第5話 なるべく目立たない為に

 =PvPコロシアム・プライベートゾーン=


「いやぁ、あれは予想外だったわ」


 コロシアムの建物内に入り、許可したプレイヤー以外は入室ができないプライベートゾーンで椅子に座りながら呟いた。プライベートゾーンはPvPや宿屋に泊まった時などに飛ばされる各プレイヤーごと割り振られて、部屋の模様替えや家具などを置くことができる特別な空間だ。


 プライベート空間は主にPvPコロシアムの階級を上げるごとに広く、豪華になっていき、最高グレードのマスターリーグで首位の俺の部屋の総面積は東京ドームと同じぐらいの大きさを誇っている。


 最初のころはあまりの大きさのために空間を持て余すことが多かったが部屋割りを決めたり、訓練所、モンスター宿舎など拡張してみたら結構スペースを使ったので今現在では狭くも感じる。


 本当ならPvPコロシアムで階級が下がれば部屋のグレードも下がるのでここまで豪華にする必要はないのだが去年の年間MVPに選ばれてからマスターリーグ首位と同じランクの空間を報酬として貰ったので実質東京ドーム二個分の空間を持っていることになる。


 報酬でもらった方の空間はこれからも使えるので完全私物化しているが、リーグ変動によって変わる方の空間は基本使っていない・・・・一応来るべき他プレイヤーたちのための空間にしているのだが来たプレイヤーは今のところ居ない、今のところだが


 そして現在俺がいる場所は武器や防具などを保管している保管庫だ。黒騎士シリーズでは目立ちすぎると分かったため、始まりの町がある周辺でも交流することができる武器や防具が保管してある第13保管庫へとやってきた。


「これも懐かしいなぁ・・・せっかく二週間かけて使ったのにモンスターの武器破壊攻撃で一瞬にして壊されたときはさすがに落ち込んだなぁ」


 ランプの光だけの薄暗い空間には各シリーズの防具が種類別に分かれておかれていた。


「さて何を使うか・・・『探索者』シリーズはまだ珍しいか、だったら『山賊』シリーズで行くか、盗賊最近使ってないからな」


 山賊シリーズは自然に溶け込むため濃い茶色や緑といった自然の色を主体としていて所々葉っぱの装飾をしている。始まりの町から二つ先にいった村のクエストを達成するとレシピを思いつく、序盤にしてはなかなか癖のある効果が付いているが使いこなせば第二の大陸中盤まで使える強力な装備の一つだ。


 そして盗賊、つまりは職業だ。職業によってステータスの振り分けが変わりなかなか種類も多種多様だ。初級職、中級職、上級職とだんだんランクが上がっていきイベント報酬や期間限定でなれる特別職といったものもある。

 盗賊はその中でも初級職種の分類に入る。剣士、魔法士といったオーソドックスな職種の一つで一応LVカンストまで上げている。幻想世界当時では999が最高でFWファンタジーワールドの世界でレベル上限が上がったのか、現在は1000になっている。


 盗賊の特徴としては素早さ、回避などが特に高い、索敵系のスキルも覚えたりして他にもダンジョン攻略で役に立たつスキルも覚えるためパーティーに一人は欲しい職業だ。と幻想世界のホームページに書かれている。パーティーなんてNPCとしか組んだことないけど


 一応職業を盗賊にして装備を山賊シリーズを装備したプロフィールがこうなる


 プレイヤー名 ペガサス

 転生100回 Lv1000

 種族 神人族

 職業 盗賊 Lv1000

 武器 双蛇剣+30 

 防具 山賊シリーズ+25 


 となった。順を追って説明するとまず転生とはLv1に戻るシステムだ。単にLvが1に戻るわけではなく転生前のレベルが高ければ高いほどLv1の初期値とステータスの上昇幅は広がる。ただし転生すると転生前よりレベルアップの必要経験値も上がるためなかなか面倒なシステムだ。


 そして種族、この『神人族』とは幻想世界では二か月前にあった結果的に最後のイベント『神への挑戦』というシンプルなイベントの上位100名に貰えるクリア報酬だ。これも種族によってステータスが変わったり、職業適性が変わってくる。この神人族は全ステータスが各種族のいいとこどりをした種族でほとんどの職業への適正もある。また勇者や神装騎士といった最上位の職業につける唯一の種族でもある。


 あとは双蛇剣は剣がくねくね曲がった双剣で毒属性付与があったり、山賊シリーズは移動速度UP、索敵値向上、器用値上昇ぐらいである。+は改造した回数で、失敗する可能性は改造するほど高くなっていくが成功すれば性能が上がっていく、レア度によって改造回数が変わっていくという特徴がある。


 ・・・ただ、この改造はかなり成功確率が低く、一回目こそは100パーセントだが二回目からは80パーセント、50パーセントと低くなっていく、今回装備している山賊シリーズはレア度Fの下から二番目の誰でもゲットできる装備だが最大改造数は20、俺の場合はログインボーナスなどで貰った改造成功率UPアイテムや最大改造数拡張アイテムをふんだんに使いほとんどの装備の改造は終わっているが、課金アイテムが無いと正直かなりきつい


 一応事前にFWファンタジーワールドについて調べたところゲームの購入金額+月額600円で出来るFWファンタジーワールドだが幻想世界の頃には必要不可欠だった課金アイテムは一切ないとホームページに大きく載っていた。何かとオンラインゲームでは課金ガチャや課金装備が物を言う世界なのでそういう経済的差によって実力が決まるのを止めるのが狙いだとか、実際この完全無課金制度はプレイヤーから大好評で、課金が無い分月額制になってしまうがこのシステムは大好評だとか、全て掲示板の話なのだが


 ・・・・・・歯ごたえのある難易度、課金システムの撤廃、完全実力制、確かに幻想世界のときに比べて改善されたと思うのだが一つ疑問が


 今話した改造成功率を上昇させるアイテムは主に課金することによって手に入れることができる。最初のころはいいかもしれないが装備のレア度や改造回数が増えていくにつれその成功率はだんだんと下がる。そして必然的にそれらの確率上昇アイテムは必要となってくる。


 一応課金しなくても課金アイテムは全部そろえることができる。


 一つはイベント報酬、一定以上の特定モンスターの討伐やダンジョンの攻略階層によって割かし多く配られるがこれは期間限定であり総合的に見れば少ない


 そして二つめは第四大陸の幻想世界でも屈指の難易度(比べる人がいないのでソースは俺だが)であるラバウル大墳墓、ここの地下30階の出現確率が約0.5%のクリスタルヘッドというレアキャラの5%でドロップするクリスタルメダルで課金アイテムと交換が可能だが到底不可能に近い


 一応俺も検証がてらやったことがあるがこのクリスタルメダルを一枚ゲットするのに一か月かかった。できるだけログインしてクリスタルヘッドの討伐を最優先したのにだ。


 ということでメニューカーソルを開き交換所を開いてみると中には幻想世界では見覚えのないアイテム交換もあったが課金アイテムであった改造成功率アップや経験値獲得アップのアイテムはもれなくクリスタルメダルだった。


 つまりはこのFWファンタジーワールドに何らかの改造確率上昇の措置が取られていなければ改造Maxはほぼ不可能ということだ。今はいいだろうが第三の大陸あたりで積みそうな気がする。


 生まれ変わっただろうがもとは幻想世界の運営である。期待もあれば不安も・・・いや、ほとんど不安しかないが


 改造によって改造前と改造後では天と地ほど差があるといってもいい、もはや上位互換だと


 もちろん今装備している山賊シリーズや双蛇剣はいたって普通の装備だ。先ほどの騒ぎの中でも少数ではあるものの見かけたし


 だが改造回数も外見ではわからないがパーティーを組んだ時などでは装備の一覧が表示される。


 ・・・見た目は通常、中身は異常っていうわけだ。


 プレイヤーを見に来ただけなのでパーティーを組む予定はないから当分は大丈夫だろうがいざパーティーを組むとなると・・・



 仕方ない、装備を買いに行こうか


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