第4話

「おい、もう良いだろ。次行くぞ」

「はい」


彼女は切り替えが良いのか、素直に言うことを聞いてくれる。

俺はてっきり、「ええ〜」とか、「なんでですか〜」とか、言われると思っていたが………そんな性格してないっぽいもんなこいつは。


そんなで後は適当に流して終わりにする。

「そんじゃな」


踵を返していく。


「ちょっと待ってください」

「ん?なんだ」


俺はもう一度、葵の方に向く。

葵は俺を呼び止めた後、なぜかおし黙るが、意を決したように俺の方をまっすぐ見て、


「あなたは正義って何だとお考えですか?」

「……………は?」


一瞬、彼女が何を喋ったのか分からなかった。でも、言った言葉を理解したところで何一つ彼女の真意は分からなかった。

なので、取り敢えず答えてみる。


「そりゃあ正しい事すりゃ良いんじゃ無いのか。例えば、人に優しくするとか」


無難に答えたつもりだが、葵は笑っている。


「何が可笑しい」

「いえ、ごめんなさい。聞いていた方とギャップがあって…」


俺は葵にムッとした表情をするが、彼女はさらに面白げに笑うだけだ。


「しばくぞ! お前」


キレた。マジ無理、このテンションにどう対応しろと?

やってられない、だから最近の若者はダメなんだぞ。


「ふふふ、本当に愉快な人だわ、私を退屈させない…。うん! 女王陛下の通りだわ」


ん、女王陛下だと。何でこいつがそれを…?いや、その前に何で女王陛下がおれを?

何て思慮を廻らせてると、途端に指をさされる。


「羽倉坂蓮さん、 あなたを私の護衛に任命します」


は? 何言ってるのこの人?本当に何考えてるか分からない。


「ふふん、意味不明って顔してるわね。じゃあ、王家直属の暗部の一員だったあなたにと言えば良いのかしら」


葵はドヤ顔で言い放つ。でも、俺は未だ、は?という状況から抜け出せて無い。


「何言ってんの? 勘違いじゃ無い?」

「間違い無いわ、これを見なさい!」


ばっと取り出した紙には俺の名前があった。


「ちゃんと女王の印まで押して貰ったわ。どう、これで逆らえないでしょう?」


再びドヤ顔。

俺は踵を返す。後ろ手を出してここを立ち去る。


「待ちなさい! これを断る気? って言うか、断れないわよそれ」

「知るかーんなもん」


と言って、今度こそマジで立ち去った。


そもそも、俺は………いや、考えても無駄だな。


「あー今日は最悪な日々だったなー」


と独り言を大きな声で言って帰る。

無性に叫びたい気分だった。


今更になってだが、少し心配にはなる。


「いやいや、そこが俺のいけないところだったじゃん」


と言いながら、バシバシと顔を叩いて学園を後にしようと校門に足をかけるが、


「……あれ?」


まるで、校門に透明の壁でもあるかの様に足が引っかかって上に伸びていた。


俺は後ろを振り返る。

夕日の映える景色が闇を孕んでいる様に見えてならなかった。


「っていうか、もうなってるけどな……」


「お、もうお気づき?」


何もない、グラウンドに続く空間が揺らぎ、1人の男が現れた。





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