エクストラステージ もう一つの旗




 どんよりとした雨雲が流れる中。

 ビルの隙間の向こう。

 路地裏を進むその先に……不良の集団がいた。


「おいおい本気かタケル? 考え直せ……警察でも捕まったら俺達だって」

「お前ら50人程度を釈放させるなんて余裕だ。今はあの害虫――白子をぶっ殺すこと以外考えンじゃねぇ」

 あの女一人のせいで、俺の恋愛(※予定)を断ち切られ……学校も辞めさせられたこの復讐。

 今日こそ学校に乗り込んで、あわよくばあの束花にも制裁をくらわしてやる。



「待ってろよ白子~……精々いい声で泣き叫んでくれよォ」



 これだけ集めた50人の手下がいるんだ……学年一つはぶっ潰せる程にな。




 さて――それじゃあそろそろ行こうか。


 この俺の……大和タケル様の復讐劇をッ!!




「いくぞォてめら――」




「アハっ♪ 『何処』に行くんだってお兄さん達?」










 調子を崩され、言葉が止まってしまう。

(誰だこんな調子狂う声の奴……俺の手下にはいねぇぞ?)

 辺りを見渡すも……その声の主は見当たらない。






「ねーー♪ 僕ここにいるんだけど、誰か相手してよ」

 



 いつのまに居たか分からない。



 輪の中心にそいつ……声の主はいた。


 

 学生に間違いない……間違いはないが……。

 中学二年生といったところか? 小柄の体で、不気味にもニコニコとした表情を見せる。

 

「もーー♪ もう一度聞くけどお兄さん達、これから何しに行くの? ねぇ教えてよ」

「オ゛イ、ガキぃ? ここが大和タケルさんの縄張りって知ってんのガァ!?」



 大男のアイツが、まず奴を掴みあげる。

 元組の用心棒を務めていた奴だ……できればここで、殺人は起こして欲しくないが……。

 


「胸ぐら掴むなってもーー♪ ねっ? 教えてよーー何処に行くの?」

「フンっ! 調子乗るなよガキィ? 少し俺様の右腕パンチを食らって頭冷やす事だなァ……………………うおらァァァァァァァァッ!」



 

























             【     】






























 その未来見た時、少年は溜息を吐いて。




「――もういいよ」




 ……バタっ。

 少年の胸ぐらを掴みあげていた男……彼は突如、地面に横たわってしまう。

 わずか一瞬の出来事――あの男の腹に一発叩いただけのはずだ。

 ……地面に……血が溶け込んでいくのが見えた。



「なーにも喋ってくれないなら、もうつまんねーよ。お前達見るからに弱そうだし、勝っても嬉しくねーー」

 




 とことんタケル達を煽り続け。そして――少年は言った。 






「せめてお前ら一斉にかかってこいよ――どうせ僕に勝てないんだから」

 

 

 



「……お前ら予定変更だ。白子をぶっ潰す前の肩慣らしだ」





 力強く――バットを地面に叩きつけ。





「まずお前から甚振いたぶってやるよクソガキがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」





 タケルの叫びを合図に、不良たちが襲い掛かる。

 鉄バット、ナイフ、木刀やらを振り回し約50人の不良達が襲い掛かろうとしていた。

 たった一人の少年。

 

 

 普通なら死を覚悟するこの盤面を前にして――。
































                 【     】






























 ――ニヤリと笑みを浮べて。






 ――真っ黒な瞳が、薄っすらと開く。






 

 少年の制服がなびく……腰の脇に、一つの物体が姿を現す。


 鉄の棒には黒い布が縫い合わされ、小型の旗だろうか。


 それを名称で言うなら、これでしか表せないだろう。

 


















           ――『黒旗』が、揺れていた。

 



















          「待っててね――白子お姉ちゃん♪」

  

 

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