EX3 ユイの想い

 ユイは、入学式でハリスと出会った。

 珍しい灰色の髪と、灰色の目がやけに印象に残った。

 そして、不思議な雰囲気を持つ男の子という第一印象。

 それからあまり関わりは持たなかったが、いつだったろうか。

 何かのきっかけに声をかけた。

 何かのきっかけに話が弾んだ。

 何かのきっかけに一緒に帰り、遊んだ。

 そして、ハリス・メイソンという男が意外にも優しく、温和な男の子だと知った。


 彼は、昔のことを話したがらなかった。

 唯一知っているのは、学校医のケイト先生と知り合いだった、ってことくらい。

 それ以外は知る必要もないし、知る気もなかった。

 いつからか、彼のことをよく考えるようになった。

 いつからか、彼と行動を共にするのが多くなった。


 行動を共にしていくうち、色々なことに気付いていった。

 彼の持つ暖かい目。

 彼の持つ暖かい心。

 彼といると生まれる暖かい心。

 彼といると火照る体。

 そんな何気ないものが大好きだった。

 近くに彼がいれば、否応無しに目が追ってしまう。否応無しに心臓が脈を打つ。

 これが恋だと理解するのに、時間はいらなかった。




 でも、今はどうだろう。

 彼は目の前にいる。間違いなく、彼は私を助けに来てくれた。まさにヒーローだ。

 そんな状況なのに。暖かい心は生まれない。体は火照らない。

 ただ、心臓は脈を打つ。でもそれは、いつもとは違う。

 恐怖。怯え。竦み。悲しみ。辛さ。

 そして、彼から感じるたった1つのもの。

 冷たい目と、冷たい心。


 彼は、自分が恋したハリス・メイソンには見えなかった。

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