救護班活動開始します
避難が始まって会所の中が少し落ち着いてくると改めて思い知らされる。
あたしってなにもできないんだな。足手まといなんて言葉すらおこがましい。邪魔にならないようにするだけしかできないのが悔しい。
「眞生さん」
「なんだ」
ちょっと来て、と手を引っ張ってユリウスさんのところに連れていく。
「あの!」
振り向いたユリウスさんの目には邪魔だと言いたげな色があったけど。
「この人魔法使えます」
あたしが眞生さんを差すと途端にその色も消える。
「それは助かる。この町で魔法使いは貴重な存在なんだよ」
ユリウスさんは眞生さんに言う。
「できたら攻撃隊に加わっていただきたいのですが、治癒魔法が使えるならそちらでも」
「我はこの者の護衛を頼まれておる」
ちょっとおお! 今はそれどころじゃないでしょ!
あたしは眞生さんを引っ張ってごしょごしょとささやいた。
「あたしはいいからここの町を守ってよ」
「わかった。では貴様ごと守れば良いだろう?」
イマイチ意味はわかんなかったけど、なんかやってくれそうだからいっか。
「お待たせしました」
「この町の防衛に参加していただけるのか?」
「はい!」
ね? とあたしが目で念を押すと眞生さんがうなずく。
やっとユリウスさんもほっと息を吐いた。
「あれ? つかさ様じゃないですか」
ん? あ、こないだの!
「ニコルさん?」
「はい! ここでお会いするとは思いませんでした」
「どうしてここに?」
「お使いです。ですが、こうなった以上協力しなくてはと思いまして」
あ、なんだ。こんな風に素直に言っていいんだ。
迷惑かけるから引っ込んでなくちゃって、できないからダメなヤツだなんて、そんなこと関係ないんだな。うじうじ考えすぎるのは悪い癖だ。
「あの! ユリウスさん」
あたしは彼を見つめて言った。
「あたしも救護ならお手伝いできます」
町の入口に向かって走る。
あたしと眞生さん、ニコルさん。持てるだけの救護用品を持って走る。
「警らのほうから何人か補充します。物資も持たせますので、それまでがんばってください」
現場指揮の人が確約してくれたなら人数は当てにしていいだろう。
後は怪我人が少ないことを祈るだけ!
町の外からヨロヨロと入口にたどり着いた人がバタリと倒れ込んだ。
「大丈夫ですか!」
「う……」
なんとか声かけには反応した。 見た目の怪我はないけど。
ノエルさんと二人で抱えて木陰に寝かせる。
「ねえ、眞生さんって、この人の体の状態がわかったりします?」
「……骨、だな。そのせいで内臓がやられている」
「あ、それ薄めたポーションで対応できますよ」
そう言ってノエルさんが取り出した小瓶。
それの半分ほどを飲ませると、ふっと呼吸が落ち着いた。
「よかった。落ち着きましたね。後はこのまま町に送って治療してもらいましょう」
「ありがとう、ノエルさんがいなかったら大変だったよ」
「少ないけどポーション持ってきてよかったです。この調子でがんばりましょうね」
戻ってくる人は圧倒的に裂傷が多い。ポーションにも限りがあるから、よほどの傷以外は消毒して包帯を巻く。
「この薬草を練った薬、使いやすいですね。簡単な傷なら塞がっちゃうし便利」
「いいでしょう? 魔力が練り込まれてるんですよ」
おーい、と手を振る人達がこっちへ走ってくる。
「待たせてすまない、人員と薬の補充だ」
「ありがとうございます」
薬が心配だったから助かる。
「俺達は動けないやつをここへ運んでくる。こっちは任せていいか」
「はい!」
出て行ってすぐに怪我人に肩を貸して戻ってくる。その人をおいてまた駆け出していく。
今度は上から妙な光が振ってきた。
「なに⁉」
見上げると上空を飛び回る魔物が一匹、空中でなにかに叩きつけられたような格好でベタリと張りついている。
なんであんな所に張りついてんの? ってか、これバリアみたい。うっひゃあ、すごいね。またすごい魔法見られたよ。戦いの最中なのに魔法に興奮してしまうのはいけないだろうけど、こんなの初めて見るんだもん。
「ね、眞生さん。あれ魔法なんでしょ。すごいね」
隣にいた眞生さんをバンバン叩いてそう聞いた。
「そうだな」
「もしかしてこれ町ごと覆ってるのかな」
「そうだが」
そうだが? 眞生さんを叩いていた手が止まる。もしかして……
「もしかしてこれ眞生さんの魔法?」
見上げると眞生さんは黙って首を縦に振った。
「この町と勇治の依頼を両立する方法が他になかっただけだ」
それだけで? それだけでこれだけのことを? なんて人……って魔王様だったわ。
「気にするな、我の魔力はこの程度では枯渇せぬ」
気になるよ! すご過ぎて気になるよ!
もう一度見上げると、さっきの魔物が煙のように消えていくとこだった。
「消えてく……」
「あれが魔素に
魔物は魔素の
蓮、大丈夫かな。
考えないようにしてたけど、やっぱり考えてしまう。
なんだか、やっぱり、怖い。
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