104/当時、ワールドカップをワクワクしながら観ていた
陸奥はまさに戦艦が複数の砲弾を同時発射するように、サッカーボール状に現界している副砲を連続で周囲に蹴り込み、三メートル級怪人達を蹴散らす。跳ね返ってきた副砲を器用に再び自分のコントロール下に置きながら、一方で菊一文字を一旦納刀する。途端に鞘は赤い発光を始め、何やら力を「
狙うは真っ先に大将首とばかりに駆ける陸奥の横を抜けて、一体、三メートル級怪人がのっしのっしと重い体重を感じさせる足取りで、ジョーの元に向かってくる。
一体、来ちまったか。ジョーは、今こそ陸奥に託された副砲の一発を使う時と、アスミを背負ったまま助走距離を取った。
「ええと、PK戦とかだと相手に当たっちゃダメなんだけど、これはむしろ当てなきゃダメなんだな」
ジョーは右足を振り上げ、体育の授業くらいでしかやったことがない、サッカーの「シュート」を怪人に向かって撃ち放つ。
ジョーが蹴った弾丸は、若干怪人の中央からそれたが、何とか肩口に命中。三メートル級怪人の巨体が揺らぐ。感触として、ダメージもある。
副砲の球体が、跳ね返って宙に浮かんで戻って来たので、ジョーは落下地点に向かって走り込んでいく。陸奥のようにオーバーヘッドキックはアスミを背負っているのもあるし、そもそもジョーの身体能力ではできないが、幼少時に観たあれならできるかもしれない。
ジョーはタイミングを合わせながらジャンプして右足を振り上げ、空中のボールに向かって、右足を戻しながら反動で左足を振り抜く。イメージするのは、いつの日か観た南米のフォワードの選手のボレーシュートである。
「とりゃっ」
奇跡的にタイミングが合ったジョーの左足は、再び弾丸シュートを怪人の方向に向かわせたが、今度は前回よりもさらに軌道がズレている。これは当たらないか? 自分が蹴ったボールをどこかで客観的に見守っていたジョーだが、ボールはやがてドライブ回転を誘発すると弧を描き、カーブしながら結局三メートル怪人のドテっ腹に二撃目を叩きこんだ。怪人は派手に吹き飛び、そのまま仰向けになって動かなくなる。
「うむ」
ボールにドライブ回転がかかったのはまったくの偶然だったが、ジョーは納得したように頷き、陸奥の真似をして言ってみた。
「成敗」
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