援軍到着

 一度、待機している与一達の元へ戻った。

 ラウールの連絡を受けたノエルが通路を開いて俺達を迎える。


「お疲れ様……って、ラウール様! どうなさったんですか⁉」

「大丈夫です。回復済みなので問題ありません」


 まあ、このボロボロのカッコじゃな。不安そうに俺を見るノエルに大丈夫だとうなずいてみせる。


「魔王の城を見つけた。移動される前に全員で出る。装備品の補充を頼む」

「わ、わかりました!」


 パウチの中のポーションや魔法玉、スリングショットの状態を確認する。荷物が届いてて助かった。

 最後に布都御魂剣を抜いて刀身を見る。

 つかさがいるところまで後少し。必ず助ける。頼む、力を貸してくれ。

 それに応えるように刀身が燦めいたように感じた。


「出るぞ!」

「おう、こっちもOKだ」


 俺の言葉に勇治や義経の声が応える。


「ラウール、開けてくれ」

「……すみません、先に出てください。後から参ります。ノエル、頼みます」


 連絡途中らしいラウールの声が言い、そのまま通話に戻ってしまった。

 間にいるノエルは、ちょっと困ったような顔をしたものの吹っ切るように顔を上げた。


「通路の開閉はスクロールがありますので、先ほどの地点にお送りできます」

「わかった、頼む」

「はいっ!」


 俺達は揃って騎竜達の待つ異世界へと通路を渡る。


《通話状況の最終確認です。全員聞こえますか》


 俺達はそれぞれノエルに返信を送る。


《OKです。では、いってらっしゃいませ!》

《おう!》


 騎竜達が辺りを警戒しながら待っていてくれた。


『ニーズヘッグ、待たせたな』

『蓮、おかえり。とりあえず攻撃されることはなかったけど嫌ぁな雰囲気だよね』

『主はまだ向こうですか? 引き続きこの方を乗せれば良いのですか?』


 リンドヴルムが不満そうだ。確かに契約したドラゴンライダーではないからな。


「少し待つ。ここが出現地点になってるなら警戒は必要だろう」

「まあ、出た途端に攻撃されたら、たまんないからね」


 同意した義経にうなずく。

 すぐにラウールから通話が入る。


《蓮様、援軍を送ります》

《おう》


 やっと話がまとまったか。


《同じ地点だな?》

《はい》


 待つほどもなく通路が開く。


「ユリウス殿⁉」

「はい! 騎兵なら多少のお役には立てるでしょう」

「ありがとうございます。まさか交易都市からも援軍をもらえるとは思っていませんでした」

「私共だけではありません。途中の集落からも加勢が出たという話を聞きました。おっつけ到着する者もおりましょう。どうか戦列にお加えください」


 少しでも戦力が増えるのはありがたい申し出だ。交わす言葉も少ないまま通路が閉じる。

 閉じた通路が再び開けられた。


「蓮様!」

「トゥロか」

「馬をお使いください。後は魔法使いと弓兵です」

「ありがとう、助かった」

「なんの、村はお任せください」


 俺の横でにんまりと口の端を上げる武将達。

 義経の目の色が変わった。


「寡兵には変わりないけど、いないより全然マシだねえ。なにより魔法使いがいるのがいい」

「ふむ、騎兵は儂が率いるとするかのう」


 政宗が言うと、義経もそれはいいと手を打つ。


「うははは! ようやく出られるか。腕がなるわ」

成美しげざね殿は少し落ち着かれよ」

「なんだよ、そういう小十郎もアガってんだろ!」


 伊達の家臣も一瞬で顔つきが変わった。手持ちを冷静に見つめ、その頭の中はすでに戦術が描かれているんだろう。

 つかさの声が聞こえた様な気がした。きっと俺の焦る気持ちが聞かせたのかもしれない。待ってろよ。もうすぐだ。


 ――蓮!


「……つかさ?」


 ――届いた! 蓮、あたしは大丈夫。眞生さんがついててくれるから。あたしにはかまわないで魔王をやっ……


 それは繋がった時と同じように唐突に途切れた。


「蓮? どうかしたのか」

「つかさの声がした」

「あん? なんも聞こえねえぞ。それよりインカムちゃんと入れとけよ」


 やってるよ、と勇治には返したが……気のせい、なわけあるか。あんなはっきり聞こえたのに。皆には聞こえなかったのか?


 ――君にしか聞こえてないよ。勇者様。


 魔王のかん高い笑い声が頭の中に響いた。


 ――城へ来なよ。どうせ来るなら今来ればいい。そしたら、このおねーさんも助かるかもね。


「どういうことだ!」

「蓮? なんなんだよ。お前、どうしたんだ?」


 冗談じゃない、つかさに手ぇ出したら殺してやる。

 勇治の声もまったく耳に入ってこなかった。俺はニーズヘッグに飛び乗ると弾丸のように飛び出す。


「つかさあああああああ!!!」

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