第41話
昼休憩が終わり、授業が始まる。
暗部はその組織の存在こそ知られているものの所属している者を知っている人は少ない。それは、所属している暗部だとしてもそうで、ジュークが俺にとってはそれだ。葵は逆に表立って入ってきたのである程度の知名度がある。といっても口伝えなので知っているのは首都の人間くらいである。
そして、俺も女王の一件で顔が割れることになったようだ。
(めんどいことになったな……)
蓮は窓の外を見つめた。
グラウンドを走る生徒の姿が見える。サッカーをしているようだ。
これは、暗殺予告を突きつけられたようなものだ。まさか自分がやられる側に回るなんて前は微塵も考えたことはなかった。
敵がどんなやつかも分からない中、気を引き締めないといけないということだけは頭によぎっていた。
放課後。
授業が終わった。サユリ先生のHRもつつがなく終わり、平和な業後となった。
「蓮。ちょっと来い」
「はい」
この一言で俺の平和は終わったと思った。
何かは分からないが、サユリ先生の逆鱗に触れてしまったようだ。
肩を落とし、先生について行く。
向かった先は……職員室でもなく、校長室だった。
「失礼しまーす」
学園の中で唯一、この扉だけは雰囲気のある黒の扉になっており、いかにも威厳のある人がいるなということが想像される扉になっていた。
入ると、校長と見知らぬスーツ……ではなく、執事の格好をした初老がいた。メガネをかけ、校長と談笑をしていた模様。
「ノスカー校長。羽倉坂をお連れしました」
「ご苦労様です」
サユリ先生は一礼し、口を開くと校長も立ち上がり礼をした。
「羽倉坂蓮くん。私、コンウィルでマイザー様の執事をしております、アルバートと申します。今、我々ナーシュバルツの間ではもはや君は有名人だ。君がどういう人物なのか見極めてこいと命を受けまして、お邪魔させていただきました」
「はぁ……」
初老の執事はうやうやしくこうべを垂れる。
俺の頭の中には警戒を解くべきか判断しかねている。ただえさえ、暗殺予告をされた当日に本人が直々に、しかも真っ正面からくるなんて思ってもみなかったからだ。
「ということで、君のことを知りたいので少しお話をさせていただきたいのですが、お時間よろしいでしょうか?」
「あ、ああ。大丈……夫……です」
そう言うと、校長室のソファーに座らされた。
「では、ごゆっくり」
「失礼します」
校長とサユリ先生はお邪魔だということで、自ら部屋を出ていった。
ということは、この見ず知らずの執事と二人きりとなる。味方も周りにはおらず、また、遮蔽物も多いこの部屋は逃げの姿勢を取りづらい。
右手を後ろに回し剣を触る。とにかく不安でしかなかった。
「では単刀直入に伺います。女王との縁談があることは、こちらにもリークとして耳にしております。羽倉坂さん。あなたとしてはどうでしょう?いかがされるおつもりなのでしょうか?」
「俺は断ろうと思ってる。俺には責任をなるべく負いたくはない」
「なるほど。…ただ、そうなるとお話は女王からという事、ですよね?断れるのでしょうか?」
「それは……」
まだ、女王とはあまり接点もなくあれから音沙汰もないが、無理やり話を進めようとしてくる人でもないと思った。ただ、俺が思っているだけで根拠はない。だからこそ、言葉に詰まった。
「どうやらあながち縁談にゼロはなさそうですね」
アルバート立ち上がった。
「ゔ……」
その一瞬だけで、意識を刈り取られた。
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