190/地球最強の存在
ジョーは、目の前で行われた頂点対頂点の攻防が、大王に軍配が上がったのを理解した。やがて、エッフェル搭の問いかけに対して、大王は隠す気など毛頭ないというように、整然と語り始めた。
「違うな。『この地球上のあらゆる存在・概念に勝利する』能力だ。我こそが審判を任された人間と言った意味が分かったであろう? この能力に目覚めた時、我はこの星を王として導く己の運命を直覚した。彼の高名なる「搭」よ。貴様には真実の世界で存在するのを許してやる。己が地に戻るがよい」
場が静まりかえっていた。大王の述懐がその通りならば、文字通り誰も、何ものも彼に勝つことはできない。仮にジョーがこの先、エッフェル搭よりも強力な歴史建造物を召喚できるようになったとしよう。しかし、歴史建造物である時点で、何らかの存在・概念であるには違いない。だとするならば、勝てない。ジョーはこの気持ちに覚えがあることに気づいた。どれだけ積み重ねても、勝つことはできない。どれだけ修繕し、積み直しても、結局また壊れてしまう。
「来たれ!」
沈黙を破ったのは、志麻であった。四号公園は事前に準備が整えてあった防衛領域である。地中に構築されている陣は志麻の詠唱時間を短縮し、また、予め戦闘用の機構物が木々に隠れて配置されている。
志麻が掌を返すと、上空に飛び立っていったのは、十数体の小型の無人航空機、ドローンであった。
「『
憧れのエッフェル塔の劣勢を認めないというように、援護しようというように、気概をあげる。
「エッフェル搭さん、もう一度」
志麻の鼓舞を受け取ったのか、エッフェル塔はもう一度立ち上がった。しかし、志麻が仕掛けた攻撃の方はどうか。
落下するドローンたちは光の粒子に一旦解体され、数体の
しかし、一体目の鉄人間が大王に触れる瞬間、またしても大王のあの定型句が繰り返される。
「ドローンを元にした、鉄人間」
大王に接近した一体のみならず、連鎖するように空中の全ての鉄人間も制止する。
「その存在よりも、我は強い!」
号令と共に繰り返される惨劇。鉄人間たちは瞬く間に爆散し、ただの鉄の塵となって、風に吹かれた。
その惨状を前にしてなお、キラキラと降り注ぐ鉄屑の彼方に向けて、エッフェル搭は手を伸ばした。
「制約の中でなお生まれいづる意志!」
と、エッフェル塔は述べた。この時、四号公園上空に展開した存在こそが、エッフェル搭が持つ最強の概念武装であった。
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