106/消える架け橋
陸奥は一旦納刀して自身に供給されているオントロジカを「集中」させていた刀身を鞘から抜き放つと、眼前に迫っていた三メートル怪人の肩口を踏み台にして、高く跳躍する。
向かう先は、この場で最強の怪人。「この街で最も優れた男」が変移した巨体、十メートル級の大怪人テンマであった。空中で菊一文字を両手持ちに切り替えると、テンマの肩口に向かって斬りかかる。
「お覚悟をっ」
大怪人テンマは左腕のガードをあげて陸奥の一撃を受け止めんとするが、一方陸奥は、そのテンマの腕ごと巨体を一刀両断してしまわんと渾身の一刀を振り抜く。
だがしかし、陸奥の全身全霊の斬撃は、大怪人テンマの左腕に受け止められてしまう。
(硬い!)
巨大化しただけでなく、何らかの硬化が体に施されているのか? 陸奥の思考がしばし敵の分析に向いた時である。やや遠方から発せられた、志麻のそれまでとは異なる性質の存在変動律が、陸奥の元へも届く。
この強大で、しかしどこか
(志麻さん?)
志麻が放った存在変動律は、ジョーの元にも到達していた。異変は、その悲しい存在変動律が愛護大橋一帯に波及しているだけではない。大橋全体が発光し何やらその物理的な存在感が危うくなっている。
「ジョー君、川に飛び込んで」
背中のアスミが小さな声で、しかし
何て言った? この大橋から、下を流れるS市の一級河川に飛び込めって言ったか?
「昨日の私の話!」
昨晩のアスミからジョーへの伝達事項の一つ目は、志麻の存在変動律の「色」に関してだった。言われてジョーも気づく。今、疾く、そして狂暴に場に伝播している志麻の存在変動律は、いつもの「青」ではなく、確かに「限りなく透明に近い青」とジョーにも認識できた。
ジョーたちが足を付けている地面。つまり愛護大橋本体がその「限りなく透明に近い青」に包まれて、その構造を
「志麻の能力の極大規模行使なの。こんな短時間でできるはずないのに、あいつ、何かヤバい道具を使ってるんだわ」
アスミから言葉を聞けたのはここまで。いよいよジョーが立っていた足場も光の粒子に解体される段階に至り、どうしようもなくなったジョーは、愛護大橋が消滅する間際、アスミを背負ったまま十五メートルはゆうに越えるかという、橋下の水の流れへのダイブを慣行した。
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