閑話 とあるゲーム記者の話

 仮想世界という物は昔から存在していた。


 最初はアニメや漫画といった題材の一つとなっていたが、技術進歩が進むにつれてそれらの技術は空想上の物ではなくなっていった。


 最初は医療、主に全身を動かせない様な人や精神疾患などの患者に向けて作られた。今でこそ一個人で入手できる程の価格にはなったが、当時は大学病院と言った大きな病院などでしかお目に出来なかった代物だ。


 次に軍事産業として注目された。


 従来より兵士の訓練とは膨大な時間がかかり、しかも訓練で使用する兵器も動かすだけで莫大な金額がかかる。日本に置いて言えば実弾演習で使われた空薬莢一つですら紛失してはいけないと言われるほどだ。


 金のかかる訓練、それらを解決するのに仮想世界という存在が用いられることになるのは当然と言える結末だった。


 それから少し時が経ち、遂には民間にまで手を伸ばすようになった。


 元々仮想世界が実現できてからの世間の注目は非常に高かった。医療、軍事で様々な経験と知識を手に入れたという結果を手に米国のベンチャー企業が初となる民間向けの仮想世界を開発した。


 最初に作られたVRマシンはマッサージチェアの様な物だった。専用の施設が必要で使用する際にも使用者と機械を管理する人が必要だった。


 当然金額も嵩張りVR機一台で豪邸が建つ程と言えた。


 それでも仮想世界という夢の装置は人々から支援を受け、長い年月はかかったものの遂に大衆が体験できるレベルまでに成長した。


 日本ではステラワークスというゲーム会社が作った初のゲームソフト『ハローワールド』という何もない空間で他の仮想世界接続者とコミュニケーションをとるのが始まりだ。


 その後、スポーツだったりレーシングだったりと様々なゲームが開発され世に出回った。


 まるで90年代から急速に発展したゲームの歴史がVRという形で起きたようにそれまで全く関係のない企業からもゲームが発売されたりもした。


 その中で幾つかのVR機器が企業から発売されたが様々な経緯を得て、今では米国の大手企業が開発した『DIVE』という民間向けVR機が世界で殆どのシェアを占めていた。


 VR機がDIVEに実質一本化されたことによりVRのゲーム業界は第二の開発バブルが発生したと言える。


 その時期になればそれまで普及していたインターネットを用いたMMO-Massively Multiplayer Online と呼ばれる大規模多人数型オンラインと呼ばれる物にVRという冠が付く物が現れた。


 そして今までに幾つものVRMMOが発売され消えていったがその中で『ファンタジーワールド』というVRMMORPGが発売された。


 ファンタジーワールドの内容は今までのVRMMOでもあった剣と魔法の世界だ。それだけであれば特に有名になる要素は無い、このゲームも他のゲーム達と同様に数あるゲームの一つとして埋もれていくと思われていた。


 蓋を開けてみればファンタジーワールドはそれまでのゲームの一線を画す程の人気、覇権を得た。


 まずグラフィック、それまでのゲームでもグラフィックの良い作品は幾つも存在していたがファンタジーワールドはその中でも群を抜いており、葉っぱの一枚、草木は勿論当時再現困難と言われていた味覚や嗅覚と言った感覚までも高いレベルで実現して見せたのだ。


 そしてまるでもう一つの世界と言える程の作りこみに現実世界と変わらないような物理エンジンときたものだ。


 現在では外国向けにも海外企業と合同で仮想世界でも異なる言語を使うプレイヤー達が不自由のないレベルの会話が出来るようになる翻訳ソフトも開発中だとか……これに関しては確度の高い情報と業界ではひそかに話題となっている。


 ファンタジーワールド様に設計されたVR機も初期5万台、値段は20万円とありながら開始30分で予約売り切れとなる始末だ。


 元々VR機が高額だったというのもあるがファンタジーワールドの登場によりそれまであった既存のVR機も売り切れになる始末、当のファンタジーワールドも雪崩れ込む勢いの新規プレイヤーに運営は受付を中断し、一時的に制限がかかり事態は収束した。


 ファンタジーワールドは最大30万人がプレイできる環境だが世間の期待に比べその規模は非常に小さいと言える。日本のみならず中国や韓国は勿論、ヨーロッパ各国、中東と言った世界各国でファンタジーワールドの新規開放を心待ちにしていた。


 ゲーム業界においてインフルエンサーと呼ばれる大手配信者たちも彼らが持つ伝手を使い参加を発表していた。今でも一部の配信者やプロゲーマーと呼ばれる人たちが配信を行っているがそれらはまだ序の口と言えよう。


 ファンタジーワールドの新規プレイヤー受付を再開するのは9月初頭、同じうファンタジーワールド仕様のVR機も増産に増産が重ねられ計30万台が出荷予定だがもう予約完売されている。


 今の状態でさえファンタジーワールドは大賑わいを見せている、しかしリリース当初と違う規模で行われる第二陣のプレイヤー達の加入により勢力図はどう変わるのか


 今現在のプレイヤー達はファンタジーワールド初のイベントを楽しんでいることだろう、SNSでも新装備に一喜一憂し賑わいを見せている。


 ただ私はこの第二陣の参加プレイヤー達が今あるファンタジーワールドをどう変えてくれるのか非常に楽しみだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る