第36話
「ん。ここは……」
恐る恐る目を覚ます。
一面白い景色が広がっている。森といった植物もなくただただ白い景色だ。
あの瞬間に意識が消えたのは覚えている。
「どうやらここは天国なのか?」
立ち上がり、背を伸ばして遠くを見る。しかし、白い景色が途切れることはなく続いていた。
『それはないよ』
まるで空から降ってきたと思えるような声。
思わず振り向く。が、しかしそこには誰もいない。
声質は小学生くらいの声変わりしていない男の子の声だ。
「じゃあどこなんだよ?」
思わず聞き返す。どこから発せられているのか分からないが上を向く。
俺にとっては死んで天国に行ってしまった方がありがたい気がしていた。
『ここは……そうだね。時を停止させた瞬間の間だと思ってくれればいいかな。厳密に言えば君の頭をフル回転させることによって、ほぼあの時から0秒の世界としてここがあるから停止してる訳じゃないけど。そういう意味ではどんどん天国に近づいているかもね』
幼い声にしては説明が大人び過ぎている。
そんなことを思ったが、気にしてる場合ではない。
「じゃあ今どこで止まってるんだ?」
『それはもちろん君が意識を失った瞬間からさ。意識があればこの空間に君を呼べないからね』
「だが呼んだ…ということは何か打開策があるということだな」
『そうだね。もちろんそのために呼んだよ。ただ、僕は君に言うのはただのアドバイスだ。成功するかどうかは保証しかねるね』
「は?呼び出しといてよくそんなこと言えるよな」
声だけの存在に怒りが湧いた。
それではあまりにも身勝手のように思えてしまった。アドバイスはするけど、できるかどうかは分からないなんてそれが失敗したときのリスクもあるというわけなのに無責任だ。
『まぁまぁ、そんな怒んないでよ〜。でも君の状況は限りなく死に近い。どうせ死ぬのなら僕のアドバイスに乗っておいた方が後悔がなくていいんじゃないかな?』
「それは俺だって分かってる。……じゃあ乗ってやるよ。その賭けに」
『そうこなくっちゃ。実は怒りに対しての解釈を変える…それだけなんだ』
「ん?どういうことだ」
『怒りと怒ったは同義だとは思わないかい?』
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