第二章 参集(サンシュウ) 3 優梨
風岡と陽花の発言が会話の90%を占めるような、そんな会となった。
合同コンパのお相手は、基本的には初対面のよく知らない人である。出身地だの、好きなタイプだの、そういった無難な話題で盛り上がることが多いと、そんなイメージを優梨は勝手に持っていた。
とは言え、出身地は四人とも名古屋であるし、優梨が影浦と仲良くするのが目的である会なので好きなタイプを聞くのもナンセンスである。ましてや陽花が影浦や風岡の好きなタイプに興味があるとは到底思えなかった。
となってくると、残るは陽花のお得意の血液型別性格診断の話題だ。
「風岡くんはO型でしょ?」
陽花が分析した独自の基準で、血液型当てが始まった。
「何でさ?? 俺はA型だよ」
「嘘だぁ! だっていかにも
「僕はO型ですよ」影浦は静かに答えた。
「え!? 嘘? 何でよ!? 二面性はっきりしているから絶対ABだって! 調べ直してもらった方が良いと思うよ。じゃあ、優梨は何型か知ってる?」
「あ、何型だっけ? 昔聞いた記憶があるけど、昔過ぎて忘れた」
「そんなの、思い出せなくたって簡単でしょ? 優梨は天才で変わり者のAB型よ。だから影浦くんと相性抜群かなと思った」
「そうなんだ」呆れているのかどうなのか、影浦の答えはそっけない。
「ちなみにアタシは分かる?」
「Bじゃない?」風岡は言下に答えた。
「僕もB型だと思います」影浦も続く。
「何で当たるわけぇ!?」
「だって、顔にそう書いてあるから! おでこに大きく『B』って!」と、風岡はからかった。
「そこの風岡! うるさい」
血液型の話題で盛り上がっているが、陽花の話す血液型の話題は、少々
血液型占いで、『×型だから○○』というのはバーナム効果だと優梨は考えている。バーナム効果とは、誰にでも当てはまりそうな曖昧な記述に対して、自分に当てはまっていると感じてしまう心理現象を指す。『A型だから几帳面』というのは実に曖昧だ。日本人は全体的に几帳面な国民性だから、多数派のA型には几帳面な人が多いと感じてしまうだけだ。そういった『×型だから○○』という記述が増えれば増えるほど、結局どれかには当てはまってくるわけだから、当たっていると感じてしまうだけだ、と優梨は解釈している。
そういう説明をすれば、陽花に「さすが説明が合理的だし頭いいね! やっぱり優梨はAB型だよ」と言われるのがオチである。しかし、風岡と影浦が口を揃えたように、陽花のB型は実によく当てはまっていると思うし、実際他の人からもよく当てられているから、不思議なものだ。
血液型占いは、医学的根拠がなくただの迷信だと思っている。しかし、ABO式血液型を支配する遺伝子によってコードされたタンパクが、何かしらの性格を決定する因子に特異的な
今更ながら優梨はあまり発言していないことに気が付いた。周りもうすうす気付いているようだった。
陽花が小声ともいえない小声で優梨に
「ちょっと! 優梨が主役なんだから、アタシばかりじゃなくて、もっと喋ってよ」
「ごめんよ……陽花。ほ、本当に緊張しちゃって……!」
すると、風岡が立ち上がって個室を出て、個室の外へと優梨を手招いた。
「大城、ここは落ち着かないか?」
「風岡くん、本当にごめん。瑛くんにどうやって切り出せば良いのか……」
自分でも無意識のうちに『瑛くん』と呼んでいた。
「いや、俺に謝る必要はない。でもせっかくのチャンスだからな。場所を変えるか……そうだ! 小学校のときの記憶だけど、大城、歌が上手かったよな? 音楽の時間いつも褒められていたよな? カラオケとかどうだ?」
「私は構わないけど、瑛くんとか風岡くんはいいの?」
「大丈夫。俺も影浦とはカラオケ行く仲だから。まぁ、あいつが女子の前で歌うところは見たことないけどな。河原さんって言ったっけ? あの子は歌えるかな?」
「うん。陽花の声量は超一流だよ」
「よし! 影浦に訊いてくる」
優梨に部屋に戻るように促して、代わりに影浦を外に呼んだ。
風岡はぶっきらぼうな口調だが、気配りができる人だと正直に感心した。小学校時代から思いやりがあって人気者のイメージだが、今でもきっとそうなんだろうな、と素直に思った。
風岡と影浦が戻ってきた。風岡は優梨に手でOKサインを作って送った。
「じゃあ、一次会はこの辺りでお開きとさせて頂きまして、二次会でカラオケを予約しましたので、皆さんご移動のご準備をー。お忘れ物がないようにお願いします」
風岡の幹事っぷりはなかなかのものだった。
二次会のカラオケについて、さて、今回も『瑛』以外の交代人格にも確認を取ったのだろうか。純粋な疑問だった。
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