第34話
どうやら現れるのは夕暮れ時が多いそう。
俺もここにずっと張り込むわけにはいかないので、夕刻にここに来るようにしていざきたら迎撃ということにした。
実際、条件として俺一人でなので結果さえ出せれば文句ないだろう。
そしてその時は思っていたよりもはやくやってきた。
それは次の日のこと……。
「こ、こいつだぁ……!」
畑仕事をしていた彼が指を指し示す。オレンジ色の太陽を隠すように黒い鳥が飛んでいるのがわかる。
俺たちに向かって咆哮をあげる。
それだけで彼らは足がすくみ近くの家に避難している。俺は畑に立ち剣を抜いた。
(明らかに話し合って何とかなるやつではないな……)
彼らにも事情を聞こうとしたが、とても仕方なくやるという襲い方ではなく縄張りにしているという人間からしてみればとても一方的で理不尽な理由だった。
「……ふっ!」
まずは素早く足を切る。が、切り落とすことはできず、わずかに切り傷を入れる程度にとどまった。
素早く体位を俺と正対するように移動されくちばし攻撃をかまされた。
転がるようにしてそれを避け、距離をとった。
「蓮!」
フィーベルと葵の姿が見えた。フィーは心配そうな顔をしているが、葵は何か見定めるような真剣な目を向けていた。
そんなことを気にしている余裕はなかった。
巨獣鳥の攻撃を読んで再び足を狙った。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
今度は切り落とすことに成功した。
少し力の入れ方を変えた。
痛みによるものかデカい翼をむやみに羽ばたかせる。それによって立つのがやっとな風が発生し、移動できない。
(頭がいいな……こいつ)
俺の能力は瞬間移動ではない。ただ高速で移動しているだけなのだ。もともとこんな風速で動けなければそんな能力は使えない。
その間にもクチバシの攻撃がくる。
「ぐっ……」
なんとか避けるものの風によりジリジリと巨獣鳥との距離をとらされる。
「これじゃ、ジリ貧だそ!俺……」
巨獣鳥はここぞとばかりに作物を荒らす。足を切ったのが幸いしたのかその動きも鈍い。
俺は瞬時に突進しもう片方の脚を狙った。
(⁉︎ 俺の能力を見切ってるのか⁉︎)
まるでくることが予想できていたようだった。瞬時に獲物を俺に定めタイミングを図りクチバシで刺そうとしてきた。
これを間一髪で避け、地面に転がる形になった。
「蓮!」
「ダメよ行っちゃあ」
走り出そうとしたフィーベルを葵が静止させた。
「でも……見てられないよ!」
「それでも……ダメなのよ。こんなものじゃあ」
フィーベルの目を見てそう言い放った。
助けたい……それは私でもそう思う……でも唇を噛んでぐっと堪えるしかない。今回ばかりは……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます