第5話 オトコとオンナ その2
本文
目の前には、キスをする女の子が見える。
私は、百合なんかじゃない。それなのにキスされている。
少し不快感を感じながら、目の前で繰り広げられている映像を眺めている。本当ならこんな映像を見たくないのに。
でも、高校の体育館で倒れてから記憶がないの。
「あぁ。私、死んだのかな?呆気ない人生だったよ。付き合ったことは無かったし。」
『もしもし。いきなり出てきてごっメーン。突然ですが、貴方の名前を教えて下さい!』
「あら、随分、突然だね。まぁ、私の名前は月野光莉だよ。」
彼女は驚くこともなく普通に答えた。
『性別は、何ですか?』
「決まってるでしょ。女よ。ところでアナタは誰なんですか?」
『知りたいの?ボクの正体。』
「知りたいよ。見ず知らずの人だと対応するのが難しいからさ。ねぇ、教えてよ。」彼女は尋ねる。
『ボクの正体はね。…教えるかバーカ。』
その瞬間に、沢山の画像が目の前を通り過ぎていた。
色々な風景が彼女の目を疲れさせ、混乱させていった。
ぼんやりと明るくなってきた。
「ここは?私は生きているのか?」ふと声を出してみるが、声がとても低かった。きっと倒れてから本調子で無いのだろう。
「おう。目が覚めたか。ヒカル。」白衣を着た女性が話しかけてきた。
「私は一体何をしていたの?それで何故男の身体に。」光莉はそう言った。
「お前か、チート級の不良と闘って倒れたんだ。何、特に体に異常は認められなかったわ。」
「ところであなたは誰ですか?見た感じ、医者ですけど。」
「私は、有ケ﨑 流理。医者でありエンジニアよ。」
医学と工学を進む者は滅多にいないが、この女…なかなかやると思った。ただならぬ気を感じてしまった。
「まさか、あの高校生で三大科学誌に論文が掲載されたあの教授?」多少なりとも知識はあるので聞いてみた。
「そんな訳ないじゃない。あの人の研究は生物学だから。まぁ、参考程度に読んだりはしたけどさ。高校生で論文なんてなかなかやるんじゃないの。」
何とまぁ、舐め腐っていることだ。
高校生で三大科学誌に論文が乗った教授だぞ!
それをなかなかやるって。
「あの、高校生で論文掲載なんて凄いと思うんですけど?」
「私はね。もう、小学三年生の時に世間を驚かしたの。脳科学で、夢や記憶を作り込む装置を作って。」
「でも、性別まで変えたのはお前じゃないよな?」
「そんなこと出来るはずないじゃない。出来るならとっくにしてるわよ。」
どうやらこの女…只者じゃないな。
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