられるものは何も無い。いっそのこと殺してくれ」
同じように、全員が弱々しい声で嘆いた。だがこの星皇は、聞く耳を持たなかった。
殺すということは、楽にさせるということだとでも思ったのだろうか。星皇は、全員を生かすという選択を選んだという。
これにより、彼らにとっての生き地獄が完成した。
生活レベルは最低以下まで引き下げられた。なのにも関わらず、死ぬことが許されなかった。
死のうとすれば、何故か翌日に蘇ってしまう。まるで何事も無かったかのように、死のうとした記憶だけが残っているらしい。
信じられない話であるが、この星のある地域で、実際に起きていることなのだ。
人為的な何かがあるとでも言うのだろうか。だが、それすらも判らない。
ただ、死ぬことを許されなかった者たちは皆、無理矢理生かされ、地獄を味わう。
皆は星皇派の住む地域を見て、口々に「殺してくれ、殺してくれ……」と声とも言えぬ声を出して、懇願する。だが、誰もが無反応だ。関わりたくはないだろう。
「死刑より重い罪があるとすれば、それは何だと思うかな?」
白衣の男はニヤリと笑った。背丈の低い、この星の民とは思えない髪色や瞳の色をしている。
「さあ、一体何だ?」
解せない表情で、星皇は尋ねる。
「フフフ……永遠の命だよ」
科学者は一人、また不気味に笑った。この世の何を見たとも言えぬ、光の無い眼であった。
「お前は何を望んでいるんだ」
「私はただ、奴らに教えてやらねばならないんだよ。この世界で……」
「……お前にも深い事情があるのだな」
「ああ。星皇には分からないようなことまでね」
――苦しみは永遠だ。
例えどんなことがあっても、開放されることはない。
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