065_1050 【短編】日常のちょっとだけ非日常Ⅵ ~PM17:30~
次に目が覚めた時には、午後五時を過ぎていた。
まだ体にだるさは残るのものの、体調不良よりも一日寝ていたものだろう。風邪症状とは違う節々の痛みを感じるようになった。
そして本来、風邪の時には汗をかいて着替えるべきと言われるものだが、ずっと同じ服で寝ていた。
「お客さーん、かゆいところないですかー?」
「あのな、なとせ……風呂くらいひとりで入るんだが? 濡れるだろ?」
だから……というのも変だが、十路は風呂場で南十星に洗われていた。
自分で汗が気持ち悪くなったので、せめてシャワーくらい浴びようとしたところ、帰って来た南十星に見つかってこうなった。
「それはあたしも
「頼むから恥じらいを持ってくれ……」
ジュニア用インナーのみの南十星に剥かれかけた末なので、かなり情けない。
なにが悲しくて妹にパンツずらされなければならないのか。そんな屈辱を甘んじて受けなければならないなら、自分で脱いで大人しく洗われる。
「風邪ひいて弱った兄貴を元気付けようというこの妹心! なぜ理解できん!」
「ならマジやめろ……今日は余計に疲れる……」
そこまで本格的に風呂するつもりはなかったのだが、シャンプーの泡を洗い流され、顔の水気を手で拭い、そっと目を逸らした。
南十星が目前にいて、湯に濡れた白い下着が透けていた。兄として将来を心配するお子様体型とはいえ、やはり女の体だ。ジロジロ見ていいものではないと目を逸らす。
見たところでムラムラするとか、そういう迷いはありえない。体調以前に相手の問題で。
「でさ。体洗うのに、そのタオル邪魔なんだけど」
股間を隠すタオルを示されたが、『どかせ』は無体な要求でなかろうか。
「頼むから、男のプライドというものを理解してくれ……」
なにが悲しくて、妹に局部まで洗浄されなければならないのか。
「にはは。あたしのアデスガタにおっきした?」
「……………………」
「ゴメン。あたしが悪かった。ゴキブリ見るようなケーベツしきった目、ガチでやめて」
ただでさえ頭痛の耐えないアホの子なのに、今日の体調では余計に疲れる。黙らせるための目力にも力が入る。
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