080_1500 夜の巷を機動戦するⅥ ~素破抜~
(どういうこと……!? 誰か――や! 先輩が戦ってる!?)
《
明らかな異常事態に樹里は手早く学生服に着替え、赤い
すれば夜でも――夜だからこそ、確認できた。淡路島で行われている、何者かによる戦闘が。光はわずかしか確かめられなかったが、
なにがどうなっているのか、まるでわからない。
無線で呼びかけても、誰からもなんの反応もない。
置いてきた友人たちのことなど、
封鎖されていようと、構わない。こうなれば直接乗り込んで確かめるしかない。
重力制御飛行から電磁投射への切り替えを心に決めた頃合に、丁度海上に出た。
「!」
途端、
慌てて急降下すると、回避機動を待っていたかのように、直前までいた空間を高出力化されたレーザーが通過する。固体化した空気成分が榴弾として爆散した。
更に遅れて、反応がひとつ――だが実際にはふたつ、急速接近してくる。樹里は座っていた鉄棒から降りるように、落下しながら長杖を構え直す。
そして真正面だから辛うじて視認できる、立体化した黒い影を打つ。その反動を利用するように、全身に《魔法》を宿す小柄な影を弾き飛ばす。それぞれ防がれ金属音が鳴り響いたが、逃げることを優先する。
わずかでも遮蔽物と、安定した足場を求めて落下し、勢いそのままに明石海峡大橋に着地した。
遅れて襲撃者たちもバラバラに、同様に着地する。
「どうして……!?」
GPS情報でわかりきっているが、改めて闇越しにその姿を確かめて、驚愕の声が思わず洩れた。
やはり、なにがどうなっているのか、まるでわからない。
「あー……やっぱ木次さんでしたのね」
吊り橋の太いメインケーブル、その垂れ下がった最下部に着地したのは、若いが子供扱いはできない女性だった。
本日のファッションは、足のラインを
白い繊手が握るのは、宗教的とも思える装飾が施された、人の身長ほどもある豪奢な杖。
「相手がミス・キスキでも、対応は変わらないのでありますか?」
四枚の
どこからか《妖精》たちが飛来し、《女王》に付き従う。
「多分、わたしたちのトラウマ対策でもあるんですよ。木次さん相手に遠慮なしに戦って、対人戦闘に慣れろと」
本州側の道路中央に降り立った女性は、長い
寒さ対策のダウンコートを脱ぎ捨てれば、ピンクのカーディガンが現れる。膝下丈のプリーツスカートにローファーとなれば、普通の女子高生以上の動きなど期待できまい。
なのに彼女は、手にした携帯通信機器を使って、この格好で戦う。超音速で。
「やっぱね」
淡路島側の道路中央に降り立った少女は、ジャンパースカートを風にはためかせた。腰までスリットが入るそれが
両腕は脱力し垂らしているが、回転させるトンファーが裏腹な戦意を示している。
「兄貴は最初から、じゅりちゃんにあたしらを、ぶつけるつもりだった」
コゼットが。野依崎が。ナージャが。南十星が。
取り囲む彼女たちがなぜ攻撃してきたのか、樹里にはまるで理解できない。
「……淡路島で、なにが起こってるの?」
樹里がなんとか驚きを引っ込めると、つまらなそうな態度のまま、南十星はトンファーの回転を止めて構えた。
「兄貴は《ヘミテオス》関連の実験って言ってた。大ウソってわけじゃないけど、ウソだろうけど」
「じゃあ、本当は……?」
「じゅりちゃんの兄貴と戦ってんじゃないの?」
「え……?」
また意味不明だった。なぜそんな事態になっているのか。
普段どおりに
考えられる可能性は。
(私のせい?)
十路に心臓を移植し、
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