第15話 対面

「さて、手合わせをしたいのはやまやまだが、呼び出されているので行くか。」日野は俺に言った。

「あぁ、そうだな。」

月島先生の言う通りに中央館に向かった。何のことは無い只のホールだ。説明を受けた講堂の付近にある。


「失礼します。」俺達はドアを開けた。

その瞬間、見たことがある人影がそこにはあった。

男の時の自分と日野が其処には居たのだ。

「洸、久し振りだね。」

先に話し掛けてきたのは、男の自分…光莉の方だ。

体は、俺の身体である。何とも不思議なことだ。


「なんだ。光莉、戻ってきてたのか。」


「うん。高校になって、やっと月影地方に戻って来れたんだ。洸も大変だったんだね。独りで。やっぱり、洸の事がまだ好きかも…」

「俺もだよ。光莉、愛してる。」

二人は、日野と香澄が見ているのも構わずにイチャついた。


そんなムードを壊すように入って来た。その男が。

「やぁ、失礼しますよ。月朋会理事長、月島雄雅ただ今参りました。これより、今回のご説明を申し上げる。」


「師匠。これは如何なることでありますか?」俺は尋ねた。

師匠は少し考えてから口に出した。

「まぁ、待てや。そう焦ってもいい事は無い。まずはこの本を読んでくれ。」

そう言って差し出されたのは、『竹取物語影ノ巻』であった。本家とは違い、阿倍御主人がかぐや姫と結ばれて月野家の祖となったという事が書いてある作者未詳の作品である。パロディ物や擬古物語とされていたが、本当の出来事であったようだ。


「お前は月魔龍を討伐した月野零の子孫だ。そして、この時代に月魔龍の封印が解かれると予想されている。」


「確かに、月野は俺の家ですけど、月野っていっぱいありますよね?この家じゃないでしょう。それにルナメタルの鎧も持ってないですし。」

「疑っているのか?ならば、一千年前に予想された家系図を見せてやろう。」


付録に付いていた家系図を見る。

何十代か略された後、文二郎定安流月野家の末裔に光莉の名前があった。仁衛門信勝流月野家には洸の名があった。

それにしてもこんな昔から俺の名前が予想されていたのは、怖すぎる。予想が的中しているし。


「分かりました。信じますよ。でも、失われた鎧はどうなっているんですか?」

「長らく行方不明であったが、遂に発見したのだ。ルナメタルは変幻自在な金属である。そして、それは壺に入れられ地中深くに埋められていたよ。」


「で、何で俺達が入れ替わらなきゃなんねぇんだ。月島先生。」黙っていた日野が口を開く。

「実は、月魔龍と手を結ぶ大月面帝国の連中が、嘗て織田道山の成金ハウスがあった場所に引き寄せられるのだ。そして、そこが海櫻女子高等学校がある所なのだ。流石に、女子高という花の世界に男が入り込む事も出来めぇよ。」


「大体理解した。要するにこの戦が終わったら、元に戻れるんだな?月島先生。」

「その通りだ。君達にこの世界の存亡を託す。是非とも海櫻女子高等学校を守り抜いてくれ。」

「分かりました。一族の宿命、いざ背負わん。」

二人はその不条理な出来事をそのまま受け止めた。

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