第2話
今日も退屈な授業を終えて帰る支度をする。
屋上で不意に話しかけられた彼女をチラ見する。
気になるわけではないが、容姿も整っていてはたから見てとてもいい。というのが俺の第一印象。
だがその容姿の裏に何かある雰囲気を俺は感じる。
…まぁどうでもいいか。
俺はカバンを持って教室から出て行こうとする。…が……。
ガラガラガラガラ!
ドアが勢いよく開けられて昼の件のヤツが姿を現す。俺はとっさに目をそらすが遅かった。
「やあ!やっと会えたよ。あのあの別れてから周りの教室を片っ端に回って……、ついに見つけた!」
周りから不穏なヒソヒソが展開されているのに気付かずにヤツは雄弁に語る。
(やめてー!俺をそんな目で見ないでー!)
「放課後になってしまって帰ってないかと正直焦ったが、会えてよかったよ」
(はーい、僕はあなたに会えて今最悪の気分でーす。殴っても良いですか?)
俺の心の声には微塵にも反応せず、ベラベラと話を続けている。もう内容は耳に入っていない。それよりも周りの声の方が俺にはよっぽど気になるんだが…。
「そうだ。まだお前の名前を聞いてなかった。よければお名前を伺っても良いですか?」
「……
だがその名前を聞いた途端ハルの表情が一気に曇る。
「そ……そうか…羽倉坂、覚えたぞ」
ハルは懸命に話を繋ごうとする。
(こいつもか…)
俺は心底うんざりした。
「もういい。無理すんな。じゃあな」
と俺は教室を後にする。
どいつもこいつもそんな奴らばかりだ。
まだこういう名前を使うものは多くない。この和名を名乗るだけで身分が分かってしまうからだ。
かつて、ここを統治していた。ナーシュバルツは身分により階層構造を成しており、大きく2つの身分に分けられていた。
今は現王が制度を改めたために文面上の身分の差はないとされているが…当然上から見下すようにしてきたヤツは嬉しく思わないだろう。
そのため、裏というか人々の間で根強く差別意識は残っている。
だから昔の身分は『それ』でもバレないように改名しているのが通例だった。
それはそれとして尊重したい。がそれこそ差別が撤廃された意味が無いと思う。
そういう意味でもこの名前を捨てられなかった。もうひとつの意味でも………
俺はそいつにぎこちない…?お礼をもらってそそくさと後にした。
なんか箱だったけど…。開けてみたらただの手紙だった。
(なんだよ、ただの手紙かよ。あんな恥ずい演出しておいて………まぁ、そんなもんだよなさっきの今じゃあ…)
寮に着き、部屋で読んでみる。
「ふぅー」
特になんの変哲もないお礼の文章だった。
チョー長かったが。なぜたったパンを恵んでやっただけでどうしてここまで書けるのかが逆に分からなかった。
まぁ、そんなことどうでもいい。
今日も無難に生きている。それだけで十分だ。
と何気無い日常が続くと思っていた。この時までは………。
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