第31話
「ということで、視察の名目でこのクオーク学園に一週間留学されることとなりこのクラスで一緒に勉強の様子を見てもらうことになった。まぁ、王女様と畏まらずに皆接するように。アストラルト女王。自己紹介していただけますか?」
そうサユリ先生がメアリーに自己紹介を促す。流石の先生でも、女王には敬語だった。まぁ、この国のトップだもの当然か。
「はい。ナーシュバルツ第25代女王に就任しましたメアリー・アストラルトです。皆さんがどのように勉学に励んでおられるのか興味を持ってこの学園に一週間留学させていただきます。どうぞよろしくお願いします」
メアリーがお辞儀すると同時に拍手が沸き上がる。
「じゃあ、また机がないから…」
「はい!」
「なんだ鈴原?」
「私が机を持ってきます」
ビシッと手を高く挙げた葵に目線が集まる。
「まってくれ、ここは俺が」
「いいえ、鈴原さんばかりやらせるのは良くないわ。ここは私が」
「君たち平民に女王様をエスコートが出来るわけがない。ここは僕が引き受けよう」
「んだとてめぇ貴族だからって調子になるんじゃねぇぞ!」
皆、女王のお世話を勝手でる。もちろん、皆それぞれの下心がある事は明確だった。
我先にと女王に媚を売るために激しい争いとなる。もしこれが魔法使い同士であればこんな口喧嘩程度では済まない。そこは見ていて安心材料だった。
対して、特に口出ししないのが葵。仲裁しょうにもおろおろしてしまっているのがフィー。俺も、これに関しては無視を決め込む。もとからそういうキャラでやってたからな。
「ねぇ、あなた。私の机を持ってきてはくださらない?」
メアリーは争いの裏で俺の元へと歩いてそう口を開いた。
その言葉に教室が静まり返る。
「…………はい。分かりました」
俺は素直に席を立った。
教室を出るまでは俺に向かっていろいろな気持ちの視線が注がれることとなったが、知らないフリをして出ていく。
「ふふっ、ありがとう」
対照的にまるで彼らの思惑など知らぬ存ぜぬかのような笑みを見せるメアリー。しかし、賢い彼女のことだ。知っていてわざとに決まっている。
「お前、俺との関係をバラしたいのか?」
「ふふっ、そうね。まだ直接的には無理だけれど、間接的にそう思わせたいわね」
「あのなぁ。さっきので分かったろ俺がぼっちだってことが……」
廊下を歩きながらそう忠告気味の質問をする。正直、視察を兼ねてのことで俺のことが嫌になれば婚約が解消されるかもと期待していた。少なくともメアリーではなく、あのメイドなどの反対意見が強くなればいくら絶対権力者といえども引かざる終えないだろう。
「ふふっ、ええ書面でもそのように書かれていたのだけれどあそこまでとはね…。皆あなたの実力を知らないのだから、あなたの性格だけを見て判断すると、そうなってしまうのも分かるわ」
そうだろと思って横目にメアリーを盗み見るがその顔は言葉とは対照的に笑顔だった。
「おい、俺はここがオアシスなんだからあまり波風立てないでくれよ。頼むから…」
「それはどうでしょう。ここにいれなくなればおのずと私のところへ来やすくなると考えれば……うふふふ」
俺の言葉を逆手に取られた。
メアリーの笑みに不安を覚えながら、机を取り教室へと戻った。
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