小さな灯



 鏡よ鏡さん――三つだけ教えてください。

 










 暗く閉ざされた空間に、そこに彼女は居た。

 窓もなく、電球も二年前に壊れたままだ。

 唯一この部屋にある光と言えばスマートフォンから出る液晶画面だけ。

 その画面だけ唯一の光。

 こんな醜い自分を照らす……鬱陶うっとうしい光。

 








『わたしは、ココから歩け出せますか?』










 ひび割れた鏡の一角。

 写る靴は絵具で何重にも塗り重なり、変色した自分の血も混ざり、他人から見れば見るに堪えない物が映し出されている。


 鏡よ鏡さん。あと二つ教えてください。










『わたしは、前を向いて進めますか?』










 床に着くほどまで伸びきった髪の毛が広がる。

 不自然なほどジグザグに切られた毛先は治らないまま、不気味な形をしていた。





 鏡よ鏡さん。最後に一つ教えてください。





 手元のスマホに『チェックメイト』と表示された画面。その画面の光に照らされて、鏡に映る自分の顔を見つめた。

 顔はやつれ。

 死んだ目の瞳で覗き込む。


 彼女が、そこに居た。

















『わたしは――また笑えますか?』



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