第22話 2つの剣と1つの杖
制作評価とは主に0~10の11段階で評価される。評価の数字が大きければ大きい程高品質とされる。
幻想世界では0~3を低品質と元のアイテムからマイナス補正が付く、4~6が本来の性能を発揮し、それ以上になると高品質評価となってバフが付く
8~10は最高品質と評価か分かれ、特別なバフが確率で付いたりすると言った感じだ。
FWの世界では更に評価の上限が上がったような表記があったのでこの情報は古いだろうが、10までの評価による補正は変わらなさそうだ。
そんな訳でプレイヤーはより高品質のアイテムを目指して作るのだが、フレックスのオークション市場で流れている1番評価の高いアイテムはHPコモンポーション、最も作りやすいアイテムでこれが評価7だ。
本来HPを50回復するアイテムだが、このポーションの回復量は58、そして運良く追加効果も付いたようで、+攻撃力アップ小が追加効果として入っていた。
アイテム効果なので微々たるものだが、それでも唯一の高品質アイテムというのもあり同じHPコモンポーションの20倍と法外な値段になっていた。流石に買うプレイヤーは居ないがこのアイテムに対してお気に入り登録の数が万に届きそうな数があった。
ポーションはアイテム制作において最も作りやすく評価が上がりやすいアイテムだ。そして、最も制作が難しく評価が上げにくいのは装備品、それも武器と鎧だ。
更に希少な素材を使ったレア度の高く強力な装備品となるとどれだけ難易度が上がる事か
それはオークション市場にも現れていてポーションに比べ殆どが制作評価3以下の低品質、ギリギリ普通品の評価4の装備については同じ装備品の10倍以上の値段が付けられていた。
それでも買う人は多いようで1時間もすればその装備品は売り切れている。
FWの掲示板を見ても、普通品以上の装備品はトップクランのお抱え生産プレイヤーの極一部が作れるという話だが、全体的に生産プレイヤーの数が圧倒的足りないようで、下手な戦闘系のトッププレイヤー準一級クラスの生産プレイヤーの勧誘が多いようだ。中には金銭で雇いたいというクランもあるらしい
そこまでするか?と思いたくなるようだが、それだけ制作評価は重要だそうで実際港町バルバトに初進出したパーティーも装備品のレベルが上がってなかったら無理だったと動画内で話していた。
そんな訳で今話題沸騰中のこのゲームにおいて、高品質の装備品は下手をすれば現実の宝石類以上に価値があったりする。そしてこのゲームにおいてアイテム製作者はバレる心配が無い
匿名でも出来るし偽名で登録することも出来る。しかし、詐欺等行為を働いたら運営から何かしらのアクションがあるようなので完全では無いが、1プレイヤーがわかるものでは無い
そんな事もあり俺は少しイタズラをすることにした。
「取り敢えず剣と杖かな」
制作素人ではあるが制作評価に大幅な補正がある鍛冶王のハンマーを使えばこの市場を驚かすことが出来るだろう
そんな悪戯心で作ることにした。流石にこの大陸で制作できる物にするがそれ以外は妥協しない
(まずは宝玉を……)
今回作るのは大剣と魔剣、杖の3つだ。
まずは魔剣から、最初に普通の鉄鉱石インゴットを叩きアイアンソードを作る。この時点で評価8、これだけでも充分だがそこから炎系モンスターからドロップする火の宝玉をはめ込むように加工する。刀身に魔力が通りやすいように魔法と相性の良い銀を幾何学模様に彫った刀身に流し込み補強する。
〈洗練された火の魔剣〉 レア度C
制作評価 8
種類 片手剣
装備条件 片手剣レベル5以上 STR60以上
追加効果 物攻+53 魔攻+20 火耐性+5 【攻撃時追加で火属性効果付与】【MP消費で火魔法ファイアーボール使用可】
となった。鍛冶王のハンマーはやはり評価8以上を保証してくれるようで俺の素人鍛冶でも評価8の高品質だ。流石にレアな追加効果は無かったがこれでも充分だろう
〈グレートソード〉 レア度D++
制作評価 8
種類 大剣
装備条件 大剣レベル7以上 STR100以上
追加効果 物攻+101 物防+8 【風の精霊】
こちらはレアな追加効果が付与された。その為レア度も++になっている。風の精霊は風の魔法に対して消費魔法軽減と威力up、更に風の魔法に対して耐性がそれぞれ中レベルで付く、幻想世界で何度か○○の精霊効果が付いた装備は見たがFWの世界では初めてだ。
どれも現環境なら間違いなく1級品の装備だ。トップクランのお抱え生産プレイヤーがどれだけレベル高いか分からないがオークション市場を見ても流石にここまでは行かないだろう
それぞれの武器にメイクと名前を彫る。出品者でもメイクとして出すのでこれが俺の生産プレイヤーとしての偽名になる。
そして杖、これに関しては強さの方向性があるが先程作った2つの武器が攻撃系なので杖の方は補助系魔法に特化した杖にしよう
ただ杖は金属製の杖もあるが、基本は木で作られる。その為鍛冶王のハンマーは使えない
幻想世界では杖は金のかかるものだ。制作評価によってバフが付く刀剣類と違い木製の杖や弓は品質や手間暇で決まる。
杖制作では回復魔法に補正の入る【春の若木】を【森の水】で浸す。そこに出力を弱めて回復魔法をかける。
今回はかけた回復魔法は一瞬だが、もし本気で杖を作るなら希少な素材とかける回復魔法も高威力で長時間かける。杖制作は生産スキルに加え魔法士としての技量も必要なので金属加工とは違った面で難しい
後は漬けた木を杖状に削る。削った断面には再生魔法をかけ断面を消す。
杖の先には相性良いニムル鉱石というアイテムを加工した部品を着ける。そして増幅装置である無色の魔石をはめ込み完成だ。
〈若木の祝福杖〉 レア度D
制作評価 7
種類 長杖
装備条件 杖レベル10以上及び長杖スキル3以上 VIT30以上 INT50以上
追加効果 魔攻+23 魔防+38 回復量上昇+20 風魔法&回復魔法の消費MP軽減
鍛冶王のハンマーを使っていないので制作評価は7になった。それに加え装備条件も厳しくなり使い手を選ぶ杖になってしまった。それでも制作に使ったアイテムの質が良かったので高品質評価になりそれ相応の優れた1品だろう
これにもメイクと彫る。
工房で延長分の料金を主人に払いオークション市場へと向かう
工房のある北地区と違い東地区はオークション市場がある為フレックスで最も活気があった。
プレイヤーの質も様々で全身鎧のプレイヤーからローブを着た魔法使い、弓使いに一部は生産プレイヤーと思われる薄着をしたプレイヤーも居た。
オークション市場はまさに祭りのようで、露店には様々なアイテムが並ぶ、買ったばかりなのか新品の剣を眺めるプレイヤーなども散見した。
そんなオークション市場でも一際大きな建物がある。
【オークション会場】
ここで売りの物の登録が出来る。登録してから出品リストに載り事前に決めた曜日まで入札が行われる。今回自分はこの3品を最低価格スタートで始める。入札期間は1週間、それだけあれば気がつく人もいるだろうし最低価格でもそれなりの値段で売れると踏んだからだ。
受付のNPCに登録料を払い品物を渡す。大勢のプレイヤーが行き来する中で気がついた人物は居なかった。
オークションの登録も終わり現実世界の時刻はもう日付を跨ぐ頃合だった。思いの外制作に時間がかかったようだ。俺は急いで近くの宿屋を取りログアウトした。
そして就寝後、その間FWの世界では大きな波が生まれようとしていた。
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