220/過去編――一九五八年・一~ここではない場所へ

 過去編――一九五八年・一/


 男――宮澤みやざわ新和しんわは風に揺られている。経済復興を進める日本国の風景を眺めながら、一人、その流れに乗るのを拒否するような佇まいで。


(このままでは、やがてまた行き詰る。現在のこの国の再生は、他の場所の人間から一時的に富を収奪することで成り立っている。この地球に全員分の富が無い以上、やがてまた限られたリソースを奪い合わねばならなくなる。再び、戦争になる)


 他の人間とは異なる、高度な知性と。次の時代の鍵となるであろう不思議な力と。それらを持って生まれてきた自分という存在の意味をずっと問い続けてきた。答えは遠いどこかなどではなく、今、ここにあった。もう、自分の中にあった。偽れないものとして、既に胸の内に存在しているのだ。



――この地球の、全人類の救済。



 それが自分の使命。生まれた、意味。


(怖い)


 逃げ出したいと思うほどに。


 それでも、ソレに向かって進みださねばならないと。ソレこそが自分が生まれてきた意味なのだともう知っていた。


 親和は、天に向かって手を伸ばした。この向こう側に、その答えはある。


 沢山の人々がその日常。この街。この国。この地球……という枠組みの中で試行錯誤するのに精一杯である時期に、既にその外側について気付いた人間の責務として、そろそろ自分は旅立たなくてはならない。


 宇宙開発については、この自国の再生に手いっぱいの日本国よりも、彼の国の方がはるかに進んでいるのだから。


(行こう。ソビエト連邦に)



  /過去編――一九五八年・一

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