第7話 姫騎士の実力
ワアアアァァァァ!
溢れんばかりの歓声、主に男の野太い声が歓声の割合を占めるが、所々女性の声も聞こえる。男は話題の姫騎士を、女性はもう一方の対戦相手であるリュウを・・・・といったところだ。
「ふむ、確かに姫騎士と呼ばれるだけある美少女ぶりだな」
映像に映し出される姫騎士の顔、アルビノなのか髪共々肌まで病的に白い、そして眼は明るい緋色であり、小説やアニメ等にでてくるキャラクターのようだ。
だがしかし顔の作りに不自然さがない、たぶんエディット機能ではなく現実の顔を実際にスキャンして使っているのだろう、なんというか小説に出てくるキャラクターのようでありながら現実にいそうな自然的な美少女だ、と思った。自分で言っておいて矛盾しているが
姫騎士と呼ばれるプレイヤーは中級の職業である『見習い騎士』の初期装備のままだ。身長は160センチ前後ぐらいだろうがその小さな体躯には見合わないほどの大剣を装備していた。ゲームの世界では実際に筋力がなくともステータスが高ければなんでも装備できてしまうが大剣が大きすぎるのか、姫騎士が小さすぎるのか、背中に担いでいる大剣の先っぽが地面に当たりそうなほどである。
まぁ、実際にここまで来てるわけなので弱いはずがない
対戦相手の徒手空拳使いのリュウと姫騎士、幻想世界では通常の戦闘であれば相性的には基本、騎士が有利だがこの状況ではリュウが有利といえる。
騎士は文字通り馬に騎乗してこそ真価を発揮する。つまりはこういう一対一のPvPのような戦い方ではなく広いエリアにて騎乗してこそ騎士の強みといえる。
だからと言って馬に乗っていない状態でも十分に戦えるし初級職である『剣士』とも引けを取ることは無いが、コロシアム向きではないことは確かだ。
それに比べて徒手空拳使いのリュウは近距離特化型の中級職と言える。初級職の『格闘家』からより一層近接よりになり、各スキルの射程は短いものの、再度同じスキルが使えるまでにかかる時間のリキャストタイムが非常に短く、手数で押していくと結構な火力がある。
「見た感じでは、リュウが圧倒的有利・・・・か」
といっても何度も負けているユウ自身勝機があって挑んでいる訳だからどんな戦い方をするか見ものだ。ちなみにリュウと戦った当時の俺はユウと同じ騎士だったがあまりにもムリゲー過ぎたため、次にレベルの高かった双剣士で判定勝ちをもぎ取った。
『お互い準備はいいですか?・・・・レディイイイ、ゴオオォォ』
コロシアムの司会で何度も司会を務めている厳つい顔の褐色マッチョのスキン頭の男、ガッドウルフがゴングの合図をした。
=五分経過~=
「状態は姫騎士の不利か・・・」
戦いのゴングが鳴ってから五分が経過した。残り時間はあと十分、互いのHPは姫騎士が五割、リュウが八割といったところだ。
「まぁ、彼女もうまく立ち回っているんだがな・・・」
確かに彼女は相性の悪いリュウにうまく立ち回っていた。巨大な大剣をうまく使って脇に入られないよう距離を注意しながら立ち回っている。が、悲しいかな基礎能力、レベル、何もかもがリュウのほうが上だといえる。
リュウだって所詮はNPC、ある条件ではこう動き、行動するというパターンは存在する。実際調べてみたら数百ともなるパターンを複雑に組んでいるため中々攻略はめんどくさいが決定的な攻撃を仕掛けてくるパターンというのははっきり見える。
その決定的な攻撃、つまりは大技を繰り出す予備動作に関しては彼女も熟知しているようで、大技の予備動作の時はとっさに距離をとっているため、決定的な場面はない
しかしこれでは徐々に追い込まれる一方である。何か決定的なスキルを繰り出さなければ負けるだろう
といってもその状況を変えるスキルを繰り出すのは不可能だろう、だって騎士はまず防御寄りの職業だからだ。壁専門ではないが一撃必殺の技など俺の知っている情報の中にはない
「絶体絶命・・・・なのに彼女の眼は」
まさに詰んだ状況、圧倒的不利、絶体絶命と言ってもいいはずなのに彼女の緋色の眼は輝きを残したままだ。
と、思っている間に彼女は大剣を地面と平行になるよう横に倒し、腰を低くして構えた。俺の知っている情報にはない動作だ
「な!何だあれは!?」
俺は思わず席から立ちあがる。なぜかというと彼女の大剣からいきなり光を発し始めたからだ。魔法系のスキルか?と思ったもののありえない、騎士というか物理職は絶対、魔法や付与系のスキルは覚えない、そう絶対だ。
俺みたいに、複数の職業をマスターしたら可能だが複数の職業を取るにはもっと先の大陸で覚えるため不可能、魔法系の職業に就いているプレイヤーが物理職のプレイヤーの武器に属性を付与することは可能だが今は個人戦、できるはずがない
「!?」
彼女の異変を感じたのかリュウは眼を見開き、そして目を細め警戒を高める。距離を見定めながらリュウ自身も決着を決めるつもりだろう
緊迫した状況、溢れんばかりの歓声の中で今、決着が決まろうとしていた。
「・・・・・・サアアァッツ!」
意を決したリュウが姿勢を低くして地面を這うかの如く駆けた。
繰り出される技は掌底、次の動作を無視した速度と威力だけを重視した攻撃は、たとえプラチナリーグのプレイヤーでも致命的となりかねない攻撃
「!?」
瞬く間に迫ったリュウに今だっ!と言わんばかりに目を見開いた彼女は・・・・・・・消えた
「なにっ!?」
消えた。と感じた瞬間、彼女は大剣を構えた状態で、リュウの後ろに回っていた。そして・・・・
「敵を打ち滅ぼせ!エクスカリバアアアアァァ!」
彼女が降りぬいた瞬間、光っていた大剣は一層輝きを増し、リュウに当たる瞬間、ステージを光で塗りつぶした。
「・・・・・・・こ、こんな事が・・・・」
あまりの衝撃のせいなのか、彼女とリュウの周りは煙で視認が不可能の状態だった。しかに
《勝者ユウ》
コロシアムに映る大きなディスプレイと俺の目の前にある小さなディスプレイには彼女の勝利の文字が書かれていた。
「これは・・・・・・」
未知のスキル、見た感じ瞬間移動と光属性を帯びた剣撃、どれも幻想世界ではなかったものだ。
「戦ってみたいものだ。
ランキングを見たところ彼女以上に上位のプレイヤーはいない、幻想世界では俺が一応上だがまだ確かめていないので、コロシアムの順位も引き継がれているのかもわからない
『では戦ってみますか?
背後でいきなり話してきたのは何やら聞き覚えのある・・・・そう、引き継ぎの際にお世話になった天使だった。
『神様は言っています。古の英雄であるあなたを呼び、彼女と戦わせ、向上心を煽り、人間たちを遥かな高みへと昇らせることがことができると・・・・』
天使はまたニッコリとほほ笑んだ。
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