第7話 忘却さられし五人目
石作の皇子の信龍はアルゾンに騙され、車持皇子の倉持三郎は蓬莱の玉の枝を作って送ったまま逃げてしまい、大伴御行は目に出来物ができ失明し、石上麻呂は燕の巣とイワタケを掴み転落死した。
そんな中、1人の男が居た。
「お嬢様。お待たせ致しました。拙者、阿部御主人あべのみうしこと、町火消の零だ。お嬢様がお望みの火鼠の革衣持って参りましたよ。」
彼は、タイムスリップしてきた事を隠していた現代日本の消防士である。最近の消防服は、燃えない。素晴らしい時代となった。
かつて、安倍清明が住んでいた家の跡地に家を建て住んでおる為、阿部御主人と言う。
火が出ると急いで向かい、命あるものは全て救う男であった。
「あら、ごめんなさい。貴方の事忘れていたわ。まぁ、どうせ私の願いなんて叶わないものだと思うけど。まぁ、その布貸してちょうだい。」輝夜は燃えない布なんて無いわ。と得意げな表情で、その布に火鉢の火を当てる。
一分経っても燃えることは無かった。
「あらまぁ!こんな布。何処で見つけてきたのよ?嘘だ有り得ないわ。人間舐めてた私の馬鹿だった。ごめんなさい。こんな事してしまって。でも、もうすぐ月の世界からお迎えが来るの。それは、それは…避けられないの…」
輝夜は泣いていた。散々、他の四人を騙しておいて普通の人なら酷いことだと思う筈であったが、彼は演技だと疑うことも無く彼女を受け入れた。
「輝夜さん。どうかなさったんですか?そんなに泣いて。」
「実は、私、月の世界から逃げてきたの。月の世界には恐ろしい月魔龍げつまりゅうが居て4年に1度、女を喰らうのよ。」
「その生け贄の為に、あんたに白羽の矢が立ったわけか。」
「はい。だから怖くて。本当は月には戻りたくないんだけど。」
彼女は思い出すだけで震えていた。本当に嫌なところであったのだと零は感じ取った。
「安心しろ。俺が月に行ってその月魔龍を倒してやる。」
「ほ、本当ですか?でも、月魔龍は強くて大きくて恐ろしいんですよ?」
「大丈夫だ。火も恐れない俺に倒せない者は死神だけだ。」
「ありがとうございます。私、零と幸せに暮らしたい。だから、戻って来て。必ず。」
「あぁ。分かった。絶対に月魔龍を倒して戻って来る。でも、鎧とか武具はあるんだろ?」
「この布に、鎧の形を念じて。」
零は念じた。アメリカ映画に出ていた鉄の男と赤いロボットと争うアニメに出てきたあのロボットを。
「行くわよ。」輝夜は壺に燃えない布を入れ、そこに魔法の液体を入れた。
しばらくしてそれは現れた。
「うーん。なかなかかっこいい鎧になったわね。しかも、これなら攻撃には耐えられそうね。二段階装備となっているわ。」
顔は、目が半月の形をしており、弧が下を向いている。
口は月の文字が記号となり、バイクに乗る初代バッタのヒーローのような口になっていた。
これはなかなかカッコイイ。そう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます