第一章 邂逅(カイコウ) 3 優梨
優梨と陽花は
学校名に
優梨は、そんな名門中学の入学時から現在高校二年生の途中まで成績はトップクラスであり、一学年に二百人以上いる中で五位以内から逸脱したことがなかった。父は医師で病院を経営、母は看護師という医者・医療従事者一家で、自身も医学部志望であった。しかも、長い
一方の陽花も、成績は中の上くらいで優梨には及ばないが聡明であり、バレーボール部で身長は高く、運動神経も抜群であった。優梨に勝るくらい
優梨は地下鉄名城線乗り換えでいつもなら栄で降り、一方の陽花は
名古屋駅で一通り地下街や百貨店でショッピングを楽しんだ後、おきまりの女子トークのためカフェへと向かった。地下街では改装工事前の在庫売りつくしセールで平日の昼間なのに人がたくさん集まっていたうえに、さらに献血を大声で呼びかけるスタッフもいて、かなり賑わっていた。『
「優梨って確かAB型だっけ?」
「そうよ。確か名古屋駅のタワーズにも献血ルームあったよね。あれは赤十字だっけ? まあ、献血で不足していると言われるとちょっと申し訳ない気もするけど、痛いのは苦手だし」
「こら。そこの医学部志望! そんな精神じゃ、患者の痛みが分かる立派なセクシー女医になれんぞ!」陽花は茶化した。
「セクシーは関係ないでしょ? 陽花はB型だけど、献血してきたら良いじゃん」
「嫌よ! せっかくのお茶の時間がもったいないもん。きゃははは」
「何だそれ。でもAB型は9%しかいないから、どこでも不足するんだよね。200ミリリットルなら今でも大丈夫だから、今度社会勉強がてら行ってみようかな」
「さすが! 優梨さまー!」
献血は、200ミリリットルの全血献血であれば十六歳から可能だ。400ミリリットルで女子の場合、あるいは成分献血では十八歳からとなる。
「そういえば、優梨って天才だし、いかにもAB型っぽいよね?」
そう。陽花の得意とする話題は血液型占いの話題だ。優梨は、また始まったかと思った。
「血液型占いって科学的根拠がないから、あまり信じないんだよね。でも陽花の自由奔放すぎるところは、間違いなくB型に見える」
「ひっどーい! 私は優梨のこと褒めたのに!」
「あれ? B型って当てられるのは不本意なの?」
「アタシだって、たまには几帳面なA型とか、面倒見の良いO型とか、天才肌のAB型とか言われてみたいわ」
「そっか、そっか、ごめんごめん! 冗談だよ」と、優梨はあまり申し訳なさそうに見えない謝り方をする。
「いいよ。分かってるから。コーヒー一杯で勘弁してあげる。あっ! さっき電車で怒鳴ってきたあの男、絶対AB型だよね?」
優梨は一瞬どきりとしたが、陽花は続けた。
「だってさ、二面性ありまくりだよね!? ABの変わり者どうし、意外と優梨と馬が合ったりして」
優梨は動揺しながら言った。
「そ、そんなことないわよ! 私、変わり者じゃないし二面性もないもん」
「きゃはは! 冗談に決まってるでしょ! これでおあいこだよね。あれ? 優梨、何か耳が赤くなってない?」
「何を言ってんの!?」
優梨は、頑張ってクールを装おうとしても、どうしても表に出てしまうのが欠点であった。
「そう言えば、さっきカッコいいとか言ってたよね! ひょっとして好きになりかけてるとか? ごめん、図星だったかな?」
おっしゃる通りで間違いなくそう言ったのだが、優梨は必死に嘘をつこうとした。
「言ってない! 言ってない! そして好きになりかけてない! もうやめてよ! 恥ずかしいんだから!」
「言ってた! そういう優梨の純粋で分かりやすいところ好きよ!」
そう言って、人目を
「暑い! 汗出てきちゃったし!」
「おかしいな。クーラー効いてるはずよ」
「陽花のせいでしょ!」
まったく、陽花はいつもこうやって私に抱きついてくるから本当はバイセクシャルじゃなかろうか、と優梨は思うことがある。
「優梨はこんな可愛いのに、彼氏の一人も作ったことないんだから笑える」
「もう!」
優梨はこういう話の展開にはからきし慣れていなかった。陽花に途中からずっとからかわれながら、スターバックスに入った。
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