第一部 第3話

 できるだけ女の子を見ないように、僕は下を向いたまま通り過ぎようとしました。でも、その時です。

「こんにちは。」

 勢いよく女の子に、声をかけられたのです。

「えっ・・・。」

 突然、女の子に声をかけられた僕はとまどいます。あんなに寂しそうに見えたのに、どこにこの子は元気を隠していたのでしょうか。

 「どうして」という思いが、僕を包んでいました。しかし、そんな思いは無視するとそのまま通り過ぎようとしましたが、女の子は僕の前に立ちふさがり、

「どうして、お返事してくれないの。どうして、そのまま行こうとするの。どうして、どうして・・・。」

と、考えられないほど強い口調で言っていました。

「だって・・・。僕、君なんか知らないよ。」

 あまりのことに僕はドギマギしていましたが、声を聞いた事でチョッピリ心に余裕が生まれたのか、なんとか女の子を見ることが出来ました。よく見ると、風に巻き上げられていた長い髪には白くて長いリボンをつけて、青い服を着た目の”くりくりっ”とした女の子でした。でも、僕には言ってることが理解できません。

「・・・。」

「私、あなたのお家に行くの。」

「はあ?」

 ビックリです、本当に慌てました。思わず、「おかしんじゃないの?」と言いかけますが、

「知らない子なんか連れて帰ったら、母さんがびっくりするよ。」

と、その子の言葉を遮りました。しかし、不思議です・・・。どこかに自分でも言い訳がましく言っているという思いがあったのです。なぜなのでしょう? 僕のそんな思いは関係ないようで、女の子は、

「かまわないわよ。転校生とか、何とか言えば良いんじゃないの。」

と、あきれるほど素知らぬ顔で言っていました。それから、どんなやりとりをしたのか・・・。僕には理解不能で頭蓋骨の中を整理できないままに、いつの間にか家に着いていたのです。

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