EX4
「……これで、今回の事件の報告は以上です」
とある高層ビルの、最上階。高級な椅子と机だけが置かれた部屋。
1人の青年が、1人の熟年男性に、学園制圧事件のあらましを説明していた。
「ご苦労。予定よりも早く事件は終結したな」
男性は窓の外を眺めていて、上機嫌そうに酒を飲む。
「フォードの2人がいたことがうまく事件を運んでくれましたね」
「それで、諜報班などの部隊の排除は?」
「順調です。現在調査中の部隊も含めて、一週間以内には全員捕らえられるかと」
「結構」
そこで一旦会話は途切れた。青年は手にしていた紙束を閉じ、脇に抱える。
それをちらりと見てから、男性は言葉を続けた。
「……それで、彼らはどれだけ働いてくれたかね?」
「想像以上の働きです。フォードの一員として、的確に学園を制圧してくれました」
「それはよかった。ハリス・ツインフォードも、クロウ・オーラフォードも、まだまだ衰えてはいないということか」
男性の嬉しそうな様子を見て、不思議そうに青年は眉をひそめる。
「衰えていないほうが都合がよろしいので?」
「まあな。そのほうが、こちらも楽しめる。それに、今日は予想以上の収穫だった。久しぶりに彼らの本性を覗く事ができたよ」
「やはり、軍に突入させないのは正解でしたね」
「ああ。世間には、学園の生徒の安全を考えてと公表したが、上手くいったものだな」
男性は窓の外を見ながら楽しそうに含み笑いをした。
その様子など気にもしないで、青年は言葉を続ける。
「彼らの実力をしっかりと見る機会には、今回の事件は好都合でした」
「それで、どうだね。倒せそうか?」
「ええ、問題はありません。不測の事態でも起きない限り、簡単に殺せるでしょう」
自信満々に答えた青年を見て、満足そうに男性は頷く。
「良い自信だ」
「ただ、作戦決行はフォード全員が集まってからにするつもりです」
「ほう?それはどうしてかね」
「全員集まって、全員まとめて殺されたほうが、彼らの絶望感は増すでしょう?」
楽しそうに微笑みながら言った青年の言葉に、男性は思わず高笑いしてしまう。
「フッ、ハッハッハッ。それもそうだな」
「……それでは、そろそろ失礼します。事後処理がまだ残っていますので」
「ああ、頼んだぞ」
青年が部屋を出て、部屋は無音になる。
無音のまま、夜景を眺め、酒をあおいでから男性は1人呟いた。
「……期待しているぞ、ファディ・オウス・ドゥジェス」
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