189/自由VS自由

 アスミが空を見上げると、立体魔法陣からその身を躍動させ、蒼い衣服を纏い、サイドでとめた金色の髪をひるがえしながら、少女――もとい志麻の憧れのお姉さんが現れ、舞い降りてきた。


「志麻ちゃん。外交か、戦争か、確かめさせてもらうよ」


 アスミと大王の中間に降り立ったエッフェル搭は、まず志麻に声をかけた。七夕の日に行動を共にしたからだろうか。エッフェル搭は、特に志麻に関心を注いでいるフシがある。


(外交?)


 エッフェル搭の言葉の一部に、アスミは引っ掛かりを覚える。アスミにとっての恩人でもあり、感謝もしているが、自分よりも数段思考が深淵な存在には、慎重に相対しておくのもアスミのあり方だった。


 向き合った大王とエッフェル塔を見やると、同じ戦闘用の礼装を纏っていても、大王の個としての軍服とエッフェル塔の軍服ワンピースは印象が異なる。大王の軍服は、あくまで単体で鍛え抜かれ、至り切った真実大王ヴァルケニオンという存在の一部である。純化した強い個人。そういう印象が、まず第一にある。一方で、エッフェル搭の蒼い礼装には、積み重なってきた歴史が感じられる。ブリテンとの戦争の夜も。ギロチンが落ちた夜も。フランスという国の全てと連綿と繋がった上で、その一部に自身が位置している。大王とエッフェル搭は現行の地球上でこの上なく「自由」な存在であったが、二人の体現する「自由」は少し性質が違っていた。


「概念武装・偶像化されたエペ・デ・ラ少女の剣・ピュセル


 エッフェル塔は蒼い閃光と共に、愛護あいご大橋での戦いで大巨神を圧倒した白銀の洋剣を出現させると、一瞬で間合いを詰めて、大王の喉元に向かって突きを放った。


 再び、瞬きの間の攻防が繰り広げられる。


 大王は上体をスウェーしてエッフェル搭の突きを回避する。体を傾かせたまま、鋼の剣に対して大王が指先だけ触れた時である。陸奥を葬り去った時と同じように、洋剣の動きが制止した。


「聖女・ジャンヌ・ダルクの愛剣」


 大王が地の底に響くような声を発した時、エッフェル搭は手にした剣を放して、斜め前方にその身を投げ出し、大王が展開した「何か」から逃れた。


「その存在よりも、我は強い!」


 大王が高らかに叫び、洋剣に拳を撃ち込むと、刀身から柄に至るまで、エッフェル搭が召喚した剣は連続して炸裂弾を受けたように、粉々に砕け散った。


「『地球ザ・ストロ最強のンゲスト存在・マン』」


 高らかに己の能力名を宣言し、大地に立ち、堂々と胸をそらせる大王を、何とか破壊に巻き込まれるのを逃れたエッフェル塔が立膝になり、下から見上げている。


 表情は変えないながら、エッフェル搭の額には汗が流れ落ちている。抑揚の無い声で、エッフェル搭は敵本人に尋ねた。


「最強のカウンター能力? ってこと?」

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