第5話

「やっぱりあんたかよー、ゴードン」


目の前に立っているがたいが強そうな男。見る限り、あいつを敵に回したらタダではすまなさそうな、そんな威厳さえある。


「蓮のいない所に私はいないわ」


うわっ、ウインクしてきたよー。俺こいつだけはダメなんだよー。


「まぁ、いい」


いきなり真面目モード⁉︎


ゴードンはこうして、オネエモードと真面目モードがある。

まぁ、真面目モードの方が俺的にはとても助かる。


「この状況はわかるよね?」

「ああ、結界が張られてるな」

「そういうこと」


ゴードンは校門から逆方向を見る。視線を追ってみるとヤツは屋上を見てる様だ。


「……そこが発生源か?」

「いいえ」


俺はゴードンに尋ねるが、ゴードンは首を振る。

じゃあ一体何で見てたんだと聞こうとしたが、そこに女性の悲鳴が聞こえた。


「はぁ……」

「ん? お前が溜息とは………感心だな」


普段、こいつが溜息をする場面など見たことが無い。

故に驚きと敬意を評してこう言ったのだ。


「そいつは結構。だけど、今はそれどころでは無いわ」

「ああ、頑張れ〜 俺はお前が死んだ時の為に見守っとくわ〜」

「ん? 何言ってんの? そんな事したら、女王陛下からギロチンの刑に処されるわよ」

「何怖いこと言ってんだよ。 しかも、俺、女王陛下と面識無いから」

「あれ? 葵が見せなかった? 紙?」


ん、なぜそこであの転校生の名前が?

と不思議に思ったが、聞かれたので答えておく。


「ああ、見せられたぞ。 でもあれ発動許可証だったけどな。 だから、関係無いだろ」


と思った事を口にしただけなのだが…。

ゴードンは何やら真剣に悩んでいる。ゴニョゴニョと……。


長くなりそうなので。


ゴードンは俺の元上司だ。

まぁ、ちょっと金が無くて少しいかがわしい団体に所属してた訳だ。

でも、一悶着あって俺は組織から脱退して今に至る。

だから、ゴードンがここにいても俺とは一切無関係の人間だと思うのだが…。

それはあちらに取っても言えることだと思う。


っと、ゴードンの考えが終わった様なので話しかける。


「どうだ? 考えはまとまったか?」

「ええ、どうやら手違いでいろいろやらかしていたわ」

「へぇー、どんな?」

「そうね〜、沢山あるけど一番ヤバイのはあなたのプロフィールが正義の機関に渡ってしまったことね〜」

「いや、どこも悪い知らせとは思えないが…?」


俺は首をかしげる。

だが、ゴードンは首を横に往復して振る。


「貴方にとってはマイナスだと思うわ」

「ん、そうなのか?」

「ええ、だからこそ、私が来たのよ」

「……」

「何その。えーお前がー、無いわー、みたいな目は⁉︎」

「ご名答」


ゴードンはその名前とは全く違う話し方でぷりぷり怒ってる。

おっさんがそんな喋り方してなんの得があんだよ……。

思っただけなのにゴードンにキッと睨みつけられる。

いつ、見た目どうりの口調になるか分からないのが悩みであるが…。


「いいわ、許してあげる」

「何もかもお見通しなんですね………あっ、いや、なんでもありません」

「…やっぱり前言撤回よ。私に力を貸してくれたら許すわ」

「……断ったら」

「私にもわからないわ。でも、よくない事になるのは明白。大か小かが分からないところ」

「…これっきりにしてくれよ。ただえさえやっと見つけた学園オアシスなんだからな」

「…努力するわ」


あのセリフは気休めだ。

ゴードンにそんな力は持ってない事は知っている。

だか、あえて言っておきたかった。


…もう、あそこには行きたくない…。


そう、強く思った。


俺たちは走って、屋上へ向かう。

そして、扉を勢いよく開け放つ。


「………これは!」


俺とゴードンはドアの前でしばらく立ち尽くす。

首を上に向けて。


「ジャイアントバードよ」

「ああ、そうらしいな」


とてつもなく、小鳥を大きく、凶暴にしたものが屋上と平行の高さで維持している。


「なぁ、なんでこんなのに俺を呼んだんだ?」

「まぁ、随分と余裕ぶってるわね」

「ちげぇよ。これくらいならお前一人でもいけるって言ってるんだ」

「……あるのよ。これが」

「ふーん。で、それは言えないと?」

「殺れば分かるわ」

「……そうか」


俺は巨大鳥ジャイアントバードからは目を離さず、ゴードンと会話する。


「じゃあ、やるわよ」

「ああ」


ゴードンは勢いよく巨大鳥に向かって走り出した。















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