第46話

 朝日が登り、無事に朝を迎えることができた。幸運にも、このルートを選択したことは吉と出たようだ。

 二人もじきに起きるところだろう。

 もそもそと動いていたのを見ながらも少しこれから行うことと今の状況が乖離かいりしすぎて苦笑してしまった。




 峠は越え、あとはひたすら下るだけとなった。いよいよ、コンウィルである。ここからは、俺が選択しなかったルートと合流することとなるため敵襲がいつどこで待ち構えているかも分からない。俺と葵の緊張感が増す。


「る、るるるるーん」


 そんな中でもフィーだけは呑気であった。


「フィー、もう少し緊張感を持ってくれよ。もうコンウィルは近いんだからさ…」

「んー、でもそんなに張り詰めても良くないと思うんです。それにふたりともそんなに殺気を放ってると嫌でもなんかあると思っちゃいます」

「「ゔ……」」


 フィーの反論にぐうの音もでない。確かに身構えすぎではいつもの力を発揮できない。

 俺は肩甲骨を寄せてグーっと胸を張った。





 コンウィル執務室。

 ハルバートはアルバートからの報告を受けていた。


「そうか…」

「もうまもなくかと」

「アルバート…お前はどう思う?」

「どうとは…今回の一件でしょうか? それとも…でしょうか?」


 立ち上がり、窓を見た。なかなか山に囲まれた土地では貧富の差が他の土地よりも大きい。気軽に貿易してくれる商人が来れないことが要因だ。

 窓に視線を向けたまま執事に問う。


「なかなかに掴めない感じにも見受けられました」

「ほう、 それは能力的に厄介だと?」


 意外だと視線を執事に向けた。アルバートはこうべを垂れたまま動じない。


「それもあります。まだまだ能力を隠しているようにも思います。それと性格的には目立ちたくないと思っているようです」

「ふん、警戒してよいのかそうではないのか分からん!」

「申し訳ございません……」


 ハルバートは机を叩いた。決してアルバートを責める言葉として意図した訳ではなかったが、あえてそのことを否定もしなかった。


「まずは、奇襲をかけろ。揺さぶりをかけ、疲れさせる」

「かしこまりました」


 再び深く礼をして、執事は部屋を出て行った。

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正義をつらぬく二重仮面《セカンドサイド》 小椋鉄平 @ogura-teppei

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