女王命令
第29話
驚きを通り越して、思考が一瞬フリーズしてしまう。耳では確かに聞こえた単語のはずなのに瞬時に頭がそれを理解するのを拒否してしまう。そのために聞き返してしまう。
「浮かない顔…私では不満ですか? 身分は、申し分ないと思うのですが……」
なぜか一回転してみせる女王陛下。
身分だけでない……そのドレスから、女性としての振る舞い、まるで光沢のあるような肌に手の先まで見つめてしまう。
その一所作ごとにその滑るようななめらかさを感じる。
欠点などほとんどない。唯一、俺としてあるとすれば幼げに見えてしまう顔だ。女王としての覇気が見た目では感じられない。
「もちろんそのようなことはありません! ただ、私では分不相応に過ぎます。必ずといっていいほど国民からの反感を買い、せっかく統率力のついた国が崩壊してしまいます。そのようなことになれば、各国のパワーバランスが崩れ、他の国に殲滅されかねません」
これはほぼほぼ本音だ。この国の差別は当然いいものではないが、今までそういうバランスでやってきた。今でこそそのバランスが揺らぎつつあるものの力の差というものでコントロールされている。
それで俺が女王の婚約なんて話を持ち出すものなら純血がどうとか、汚い血がなど問題になるのは明白である。
「問題が起こるというのは無論私だって分かっています。もちろんです。しかしながら、この状況をよしとも思いません。少しばかりの
怒気ともとれる女王の叫びを聞いた気がした。彼女の本気を感じて口を出せなかった。
「それに貴方はとても強い。ただある条件を満たせばでしたっけ? 」
「っ! それをどこで……」
蓮の視線が鋭いものに変わる。それに対して女王はほくそ笑むように俺を見ている。
「もちろん、暗部のことも知っているのです。情報として入ってきます。逆に私がそれを悪い貴族の連中にリークさせないでおいたのですよ。感謝して欲しいくらいです」
俺を指差して言う。そんなことを言われたらぐうの音も出ない。
「女王陛下メアリー・アストラルトとして命じます。羽倉坂蓮。私の婿になりなさい!」
それは全く思いもしない求婚だった。こんなことは地球上で初ではないだろうか……。
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