第10話 火口野一門

【マニュアル操作とオート操作の違い まとめ】

 ファンタジーワールドには、主に二つの操作があります。デフォルトではオート操作になっていますが、ゲームを始めてから、メニュー→オプション→操作方法から切り替えができます。


 違いは何なのか?

 オート操作では、元々設定されているモーションを自分のタイミングで行うことができます。剣術ならまだしも、魔法を使ったことある人はいないと思います。そんな初心者の人向けのアシストモードのようなものです。

 オート操作の特徴

 長所

 ・初心者でも扱いやすく、それなりの動きができる。

 ・与えるダメージが安定する。

 短所

 ・モーションが単調になりやすいために、上級者に読まれやすい

 ・マニュアル操作と違い、モーションとモーションの間に明確なスキができる。

 

 マニュアル操作とは、まさに名前の通りで自分の手で敵を切りつけたり、魔法を唱えたり、罠を仕掛けたりなどあらゆる行動が自分の手で行うことができます。

 長所

 ・オート操作より与えるダメージが高くなる。(

 ・スキがない攻撃が繰り出せる。

 ・魔法の発動、罠の設置が早くなる。

 短所

 ・操作難易度が高い。

 ・与えるダメージが不安定。

 ・魔法の発動、罠の設置が失敗することがある。


 まとめ

 通常プレイならオート操作でも大丈夫だが、高難易度クエスト、コロシアムをする場合は必須と言ってもいいレベル、特にダメージの倍率は無視できないほどでオートの時を1倍固定とすると、マニュアル時の攻撃倍率は0.5~1.25倍、高難易度なら道場のマニュアル中伝は欲しい、コロシアムなら更に奥伝、免許皆伝を目指した方がいいだろう、シルバー中位辺りからはほとんどのプレイヤーがマニュアル操作になっている。


 練習法

 結論としてはマニュアル操作が良いということだが、筆者を含め、ほとんどが剣を使ったことのない素人だろう、そのため道場では初伝すらとるのが難しいはずだ。筆者がおススメする練習法としてはプレイヤーが開いている道場へ入門することだ。


 無料で開いているところもあるが、無料で開いているところはあまりお勧めしない、むしろ厄介ごとに巻き込まれる(特に女性プレイヤー)可能性があるので避けた方がいいだろう、ならば有料でやっている道場ということになるが、企業やプロのライセンスを持ったトレーナーが道場を開いているので、そちらを特にお勧めする。企業道場の場合は別だが、トレーナーなどの一個人の道場は門が狭く、入れない場合もあるので注意


 ※NPCが開いている道場は絶対にお勧めしない、やればわかるがやる時には相応の覚悟が必要だと言っておこう




「道場か……」


 俺はPC画面を見つめながらそうつぶやいた。


 情報を集める際、様々なFW《ファンタジーワールド》の攻略サイト、ブログを見てみたが、サイトやブログの数、情報量などの質、そして活気のある掲示板、これが幻想世界をモチーフにしたゲームなのか?と疑ってしまうほど活気にあふれていた。SNSや掲示板でも毎分、毎秒単位で書き込みがされており、スレもいくつも建っている。幾つものプロゲームチームのFW《ファンタジーワールド》部門も立ち上がり、現実世界とリンクした戦闘システムのため、柔道や剣道、ボクシングや合気道といった業界も賑わいを見せていた。


 そんな中で有用そうな情報がありそうな個人ブログに書いてあった情報を見るに、マニュアル操作は覚えなければヤバいという認識は間違いなさそうであった。


 そして練習法だがこれが一番の厄介な種になっている。


 今見たブログでは有料の道場に入門することが勧められている。実際に『FW 道場 入門』で調べてみると、企業の広告が真っ先に出てきて、現実では~、FW《ファンタジーワールド》では~など実績を公開していた。


 そのまま情報を鵜呑みにするなら有料な道場へ入るべきなのだろう、ただそこには高い壁が存在していた。


「月5万~かぁ、きっついなぁ」


 週に数回、トレーナーの講習や現在トップレベルのプレイヤーの講演等で大体相場が五万円前後だった。もっと安いところもあるが、だったら独学でやった方がいいんじゃないか?と思わせられるサービスだったので悩んでいた。


 大学生の身からしたら月五万もゲームに使えるほど裕福ではないので無理という結論に至った。只でさえ貯めていたお金はVRキットの購入で吹き飛んだのだ。寧ろ節約しないといけない状況なのだ。


 FW《ファンタジーワールド》が元々高価なVRキットを使うという性質上、多少の経済的裕福なプレイヤーが多いらしく、月5万円という高額な料金であっても社会人を中心に結構入門している人が多いらしい、ちらほらと学生もいるらしい


「NPCはヤバいって……どのぐらいやばいんだろう……」


 無料のプレイヤーが開いている道場は俺には無理そうだ。ブログの著者もやめておいた方がいいと言っているし、師弟システムで俺のステータスがバレて問題が起きそうな可能性がある。有料の場合は金銭という責任が出てくるため、こっちから言えばばらすことはないだろうがここはお金という問題が出てくる。最終的にはNPCの道場ということになるのだが


「しかも今入っているところって新月流だよな、よりにもよって……」


 幻想世界で個人的にはもっとも強い師匠であり、もっとも敗北を浴びせられた道場であり、もっとも苛烈な道場として記憶に残っているのが新月流という刀武器専門の道場だ。


 今では卒業生として自由を手にしているが、門下生となるととても厳しい誓約を敷かれるのだ。


「またあの地獄の修行するのかぁぁぁぁ」


 思い出すだけで頭が痛くなりそうだ。只得さえ難しいとされているマニュアル操作をあの火口野流道場で学ぶのはどれだけ俺は死ぬのだろうかと思わず思ってしまう


 新月流、強力なモンスターが跋扈する暗黒大陸にあり、暗黒大陸唯一の人間?NPCである火口野鉄心というが開いている道場だ。門下生は驚きの1人であり、その一人というのは俺だ。


 元々火口野鉄心という人物は道場を開いているが、開いている理由が流派を広めるとかそういうものではなく、己に挑戦する道場破りを返り討ちにするためだったり、むしろ自分から道場破りをするための理由だったりであり、この説明だけでも分かる通り戦闘狂なのだ。


 ではなぜそんな道場の門を叩いたかというと、新月流一門だけ使える専用スキルであったり、一定数の道場で免許皆伝でもらえる称号のためであったりといった物で、門下生になって得られる、流派ボーナスが新月流が最も良いと感じたためだ。


「し、しかし、FW《ファンタジーワールド》で色々と変わっているかもしれない、もしかしたらまともな人間になっている可能性も……」


 思い出しただけで思わず声が震えてしまった。火口野流に捧げた夏の一月、俺は一生忘れることのない記憶トラウマ、その張本人に会うために俺はFW《ファンタジーワールド》の世界に入った。


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