第12話
「まだ話は終わっていないわよ」
「ででこねえものは仕方ないだろ。こっちは狙われている身なんだ、こっちから何かしなくても必ず何かしらの行動を起こすはずだ」
「そんな確実性がないじゃない。断言できるわけじゃないことでしょう?」
吸血鬼は俺を欲していたが、俺の血を見て汚物を見るような目をしていた。
確かに人の身体をして、緑色の血液が出るんだからキモと思ってしまうのはごくごく自然だと思う。
そういうことを考えれば、もう一度襲ってくることは考え難い。
けれども、吸血鬼の居場所も分からないのであれば、うだうだ捜索しているだけで無駄に終わってしまう気がした。
それよりも逆上してもう一度、襲ってきてくれた方が俺としては良いように感じている。
その後もうじうじ葵が説教まがいの事をのたまっていたが、全てスルーした。
そして放課後、さまざまな声が飛び交い、学園が騒がしくなる頃。
葵に引っ張られ、校内の見回りをさせられた。
こういうことが徒労だと思うのだが、それを葵に告げると逆上して別の騒動になりそうなのでやめておいた。
それこそ、これ以上厄介ごとはごめんだ。
その時、曲がり角から現れた男子生徒とぶつかった。
「おっと、ごめん」
男子生徒は軽く謝るが、俺は怒気を放った視線を相手に向けてやった。
「首尾はどう?」
「お前、誰と入れ替わってるんだよ」
「いやはや、バレてるとは」
すれ違いざまに俺だけに聞こえるように話しかけてきた男。オネェなのにゴードンはあろうことに爽やか系男子に変装していた。
毎回、声も変わるからこいつの変装能力の高さは組織内でも一目置かれている。
それも全て、魔法によるものであるけれども魔法だと気づきにくくなっているのも彼のバレないことに繋がっていると思う。
俺は胸ぐらを掴むようにして、会話を念話に変える。
『なんでまだ残ってる』
『あの吸血鬼は私の方にも討伐依頼が来てる。村を壊滅したとかで、女王の命令でネ』
『本来の目的はそれってことか』
『そう。あのバードは予定外。おそらく、あれも吸血鬼が仕掛けたものだとは思うけどネ』
「ご、ごめんなさいぃぃ!?!? 命だけはや、やめてくださいぃぃぃ!!」
(こいつ、何だかんだ楽しんでやってるだろ)
爽やか系男子の仮面が剥がれたところで、パッと手を離してやり、その場を去った。
『お前がここにいるってことは、またはあり得るってことだな』
『ええ、そうネ。 でも、葵にはくれぐれも言っちゃダメよ』
『ま、そうだよな……』
爽やか系男子が俺のことを恐怖の目で見ていた。
それで、あんな普通の会話してるのだ。
俺は笑いをこらえるのに精一杯だった。
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