第24話
秘密基地に戻ってからの二人は、持って来た段ボールを地面に敷き、その上に蒼いビニールシートを載せた。そして、テントの骨組みを木の枝で作り、骨組みの上にビニールシートを載せ、簡易なテントを作った。ビニールシートが風で飛ばないように石で重しをした。
最後に段ボール箱を机代わりにして、ランタンを置き、秘密基地の完成だ。
「おお!」
そう叫んだっきり、初花は感動の余り震えている。
「できたなー。初花が初めて作ったにしちゃ良く出来てるんじゃないかな。俺もブランクあったし」
啓が初花の後ろから声を掛けた。
「あ、そだ。初花」
「ん?」
「写真撮ろうぜ!」
「なぜだ?」
「そりゃ記録とか、完成を記念して、だよ」
「おお、それは良いな!」
初花が提案に乗ってくれたので、啓は初花に完成した秘密基地の入り口前に立つように指示をして、カメラで写真を撮った。
笑顔の初花はいつもより輝いていて眩しく見えたので、我知らず啓はシャッターを押しまくり、写真をいつもより撮りまくっていた。
それも、これまでに実は啓はこっそりと、秘密基地作りに熱中する初花をスナップ写真に収めていたのだった。
初花は熱中していてスナップ写真には気が付かなかったが、意図的に秘密基地完成の写真に写らない啓については理解していて、啓を見て、ちょっとだけ寂しそうな曇った顔をした。しかし、初花も今回、それについては何も言わなかった。
「……じゃあ、秘密基地に、入りますか!」
「うむ!」
初花は嬉しそうに言って、早速中に入った。
その後を追って啓も秘密基地に入った。
「おおー!」
一足先に入った初花は、さっきから、歓声しか上げていない。
「んーこの感じ!」
啓も、いささかテンションが上がる。なんだか、子供の頃を思い出して――といっても、彼も未だ子供だが――懐かしくなる。
二人が座ると満杯になってしまう程の大きさの基地だが、それがより、秘密基地らしさに溢れていた。
「よし! 日記を書くぞ!」
初花がゴソゴソ交換日記用ノートを出して、書き始めた。薄暗がりだが、文字は書ける。
嬉しそうにペンを走らせる初花を見て、啓は自然と笑みが溢れた。
久し振りの肉体労働に啓も、穏やかな疲労が襲い、気が付いたら座ったまま眠っていた。
二人が目が覚めたときには辺りは、とっぷりと日が暮れていた。
真っ暗な神社裏の森を歩き、神社に着くと、「こんな時間だけど、やっとくか」と言う啓の提案により、お礼参りをサッと済ませて、家に帰った。勿論、啓は初花を送っていった。
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