第1話 白旗の女子高生

 

 彼女は、こう思った。

(あれ? 私、何でここにいるんだっけ?

 今日は入学式で、晴れ舞台の制服を着て登校した…よね?)

 天気も晴天で、それは高校デビューとしてはピッタリな一日。

 何事もなく、問題もなく。

 『平和な一日』……なはずだった。

 そんな疑問が浮かぶ最中……高校一年生の女子高生。葉田白子――。



 彼女は今、一発の弾丸が胸を貫き、瀕死の状態に陥っている。



 倒れこむ地面に、生暖かい冷たさを感じた

 ……その辺りは真っ赤に染まり広がっていくことがわかる……。

(あぁ……ごめんなさい)

 遠のく意識の中、自分の無念さを悔やみきれない。

 


 何故、少女は打たれたのか?

 何故、一人の女の子も打たれなけばならなかったのか?

  

 それは――10時間前へと、さかのぼることになる――。



 □□□ □□□



 七畳一間の空間に敷かれた布団。


 布団から一本の腕が飛び出し、手探るように辺りを左手は探す中見つけた・・・テレビリモコンだ。

 電源を入れ、ポイっ。

 無造作にリモコンを投げ放置。

 テレビから流れる音声が薄暗い部屋に響き渡り、何にもない平然とした空間が流れる。

『次のニュースです。本日午前7時頃、東京都内の銀行にて強盗による立てこもり事件がありました。犯人は女の子を人質に取り身代金としてを警察に要求しました。その後犯人は逃走し…』

 狭い空間に響く女性アナウンサーの声。

 もぞもぞ布団に包まるその子は、一方に出る気配を感じさせない。


『ニュースは以上です。時刻は8時をお知らせします』


 ・・・。

 ・・・・・・。

 布団は勢いよく剥ぎ捨てられる。

 跳ねた髪に、着崩れした水玉模様の黄色いパジャマの少女。

 口によだれを垂らし、少女は呟いた。

「あっ、謝らなきゃ…」

 この時点でこの少女。葉田白子はだしろこは友達に謝ることを心に決意をする。

 ――――――


 千葉県 木更津市。


 アクアラインを超えた先に位置する、小さくも大きくもない。つまり普通の町。

 

 巨大ポールに設置された時計。

 バス停の付近に作られた時計は、時刻【9:00】を指している。


 足踏みをして、『怒ってますオーラ』を放ちながら……。

 「……」(いつまで寝坊する気よあの子は…)

 ふわっとしたポニーテールは左右に揺らしている。

 私立の学生制服を着こなし。外見は木更津市内の女性ではトップの部類に入る綺麗な顔立ち。

 学制服を着てなければ美人なOLと見間違いしても無理はない、大人びたスタイル。

 ハァ……。っと一回。

 赤橋夕陽あかばしゆうひは、呆れた溜息を出した……。

 そして、その不機嫌の元凶……今、遠くから慌てて走ってくる少女の姿を確認した。

 遠くからでもわかる、さほど髪の手入れなどしてない。それでも綺麗なショートヘアーが靡く

 少女の姿が。

「やっっっと来た白子ッ! あれほど昨日、寝坊しないでって――」

 今まで一時間待ちくたびれ不満を、やっとこさ言おうとした。

 だが、最後まで言おうとする前に、その遅刻のご本人様は……。

 ……それは綺麗な土下座だった。

 付け足すと、真っ白な白旗も掲げ……。

 制服姿で、ミニスカートなのに……躊躇いなど感じさせない。

 呆気をとられる彼女へ捧げるように、日本文化の最大の謝罪――土下座を決めていた。




 ………………ごっ。




「ごめんなさいゴメンナサイ本当にゴメンなさいッッッ!!誤っても土下座しても『許されない』のは十分承知だけど、でもねそれでもね何か示しをつかなきゃ悪いと思ってますごめんなさいごめんなさいごめんなさい生きていてごめんなさいッッッ見て!見てェェこの白旗をッッ!!降参です負けです敗北です全て私が悪いの、この地球で立っていることも悪いとは正直心の中で思ってましたもぅ土下座でも白旗を何回も振りますからごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさ」

 ……。最後辺りは壊れたレコーダーの様だった……。


 どうやら……夕陽は気づくのが遅かった。

 周囲から目線……会社員や、保育園の園児たちの痛い目線――を。

 

「わかった!! わかったから許すから、頭上げてよ。……恥ずかしいから頭を上げて!!」

「……本当に許してくれる?」

「……納得は…してないけど……」

「ごめんなさい本当にごめんなさいゴメンナサイ」

 ゴォッン!! ゴォッン!! ゴォッン!! ゴォッン!!

 町中に鈍い音が響く。

 自分への罰を与えるかのように。少女は躊躇なく地面にお凸を叩きつけ謝る……無論、土下座で。

 さらには真っ白な白旗を掲げながら、地面からは血が滲むような様子が伺えた。

 傍から見ていた一般人は誰一人言葉にせずとも思っていた……。


 (やっべぇぇぇぇあの子怖い)

 

 「許すぅぅぅぅ!!」 

 それは隣、駅のホームまで響く涙交じりの声が、木更津駅付近の人々の耳に届いていた。


 □□□ □□□


 私立奇皇帝しりつきこうてい高校。

 校内の敷地面積は約一万坪。

 この木更津市内では、知らない者はいないと言われるマンモス校。

 しかしただのマンモス校ではなく、およそ10年前近く。「我が校を、全国に素晴らしい成果を残したい」と校長による願望で始まり、何桁と数えられない財産を使い全てを『それ』に力を注ぎ込んでいた。

 結果、全国各地、その若者達だけを抜き取った。成果を残し、実力派だけを育成する名門校として、全国に知れ渡っていった。

 ……それは何か?



 ――そう、スポーツ。



 特待生には入学金・教材費。さらには食堂も無料。

 県外の生徒には敷地内のホテルも貸し出してくる……無論、これも無料。

 この奇皇帝高校に、特待生で選ばれることは学校人生をタダ生活で過ごせる夢制度だった。

 

 それはテニス全国大会ダブルス部門の優勝ペア……白子達も例外ではない。

 

 「う~わぁ~っ!!」

 白子の口からは、思わず声が出てしまった。

 その広がる光景に、ただただ驚くしかなかった。

 ――百近い部活動の勧誘。

 地面も確認できないほど生徒達で溢れ、そこはまさにお祭り会場だ。

「まぁ、ここは私達に関係はないかな」

「だ、だね……」

 アハハ。っと、白子は苦笑いを浮かべ返答する。

「何してるの……っボーッとして? ほらぁ、さっさとテニス部に行くよ」

 先輩方に挨拶しに。っと付け加え、まずはテニス部の先輩達に挨拶しに向かうことに。


 □□□ □□□


「珍しいね。夕陽ちゃんから『先輩達に挨拶しに行こう』って」

 部活動勧誘をする先輩生徒達の中。

 ちょうど一キロぐらい歩いた頃。白子は思い出した様に夕陽に言った。

「まぁ……さすがに挨拶しといたほうが良いでしょ? 私達、後輩だし」

「だよねだよね!? これからお世話になる先輩達だもんね」



 ――感動したっ!



 さかのぼって、それは保育園時代から始まった。

 先輩を先輩だと思わない。あの上から目線の夕陽ちゃんが、自ら先輩達に挨拶しに行くことに……これが、高校デビューなのかとっ!


「そりゃあそうよ。



 ……。



 頭を抱えるように白子はただ、深い溜息を吐く。

 返してくださいあの感動……。

「仕返しされてもさ。後々面倒って考えて……『これから先輩方に迷惑かけますので、以後ヨロシクお願いします』って、先に謝ってたほうが楽だろ? ボロ勝ちした後よりは」

 要約すると体験入部で『宣戦布告』と言うこと。

「相変わらず、夕陽ちゃんは冗談が上手いね~」

「えっ? 私と白子に勝てるザコとかいるの?」

 ……真顔で言われてしまった。

 心の中で、万に一つ「アハっ☆ばれた~?」って冗談だった事に賭けていた白子だが、それは空しくへし折られる。


 あぁ。何でこの子は……。


 保育園時代もそう。

 人気の遊具も、砂場も夕陽ちゃんが独占。挙句の果ては先生達も注意出来ない地位に君臨。

 小学生時代もそう。

 下級生から上級生、ついでに先生からも恐れられ。入学して3か月で学校の番長として君臨。

 中学時代もそう……。

 初めて触れる、テニス部へ体験入部し、入部して三日後には団体戦レギュラー選抜され新人戦で全国優勝。

 その人並み外れたスタミナ・パワー。プロの男性選手をも目を疑う、驚異の220㌔サーブボールは今だ誰も、そのボールに触れたものはいない。

 挙句に全テニス業界から付いた二つ名――『閻魔後衛えんまこうえい』。

 白子は、小学時代で薄々感づいていた。


『夕陽ちゃんは何かに君臨してないとダメな女子』だと。

 

 次々と、夕陽ちゃん伝説を思い返す。

 しかしそれは、自分の胃を痛めるだけの行為だと気づき、思い出すのを辞めた。

「確か~、こっちの『南体育館』裏手にテニスコートがあるから、もうすぐ着くぞ白子……ん? 白子……?」

 っと。振り向くと横に、先程まで一緒に歩いていた白子がいなく。夕陽は真後ろから

 唸る声がする声の元へ振り返る。

 ……蹲り、体を震わせ……。

「――とっ、トイレに……行きっ、たい……」

「ちょっと、顔青ざめてるじゃない!? 一緒に探してあげるから、早くトイレ探すよ?」

「ひっ、一人で大丈夫だから……夕陽ちゃんは待っててーー!」

 駆け出すように「あっ白子!?」っと、夕陽の呼び止める声を置いて。お腹のピンチを掲げ、白子は部活動勧誘する広場の中に消えて行った……。


 □□□ □□□


「この辺りトイレは……ない、ですか……。いいえごめんなさいッ! 呼び止めてすみませんでしたッ」

 苦笑い浮かべ、その男性教師は奇妙な物をみる目で去っていく。

 内股で、尋常ではない身震い。謝りながら白旗をブンっブンっ振り謝る白子を流し目に。

 無我夢中に、女子トイレの場所を探し飛び出したものの……。

 ここで致命的なことに白子は気づいた。私が居るのは高校。中学校ではない……。

 しかも入学式当日であり、面積1万坪超えの校舎を把握しているわけもない。


 夕陽と別れて早10分が経過した頃、未だにトイレが見つからず。白子は危機を迎えていた――――。













          【 敗 北 確 定 】













 ――ダメだ。ダメダメダメ……。

 その、未来だけは何としても回避しないと……。

 だが、それは出来そうにない。

 もう、頭真っ白で。胃の苦しさに……意識が少し、また少しと遠のいていく……。



 万事……休すか?



 チラっと、白子の視界に一つの『扉』が映り込む。

 ペンキ、スプレーなど落書きされた扉。

 ゴミ袋が沢山……ざっと6袋ぐらい? 山の様に横に積み上げられている。

 それは、傍から見ても。今、人生の危機に直面している白子が見てもこう思ってしまうだろう。




 (ゴミ捨て場だぁ~!)※違います。




 ……。

 恐る恐る、左に目を移す。

 続いて、右に目を移す……。

 廊下には、私以外。つまりは白子以外誰も人はいなかったことを確認。

 ……。


(あー神様。そして天国のおばあちゃん……。どうかこの罪、いつか償います。朝トイレに行き忘れ、その末路を迎えるこの私を許してください)


 目には見えない白旗を振り続け、一息深呼吸……。

 祈る様に……。

 今――『古びた扉』を手にかけ。

 息を飲む。白子は恐る恐ると、その意外にも重い『古びた扉』を開けた……。


 ――――――。


 突然。強く、眩しい閃光が白子の視界を覆い尽す。


 ……これが、言葉を失うことかと……目を大きく広げ白子は思った。


 輝く、二つのガラステーブル。それを挟む形でいくつか真っ赤のロングソファーが向かい合うように。

 して。天上から吊るされた煌びやかな高額そうなシャンデリア……。

 ゴミ捨て場からは遠く離れた……煌びやかな高級部屋が広がる……。


「――誰だい? そこに居るのは」

 茫然と立ち尽くす白子。すると、窓際に立つ……一人の女性らしき面影に気づいた。

 黒衣こくいを着た女性、年齢はパッと見30代前半。

 外見は『木更津にも、こんな美女がいたなんて……』と、見とれてしまう整った顔立ち。

 口にはタバコを咥え、長いロングヘアーが靡く。

 鋭い目で睨みを利かせ、怯える白子を見つめた。

 瞬間。白子はそれを取り出し

「す、すすみませんッッ! 勝手に、ノックもせずに入ってしまって……あのぉ、その。本当にごめんなさいぃぃぃ!!」

 愛用の白旗をブンっブンっ振り回した。


 すると。黒衣の女性は、白子の足元に気づく。

 ……青色の、ラインが入った上履き。

 奇皇帝高校の上履きは学年ごとに、何学年かをより分かりやすくさせるため色別に上履きを学校側から提供される。

 今年は三年生が黄色。二年生は赤色。して、一年生が青色……。

「新入生かぁ~……なんだ悪いね驚かす真似し……て?」

「う、うっ~~……」

 忘れていた……お腹の限界を。



 さようなら高校人生――おはよう女子失格人生……。

 


「……トイレ行きたいのかい?」


 !?

 唐突の質問に、慌てて首を縦に振る白子。

「うちらの部室で良ければ、ココ貸すよ」

 クイっクイっと親指で指す方向に、おどおどしと白子は目線を移す。

 そこにもう一つの扉。外の扉と違い豪華な風格を感じる仕様だ。

 


 扉には、英単語で掘られた小文字が刻まれている……。

 『(toilet)』

 


 □□□ □□□


「土下座するほどではないだろ……そんな謝るなって嬢ちゃん」

「いいえッ! トイレ貸して頂けなかったら、私はここ死んでたでしょう! 女性として確実に死んでましたっ! こんな私にトイレを貸していただけるなんて……本当っにごめんなさいぃぃ!!」

 真っ新な白旗をブンっブンっと振り、白子はザ・土下座を決めていた。

 頭を掻きながら、黒衣を着た女性は溜息交じりに言う。

「面白い一年生が入ってきたものだなぁー……まぁーなんだ。女は特に、自分のトイレ管理だけは気を付けとけよー」

「はい……突然入って来てごめんなさい。……では私、これで失礼しますね―――?」

 そう言い残す前に、目に写りこむ。



 テーブルに備えている――綺麗なを。



「――嬢ちゃん。に興味あるのか?」


 ハッ! っと。我に返った白子。

 いえいえ。

「ただ――『綺麗な盤面だな~』って、眺めていただけですよ」

 あははっと。笑ってごまかす……が。



 ……。



「嬢ちゃん、名前は?」

 空気が一転。

 その突然の表情に、白子は少しビックリする。

 ……キッとした眼つき。

 今更だがまだ自己紹介もしていない事にも気づいた。

「白子です。……一年一組の、葉田白子と言います」

 恐る恐る……白子が言い終わると、

 かったるそうに、黒衣の女性が立ち上がる――。

「白子――少し私の暇つぶしに付き合ってくれよー」

 ……ん?

 すると、ゆったりとそれは優雅に、ソフアーに寄りかかる。

「私は口笛束花くちぶえたばな。このチェス部の顧問をやっている者だー」

 軽く事項紹介を済ませ。足を組み、ゆったりソフアーにふんぞり返る。

 その言葉の意図に……気づいてしまう。

 束花の前には……先ほど、何気なく言った綺麗な盤面……チェス盤が置かれていることに。


 ……。


「そんなッ! 無理ですよッ!? 私、チェスやったことありませんよッ? 『チェスのルールは複雑で初心者が覚えるのは苦労する』――って、母から散々聞かされましたし……」

 思いつく限りの言い訳を、必死に説得する。

「チェスは難しいルールでもない。逆に、初心者なら一番ルールが覚えやすいゲームの中の一つといっても過言じゃない」

 でも……っと。言葉を続けようする――。

「と・い・れ……貸してなかったらどうなったんだろうなー」

 うっ……。

「し・か・も……内のトイレは他のトイレと違って高級便器だし、他人なら絶対貸さないねー」

 ……。

「あ・と・さ……いきなり『トイレ貸してください』とか、ちょっと女子としてはどうかなー」

 ……ご。

「そ・れ・に――」

「うわぁーーーごめんなさいゴメンナサイ! 私で良ければ、初心者ですが戦わせてくださいッ!!」

 罪悪感の重さに耐えらず、二人しかいない部室に白子の涙声が響き渡る……。


 □□□ □□□


「ルールは以上になるなー。わからないとろこがあれば、遠慮なく言ってくれて構わないぞ」

 真剣に、頷きながら。一つ一つ自分の白コマを確認する。

「あの、―――最初から教えて頂くのは無理ですか?」

「そうだなーぶっ飛ばすぞ?」

 素早く地面に頭を擦り、白子は土下座し右手には白旗を必死に振り謝っている。

「わかったよ冗談だ冗談。一からもう一度言うから、ちゃんと聞き逃さずにしなー」


「まっ、簡単に言えばこうだ」

 すると。束花は一つの駒をつまみ揚げる。

「自分の分身である、敵の王様キングを『』だ」

 

「後の細々したことは実戦で教える――さぁ、暇つぶしゲームを始めようか」


「駒の種類は9個。駒の数は16個。一度取られてしまった駒はそのゲーム中、二度と使用できないってところは覚えとけー」

「はっはい……」

「最初の手番は、白駒側……つまり白子からだ」

 さらに説明は続く。

「前線に並べられた8個の駒――そいつらは皆傭兵ポーン、直線に一歩しか進めない駒の部類では最低ランクだなー」

 慌てて「あっでも、最初に動かすポーンは皆、二歩まで進めるから覚えとけよー」と付け足して。

 ――さて。

「まず一つ。どれか好きな駒動かしてみなー」

「はっはい。で、では……このコマを、ここに」

 コトンっ。

「……」

 恐縮しながらも、白子はそのコマを前進させる。

 その行為は何の迷いもなく、平然と。

「……?」

 ――しかし、束花は首を傾げ、その駒を不思議そうに見つめていることに。

「な、何か間違えましたかねっ!? ごめんなさい、元の位置に戻すので――」

「待て」

 目を細め……束花は、その駒を見詰める。


 白子が動かしたコマは――騎士ナイト

 

騎士ナイトは『前後左右に二歩飛び越えられ、左右どちらか+一歩で着地する』。チェスの中では最も変則的な動きを特権とした駒だ」

 ――――それを。


「何故――

 あたかも――それを知っているかのように。

「……よく、わからないです。ただになったら、気付いたら手が動かしてて……」

 


 夢中?



 ……まぁいい。

「悪いねーいきなり手を止めさせて……じゃ次、私の手番だなー」

「は、はいっ。出来れば、お手柔らかにお願いします」

 緊張気味に、白子は笑って答えた。


 あの言葉に。妙な違和感を覚えたまま……。

 数十分後――局面は終盤。


 当然だが、駒の優勢は黒駒……。

「えっーと……この? コマをここに」

「……そいつは僧侶ビショップだー。名前もちゃんと覚えとけよー」

「ご、ごめんなさいっ!」

 一つ一つ名前を教えながらやるも、時間はさほどかからなかった。

「んじゃ……悪いがここに女王クイーン置いてっと――」

 ……別にそれは、適当に置いたわけではない。

 5手先を読んだうえ、勝利を確信しての選択とわかっていた。

 その選択は、間違いじゃない……。

 ――それが、普通の考え。

 コトンっ。






「 当たった 」






 感情さえ感じない一言……ただポツリと――。

 その言葉に、わけもわからずに。

 ――束花は、その言葉を言う……白子に目を向ける。






 ――『』から伝わる――圧迫感。

 『』は……チェス盤を、ただ見つめて。

 





「白子……お前ってさ――」


 パリンッ!

 ――室内に割れた音。見ると、窓ガラスの一枚が綺麗に割れていた。

 床に散らばる小さなガラス破片に、束花の足元にボールが当たり止まった……。

 はぁ……っと、束花は深い溜息を吐く。

 束花は「よくあるんだよ。こういうバカをする奴が」っと、茫然とする白子に言い残し。

 拾い上げたボールを持ち、綺麗に割れた痕跡が残る窓ガラス前で立ち止まり。

「野球部ーー! 今さっきな、ここにホームランボール打ち込んだ奴、誰か教えてくれないか――田中? 誰だよー田中ー……あぁお前が田中かー。そっかそっかーじゃあ歯を食いしばって思い知れこのっクズポンコツ野郎!!」

 野球選手をも目を疑う素晴らしいフォーム。

 束花は大きく振り被り、殺意に溢れた全力投球が四階の窓から投げ放たれた。

 ……気のせいか。グランド方面から人が倒れた音が聞こえる。

 さらに付け加えると……。

「田中ァ!? 田中ァァァァァ!!」「た、田中の口に、ボールが刺さってるゥッ!」

 慌てふためく野球部員らしき喉太い大きな悲鳴も飛び交っていた。

「まったく……このガラス一枚何十万もするのに……(ま。校長脅すだけだしいいか)」

「悪いな白子ー。さっ、続きでもしよう――」

 

 言葉が止まる……先ほど感じた、『』は消え。

 白子は俯くまま……体を震わせていた。

 気が付くと額、頬。汗が垂れ落ちて……。

 





 ……『また』だ。

 『また』……私はっ……勝ちそうだった。






「ごめんなさい……友達を待たしてるので、今日はこれで……」

 平謝りで、ソファーから立ち上がり。

「チェスを教えてくれたのに、本当にごめんなさい――」

 早々と、白子は慌てて出入り口から去っていった……。


「……面白い奴だったなー」

 束花はそんな独り言を言いながら。

 先程まで対局していた駒達の配列を戻そうと片付けようと。

 手を伸ばした……。

 ……でも、その手を束花は止めた。


 対局中には気にも留めなかった駒流れ。

 

 




 これは仮説に過ぎない。

『もし』『たら』『れば』……言ってはきりがない言葉の部類。

 あえて……使おう。






 もし――あと三手。

『その』読みを踏まえ、白子が動かしていたら……。

 ――『その』戦略を途中。

 束花が気づいてなければ――。


「自称『初心者』白子……本当に面白いなお前」

 対局した盤面を見つめ、束花は不敵な笑みを浮かべていた。

 ポツリっ。そんな独り言もつぶやいて……。 



 □□□ □□□



 一階の中央フロア。そこにはいくつもの丸テーブルが設置され、子供連れの奥様や老夫婦がイスに座りくつろいでいる。

 二階フロア付近に設置された巨大デジタル時計は、『14:35』と表示されている。


 スポーツ専門店が並ぶ一階フロア。


「ねぇ白子~♪ これ、オレンジ色のスコート。可愛いよねッ!? 白子だったら絶対に似合うよ~♪」

「私より、夕陽ちゃんのほうが断然似合うよ」

 不満の顔を浮かべている夕陽を気にしつつ、白子はスポーツ用品を次々手提げカゴに入れる。

「ごめんね白子、学校帰りにこんな雑用任されて……本来はこんなのクソザコの先輩共やクソメタボブタの顧問がやることを」

「あぁっー夕陽ちゃんあっち行こう!? あっちのスコート凄く可愛いよ!!」

「あっ本当ね! この緑スコートも中々……ね、ねぇ白子~? ちょっとだけコレっ、試着してみない~♪」

 ……あー危なかった。

 あれが素で言ってるのだから尚更……。

 

 店内から流れるBGM。流れるような――平和が、時間と共に過ぎて行く。


 瞬間――


 そんな日常を壊す、デパートでは決して耳にしない音。

 フロア全体に一発の銃弾音が鳴り響いた。


 少し近い、フロア中央の時計下。

 そこに、一人の中年の男。震える手に――銃を握りしめていた。

「ま…ま……ぱ…ぱ……」

「えっ」

 よく見ると……男の腕の中に、女の子の姿が……。

 強く。その子の首に右腕が食い込むところが見える……。

「君……落ち着け……。こんなことをして、何も意味はないっ…。ひとまず銃を置いて、私と話し合おうじゃない――」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」

 頭上に二発。

 従業員らしき人の説得も空しく……。

「全員フロア中央に来いッ! 俺を倒そうなんて甘えた考えは捨てろ」

 興奮状態の男……フロア全体に、怒鳴り声が響き渡った。

「ガキの脳天に、銃弾を打ち当てたくなきゃ……な」


 先ほどまでの……平和が消えた。


 □□□ □□□


 フロア中央……およそ50人近く。

 時計下に居座る犯人を囲む形で……人質となっていた。

「いいか~よく聞け? もぅ二億とかちゃちな金額は要求しねぇぞ?」

 電話越しに、犯人は荒い口調で話している。

「『1000億』円っ! 【18:00】までに用意出来なかったらガキを一人打つ。一分遅れる度に次の人質も打つ……わかったな?」

 ピっと、携帯を投げ捨て。

「いいかお前ら……このガキに限らず、お前らも人質だ。生きて家に帰りたいなら……」


「大人しく待っとけ……」




 ――――――――。




 ……数時間後……。

【17:55】

 

 緊迫する時間は、予想以上に白子達の体力を削る。

 張り詰めた空気。

 誰もが無言で。

 静かな空間が続く……。



「ママ……パパ……私、死にたくないよ……」



 枯れた声で、白子の耳に、その子の声が聞こえた

 泣き疲れ。一時間の緊張感も疲労が溜まったこともあり、女の子の心も体も限界が近づいていた……。

 その言葉が……静まったフロアに響く。

「帰って……ママのカレー食べたいよ…」

 ……。

「一緒に食べて……パパと……遊びたいよ」

 ……。


 ……『パパ』……か。


「だから……死にたくないよ……」

「おォい!! それ以上なぁ? 気持ち悪い泣き言続けると脳天に銃弾ぶち込むぞガキ!?」

 (自分でも、何てバカな行為だろうって思う)

 強く拳を握りしめ。

 (流れに任せて、警察に任せて……)

 でも――。

 (私だったら、とても耐えられないよ)

 50人近く、男を囲む様に座る中――俯いたまま、一人の女子高生が立ち上がった。

 手を震わせ、男はその少女に銃を向け。

 騒めきだす人の中で、その少女は人質を抱える男に目線を合わせるように見つめていた――右手に、白旗を揚げて。


「あのー……私と、その子を交換してください」


「……そのままだ。両手を上げて……コッチ来い」

 銃を向けたまま……犯人は促す。

「何バカやってるのよ……白子、早く座りなさいよッ!! ――白子ッ!?」

 スカートの裾を強く、夕陽は必死に引っ張る……。

 ……でも白子は、ゆっくりと歩き出す。

 親友に……顔を向けることなく。

 座り込む人質達の間を通って……。


 ……これでいい。

 これで……あの子が助かるなら――。

 





 ――――。






 瞬間。その目の前に起こったことに、誰もが目を疑った。

 客も、人質の女の子、夕陽も……。

 ……そして、左胸から伝わる妙な違和感にも。

 額からは汗。恐る恐る右胸に、尋常じゃない震える手を当てて……。

 

 ……右胸から、赤い液が流れ出る。

 声をも発せられず、その場で倒れこむ白子は……やがて、地面に広がっていく血色けっしょく

 絶望と痛みに苦しむ白子――。





 その最中――





 静まりかえった空間……。

「ひ、ひひぃ!……あぁ打っちまったよ打っちゃったよ俺ェェ!!」

 ただ、正気の沙汰じゃない。男の笑い声が響く。

 男は、人質だった女の子を白子が横たわる付近へ、軽々と放り投げた……。

 ……白子は、恐る恐る歩み寄る……胸の激痛に耐えながらも、体を引きずりながらも。

 ――身動きしない、横たわる女の子の元へ……。

 それは本当に、信じたくない表情だった。

 ……傍から見れば、それは眠っている様に見えた。

 見た目からして、年齢は7歳ぐらい……まだ小学生で、学校で通い色々なことを学ぶ年頃。

 友達と遊び、話を交わして、勉強もして。

 きっとこの子の未来は、明るい人生がまだまだ待っていた。

 ……でも、そんな日々をもう送ることは出来ない。

 地面に向かって、それは垂れる。

 ――頭部から流れる、出血を……。



「てッめぇぇぇぇぇぇッッ!! ぶっ殺される覚悟は出来てんだろうッなァッ!?」



 我を忘れたように、夕陽は犯人の胸ぐらを掴みかかった。

 無論。憎しみの声を挙げる人々。

 盾とされていた客。従業員、そして……実の娘を、目の前で殺された父と母も。

「残念な女子高生だよなぁ~! 自ら名乗り出やがって、二発しか残ってない弾だったのによ~! 出しゃばったことに……なんてっバカな女だわな~!!」

「……お前だけは、二回殺しても気が済まない野郎だってことはわかった」

 震える手は、犯人の首を締めあげて行く……。

 頬に涙を垂らし、

「せめて、苦しんで死ねッ……!!」

 それは、一段と強く。

 夕陽は握りしめる。

「あぁそうだぁ……。俺も少し狂れて言い忘れたわ……本当の、最後の言葉をヨォ~……」

 ヒヒヒっと、醜い笑みを浮かべ……。


 そして――男は叫んだ。

 耳を疑う――言葉を言い放って。


「死ぬときは一緒だよ皆~!! 腹に巻かれた爆弾達と、一緒によォ!!」


 

 ――。


 ゆっくり……瞼は少し、また少しと閉じ視界が狭まっていく…。

 爆弾に巻き込まれた人々。

 灰色の煙が漂う……。

 辺り一面に倒れ尽し……無残で、無慈悲な光景が目に写る。

 ……虚ろな目で……白子の目線に、見覚えのあるポニーテールが視界に入る。

 いつも明るく、白子の手を引っ張ってくれた大切な人。

 ……うつ伏したまま、体から流れ出る血の海に飲まれていく……。

 





 目に写る現実を逸らしたいのか、単に疲れて瞼を閉じて行くのか…。それはわからない……。





 

 倒れこむ人々――おおよそ57人。

 ――フロア全体に【18:00】を告げる鐘が――この異様な空間に、無慈悲にも鳴り続ける……。












         【 敗 北 確 定 】

 

  









 二階中央デジタル時計……時刻は【17:55】と表示されている。

 

 「ママ……パパ……私、死にたくないよ……」

 枯れた声で、白子の耳に、その子の声が聞こえた。


 白子は……今見たことを整理する。


「帰って……ママのカレー食べたいよ…」


『銃弾は残り二発』。


「一緒に食べて……パパと……遊びたいよ」

 

『犯人の腹周りには無数の爆弾が巻かれている』


「だから……死にたくないよ……」

「おォい!! それ以上なぁ? 気持ち悪い泣き言続けると脳天に銃弾ぶち込むぞガキ!?」

 つまり――恐らく犯人は18:00になると共に自爆しようとしている。

 (何も動かなきゃ……ここの人達は爆発に巻き込まれちゃう……)

 (かと言って、下手に動くと女の子も危ない……)

 考えて……この危機的状況。



『誰も死なせずに助ける』方法を……。

 


 ふとっ、周りを見渡すと……すぐ隣の、三人の男性に気づいた。

 よくよく見ると……三人は、ある物を握りしめていた……。

 ――スマートフォンだ。

 

 さらに……夕陽の近く隣。

 巨大な……それは大人二人分の男性。

 ……後ろに、二人の子供がいた。

 恐らく。犯人からの四角では見えないだろう……。

 

 『三台のスマートフォン』

 『二人の子供』



 …………。

「夕陽ちゃん」

「?」

 俯いて……犯人気づかれない小声で白子は聞いた……。

「私を……信じてくれる?」

「……」

 

 …………夕陽も、小声で答える。




「――この私が、白子を『信じなかった』事なんてあった?」

 



 □□□ □□□


 息を荒げる犯人。

 右手の腕時計で時刻を確認する……。

【17:58】。

 再び、醜い笑みを浮かべた……そぅ、『タイムリミットまで、あと2分と迫っている』ことに。


「いい知らせだぁガキぃ……お前の命は後2分だァ~……せめて俺の、お前の命を奪ってやったおじちゃんの顔を見ながら死にまちょうねぇ~」

「い、いやぁ……」


 ここにいる誰もが、諦めていた。





 その時だった!





『警察だァ! 大人しく手を挙げろォ!!』

 力強い声を耳にする。

 左方面から響く、距離は犯人から10歩ほど近くの近距離からだ。

「バカが……ッ! 来るなって言っただろォ!?」

 一発の銃声音。

 右胸に、犯人は発砲した。

 ……しかし、打たれた警官は一向に倒れない。



『何をしているッ? こっちだ手を挙げろッ!!』

「ひぃ! 近寄るンじゃねぇッ!!」

 今度は左方面。銃弾を一発が放たれた。



 しかし。

 ―――打たれたのは、帽子を深くかぶったマネキン。

「何だ、何故マネキンから声が―――なッ!?」

 遅かった……犯人は、『その物』に目を疑う。

 白いワイシャツの胸ポケット……それは薄い板状の物。

 それがスマートフォンと気づくのが遅かった。

(任せたよ―――夕陽ちゃんッ!!)

 思いが伝わったのか……それはわからない。

 犯人から50m離れた位置。

 真剣な面立ちで、夕陽は右手にラケットを握りサーブの構をしていた。

 


 一発目の銃弾が鳴り響いた音に溶け込む様に。

 瞬間、夕陽はすぐさまにラケット、ボールの2つを手に後ろへと下がっていた。

 集中した顔立ち……研ぎ澄ます

 そして! 瞳を開けた。

 スッ―――っと。

 それは軽やかに、夕陽が上げたボールが宙を舞う……。


「覚悟しとけゲス野郎……私のサーブは、決してフォルト外しはしないッ!!」


 ……一瞬だった。

 それは、突風を起こし――うち放たれる。

 銃声をも越す、強烈な音と共に。

 ……。


 終始、誰も声を発しない。

 

 仰向けで……白目を向いて、犯人は状態で気を失っていた。

 


 ――そぅ。ボールは犯人に直撃し、撃退した。



「ナイスサーブ夕陽ゆうひちゃんっ! いつも通り、弾丸サーブは平常だね」

「白子が見てる前で、私がフォルトしたことないだろ?」

 

 その笑顔に釣られ、白子の表情にも笑みが浮かぶ。

 

 強く、二人はハイタッチを交わした。


「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」」

 祝福の歓声に、白子と夕陽はテレながらも包まれていった。



 千葉県 木更津市。

 アクアラインを超えた先に位置する、小さくも大きくもない。普通の町。



 だがそこに……普通でもない人もいる。



 白旗の女子高生――葉田白子。

 そんな彼女は……ちょっと不思議な力をもっていた。

 ――それは。







 ――『5』――。

 





 その力は親友。赤橋夕陽以外……知る者はいない……。

 


 そう――今日までは。



 □□□ □□□

 

 現場付近から少しの距離……感動に浸っている人達からは、認識できない程の距離。

 二階エレベーター付近に、身を潜めていた『その女性』は姿を現した。

 見覚えのある黒衣を翻して……。

 細める視線に……ただ、『その子』を見ていた。

 胴上げされる友人を、角で微笑みを浮かべて見守っている少女を。


 一旦、その出来事をまとめる。


 犯人の死角を利用し、二人の少年は二手に分かれた。

【成人服店】

 一人。少年はワイシャツを着ていたマネキンの右ポケットに、『その子』に渡された一台の携帯を入れた。

 その少年は物音を建てずに、犯人に気づかれないように『その子』に指定された場所に置いた。

 後は気づかれず、その場の試着室の中へと隠れていった。


 そして、逆転劇は始まる。


 マネキンのポケットに入れられた、既に通話状態の、スピーカーモードを大音量で。

「警察だっ! 手を挙げろ!!」

 犯人も余裕はなかったはず。それが肉声の声と聴き違うほど動揺していたと考える。

 その証拠に、躊躇なくマネキンに銃弾を発砲した。


 ……その一発目の発砲が合図だったのだろう。


 もう一人の少年は犯人の真後ろ。指定された場所に駆け出しで【メンズ店】に展示されていたマネキンを配置。

 すぐさまに店内の服売り場に潜り込み、身を隠す。

 同じくその二つ目のマネキンから大音量で、スピーカーモードでセリフを言う。

 まんまと引っかかった犯人は、最後の弾とも知らず、慌てて銃弾を発砲した……。


 恐らく、二つのその声の発信源はたった一人の男性。

 一つ目のマネキンはそのまま声を発し、そのまますぐ切断。

 真っ先に次のマネキンに入れられた携帯へと電話をかけ、電話に出た少年はすぐさまポケットにいれたのだろう。

 それも全て『その子』が説明した通りに。

 後は確実の安全を取るため、『その子』だけが知る。親友の実力を止めの一撃を信じて託した。



 ……本当のヒーローである『その子』を見て。



 ポツリっ……その人は言う。

「『葉田 白子』……明日の部活は、久々に楽しくなるなー」

 ニヤリ……と、怪しげな笑みを残し。

 その女性は……気怠そうに立ち尽くす。


 ――吸っていない、タバコを咥えて。

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