第4話 オトコとオンナ その1
一通り映像が終わると、うっすらと心電図モニターの機械音。『ピッピッピッピッ』と脈打つ音がしてきた。
ここは病院なのか? ここまで重傷だったのか?
徐々にではあるが、はっきりと意識が戻ってきた。
「ううん…俺は一体?」低い声で言ったつもりだが、何故か高い声だ。
ピンク色のパジャマを着ていた。
俺は男だ、ピンクのパジャマなんて似合わねぇ。
自分の手を握ると、柔らかい手になっていた。
きっと長いこと眠っていたようで、 筋肉が落ちたんだな。
それにしても、下半身の感覚が変だ。
何も感じない。麻痺したのか?俺は。もう一生歩けねぇのか。
そんな…彼女を抱く事も出来なくなるのか?エスコートすることも。
絶望を感じながら、俺は下半身を触った。
「…んっ!何故だ!アレの感覚が無い。俺は女になったのか?」
その時、ふと人が来る気配を感じた。
「あら!ヒカリさん。凄いわね。まさか、こんな事があるなんて。急性心臓発作で意識不明となったのに復活するなんて。」
看護師が来た。
ヒカリ?俺は、月野洸の筈だったが。
俺の初恋の光莉なのか?この体は。
彼女は、心臓発作で意識不明となっていたようだった。
よく小説とかで見るが、俺は転生したのか?
これは『影の自分に潰された俺が、初恋の人に転生した』という題名の小説なのか?皆、俺をからかってるんだろう。
だが、これは現実だ。信じられないが、自分の体が女性であることから信じざるを得ないだろう。
「先生。私を助けてくれた人は誰なんですか?」
流石に、あの映像を見てもここまでは分からなかった。
正確なことは聞けと言うのだな。俺、いや私はそう尋ねた。
「高校で体育の授業中に突然、倒れたんですよ。それで生徒達が先生を呼んで。AEDを使って色々やってくれたんです。」
看護師は説明してくれたが、よくその裏側までを知っていると思った。きっとデタラメを言っているに違いない。
「あらそうでしたか。私、分からなくて。」
大人の対応で信じ込むとしよう。
「無理もないですよ。あんなに昏睡状態に陥ってたんですから。貧血だと思ってたら、心停止してるから彼女達パニックになって右往左往していたと聞きました。」
どうやら本当らしいな。その言い方だと。きっと救命救急士でも言ったんだろう。
「迷惑かけたと言わなきゃいけませんね。皆さん。ありがとうございます。」
「いえいえ。貴方の命運が良かっただけですよ。ところで、両親に電話しますか?」
「ええ。お願いします。」
これから、女として生きていかなきゃならないのか。
トイレとか大変そうだな。まぁ、最も面倒臭いのは人間関係だとは思うけどね。でも彼女の場合は、いい友達に恵まれているようだから大丈夫だろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます