第4話 PvPコロシアム

「おぉ!これがFWファンタジーワールドのコロシアムか!」


 目の前に広がるのは誰もが一度はテレビなどで見覚えのある高さ50メートルはある巨大なコロッセオ、だが目の前にそびえ立つコロッセオは風化した物ではなく新しく建てたような真新しさを感じる。


 そしてコロッセオを模したコロシアムの周りにはいろんな人が出入りしていた。なかには剣闘士のような人間や商人といった様々な人が出入りしていた。


「おぉ、あの緑のアイコンはプレイヤーじゃないか!」


 そう、コロシアム周辺を歩いている多くの人物の中には二種類の特徴がある。男か女とかの性別の違いではなく、ゲーム特有の特徴である。その違いは頭上にあるアイコンの色で、頭上の上にある逆三角形のアイコンには緑色と青色の二種類がある。この場では敵正反応がないため赤色などはないが街中では基本緑色か青色だけだ。基本はね


 FWファンタジーワールドでは常に情勢が変わるので時々モンスターや敵国に町を攻められて陥落しログインしたら目の前全員敵性表示である赤アイコンになっていた・・・なんてこともある。


 閑話休題


 そしてこの緑色と青色のアイコンの違いは、緑色がプレイヤー、つまりは俺のような現実世界にいる人間が操作する人物を現し、逆に青色のアイコンはこの世界の住人であるNPCを現す。つまりはどういうことかというと・・・・


「一年ぶりに、プレイヤーをみた・・・・」


 俺はあまりの感動でその場に崩れ落ちる。別に現実では飽きるほど見ているのだが暗黒大陸に移って以来コロシアムでも碌にプレイヤーに出会うことがなかったので、この久しぶりに俺と同じプレイヤーを見て感極まってしまった。


 ざわざわ


 と、感動しているとなにやらプレイヤーの視線が俺のほうに集まってきた。確かに公共の面前でいきなり崩れ落ちたやつは気になるものだろうがその視線の数が尋常ではない


「どうしたんだ・・・・うん?」


 騒ぎの原因をよくよく俺の装備を思い出してみる。


 周りにいるプレイヤーはいかにも駆け出しのような皮装備一式、中には鉄装備やスノーパウンサー装備一式、魔法士のローブを着けていたりする少しグレードの上がったプレイヤーもいるがそれも少数、つまりは駆け出し装備のプレイヤーが大半を占めていた。


 そして俺の装備を見てみる。


 <黒騎士>シリーズ レア度 SS

 装備条件 Lv800以上及びSTR2000以上

 追加効果 基本防御力+1300 体力中UP 攻撃小UP 防御特大UP 黒魔法 威力大UP 聖魔法 耐性大DOWN 即死攻撃確率UP


 固有スキル<黒騎士>

 主に敵に異常状態、能力DOWN効果の付与に特化したスキル、その代わり自分自身の聖属性耐性が下がる。装備者のHPが少なくなるほど装備の追加効果とスキルの能力が大きく上昇する。


 かつて王国で使えし騎士が闇に落ちた際に装備していたシリーズ、その姿は騎士とは呼べないほど禍々しく鎧の隙間から瘴気が漏れ出すほど、鋭利かつ竜を模した鎧は生半可な攻撃を全て防いでしまう、亡国都市の関連クエストを全て完遂することで作ることができる。


 そして武器


 絶望と怨念の大剣 レア度EX

 装備条件 STR3000以上

 追加効果 基本攻撃力+2000 黒魔法 威力大UP 攻撃特大UP 防御DOWN効果付与 異常状態付与


 固有スキル<血の契約>

 スキルツリー、『血の契約』を追加する。自分のHPを消費して極めて強大な魔法を放つスキル。中には命を対価として放つ魔法もある。


 期間限定イベントダンジョン、死の大迷宮のMVPプレイヤーに贈呈される限定武器、数千人分にも及ぶ絶望と怨念が込められた大剣は魔に落ちたもの以外が使えば剣を振るう度に生命力を奪われていく


 といった完全闇に落ちた悪役装備である。レア度S以上から追加される固有スキルの中でもこの黒騎士シリーズと絶望と怨念の大剣は上位に位置するほどの強力なスキルで俺のお気に入りの一つだ。


 つまりは俺が装備している武器や防具からは赤黒い瘴気が漂い、追加にかすかに怨念が聞こえてくるというどうでもいいおまけもついてくる。そしてこの武器と防具を一緒に装備することによって敵性生物のHPを5秒ごとに50吸い取っていくという超強力な能力、この装備はソロが基本だった俺にとって集団戦において非常に強力な装備なのだ。


 そんな装備自慢ではあるが結論を言ってしまえば魔王の幹部のような装備をしたプレイヤーがいきなり現れれば視線が集まるのも当たり前であって・・・・

 

「すまない、場を騒がしてしまったな・・・」


 この空間にいたたまれなくなってしまったので早くも脱出を試みることにした。俺は結構装備とキャラの雰囲気を大切にする方なので先ほどのハイテンションな変な奴ではなく寡黙な男の雰囲気を醸し出して周りにぞろぞろ集まるプレイヤーたちに謝罪の言葉を述べる。


 ザザッ!


 しばらくして俺が立ち上がったことに驚いて急に距離を取る他プレイヤーたち、そして俺の進行方向はモーゼが海を割ったように綺麗に道ができた・


 カツ、カツ、とゆっくり歩き始める。周りのプレイヤーは俺に視線を向けて少々居心地が悪い、俺が視線を向ければその視線の先にいるプレイヤーは即座に視線を外す・・・・なんだこれ


 そして三人組のチャラそうなプレイヤーが俺の進路を遮ってきた。


「ねぇねぇお前いい装備してんじゃん!どうやって作った?やっぱり金?それ譲ってほしいなぁ~、ねぇ、いいでしょ?」


 いきなり三人組は俺を囲むように鎧を見ながらそう言ってくる。はっきり言うとうざい、こういう人種は現実世界ではまったく接点がないし、まず幻想世界でろくにプレイヤーと会話したことが無いのでどう対処すればよいのかわからない


 結論、俺は無視を決め込むことにした。


 そして俺が意図的に無視していることが分かったチャラい三人組は


「何お前?無視してんの?単に装備自慢したいだけ?・・・おいなんか言えよ!」


 怒り始めた三人組は俺を突飛ばそうとしてきた。別に突飛ばされるほど弱くはないがなんかこういうやつ嫌だなぁ・・・・あ、まずい!


「ん?なんだこれ?ってうわあぁぁ!?」


 今の突飛ばし(未遂)によって敵性プレイヤーになったチャラい三人組は装備が勝手に戦闘態勢に入り、一層防具が禍々しくなり装備のつなぎ目についている鉱石が輝き、瘴気や怨念が噴出して三人組を襲った。


 一瞬にして三人のプレイヤーを殲滅してしまった。ここは普段居る町とは違いPvP可能の特別エリアなので実質最強キャラ『衛兵』も飛んでこないが


「おい、あの三人組って有名実況プレイヤーのギルドのやつらじゃね?」


「なんだよあれ、いきなり死んだぞチートじゃねぇか?」


 辺りが何やらより一層騒がしくなり始めた。


 ここは退散しなければ


 俺は脱兎のごとく逃げ出した。








 


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